ハミルトン伯爵が幸せになるまで:37
これ、別話短編で分ければよかったなと今更思っている(´・ω・`)
『期限とは、春のガーデンパーティで狂犬お嬢様(拓海)を婚約者としてお披露目したい西欧の魔王が、目標まであと数か月だというのに現在地が「気前のいいスケベ外人」だと知らされ、工程が四つ飛んでいることに絶望する現象のことであるという話』
【ハミルトンホール】
~春の予定~
ハミルトン家では、ひとつの大きな行事の準備が始まっていた。
毎年五月下旬。
ハミルトンホールの広大な庭園を開放して行われる、伝統のガーデンパーティである。
政財界、実業界、ハミルトン家と長年交流を持つ名家が一堂に会する一大イベント。
しかしここ数年は、先代伯爵の病気と逝去により開催が見送られていた。
そして今年。
若くして爵位を継ぎ、正式にハミルトン伯爵となったエドワードを、
改めて広く社交界へ披露する意味も含め、例年以上の規模で開催されることが決まっていた。
執事長が予定表を開く。
「若旦那様。今年のガーデンパーティでございますが、五月二十三日を予定しております」
「……分かった」
エドワードは静かに頷いた。
五月二十三日。
その日付を見た瞬間。
頭の中に、一人の少女が浮かんだ。
長い黒髪。
黒い瞳。
美しいドレス。
そして
自分の隣に立つ、佐伯拓海。
(もし……。)
(ガーデンパーティの日。)
(私の隣に、正式な婚約者として拓海嬢が立ってくださったなら……!)
脳内。
『ご紹介いたします。私の婚約者、佐伯拓海嬢です』
――完璧。
エドワードの口元が、みるみる緩んでいく。
(´ω`)/////
「……若旦那様?」
「…………。」
「若旦那様。」
「っ!」
我に返る。
隣では執事長が、なんとも言えない生温かい目をしていた。
「……何でもない。」
「左様でございますか。」
絶対に信じていない顔だった。
◆
【ハミルトン別邸】
~現在地~
その夜。
エドワードは一人、真剣に考えていた。
五月二十三日まで、あと数か月。
それまでに
拓海嬢へ告白する。
正式に交際を申し込む。
拓海嬢本人の気持ちを確認する。
お母上にも改めて報告する。
そして
できれば婚約まで……。
「…………。」
そこで。
エドワードの思考が止まった。
「……待て。」
現在。
自分と拓海嬢は。
一体、どこまで進んでいる?
【現在の進捗】
交際→していない。
告白→していない。
好意→伝えていない。
「…………。」
嫌な汗が流れ始める。
さらに
これまで拓海から投げつけられてきた言葉の数々が、脳内で鮮明に再生された。
『変態外人!^^』
『スケベ外人!^^』
『また俺のパンツ見たいのか?^^』
『エド、飯奢れ!^^』
「…………。」
顔から血の気が引いていく。
「……まさか。」
その時。
「何してるの、ハミルトン?^^」
コーヒーを片手に、ジョージが顔を出した。
「ジョ、ジョージ……。」
「ん?」
エドワードは恐る恐る尋ねる。
「拓海嬢は……。」
「うん。」
「現在、私を……何だと思っているのだろう。」
「…………。」
ジョージは考えた。
かなり真剣に。
そして。
「気前のいいスケベ外人。」
「....................................。」
エドワードは静かに崩れ落ちた。
_| ̄|○
◆
【工程】
~四つ飛ばし~
「ハミルトン!?」
「……私は……。」
床に崩れたまま、エドワードが呟く。
「五月のガーデンパーティで……。」
「うん。」
「できれば拓海嬢を……正式な婚約者として……。」
「…………。」
ジョージが目を瞬いた。
「ハミルトン。」
「何だ……。」
「まだ告白してないよね?^^」
「…………。」
「付き合ってもないよね?^^」
「…………。」
「拓海ちゃん、君を恋愛対象として認識してるかすら怪しいよね?^^」
「…………。」
「なのに。」
一拍。
「五月に婚約者?」
「…………。」
ジョージはにっこり笑った。
「工程、四つくらい飛んでるよ^^」
「分かっている!!」
エドワードが顔を上げる。
「今、分かった!!」
「今なんだ^^」
頭を抱える。
そして
改めて現実を見る。
【目的のロードマップ】
目標:五月、社交界へ『婚約者』としてお披露目。
現在地:『気前のいいスケベ外人』。
「…………。」
遠い。
あまりにも遠い。
「ジョージ。」
「何?」
「私は……五月までに間に合うと思うか……?」
ジョージはコーヒーを一口飲んだ。
「まず告白しなよ^^」
「…………はい(´・ω・`)」
数千億円規模の案件を即断する若き伯爵が、
一族最大級のガーデンパーティを前に、
ようやく
最初の一歩へ立ち戻った。
まずは。
佐伯拓海本人へ。
「好きです」と伝えるところから。
そして
この時のエドワードは、まだ知らない。
たとえその最難関を突破したとしても。
日本・千代田区には。
『婚約? まず私を倒してからにしろ』
と本気で言いかねない。
柔道三段・空手四段の警視庁刑事、拓海の父・和也が待ち構えていることを……(笑)。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
悠馬君の父、佐伯拓海と、ノアの父、エドワード・ハミルトンのお話です。
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この話もゆるく続いていく予定なので、
また気が向いたときに覗いていただけたら嬉しいです。




