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ハミルトン伯爵が幸せになるまで:29

もう昔のベタ展開をてんこ盛りにしてやろう

脱獄エスケープとは、長姉(詩織)の地獄の再教育によって限界を迎えた狂犬お嬢様(拓海)が、ついに「逃げても捕まらなければいい」という犯罪者の思考へ到達し、三階から脱走を試みたところ、偶然を装って新年の挨拶に現れた過保護魔王エドワードの腕の中へ落下し、そのまま魔王まで共犯者にして逃走する現象のことであるという話』


【学園都市・プライベートヴィラ】

~狂犬、限界~


年が明けた。


結局、日本へ帰るタイミングを完全に逃した拓海は……。


現在もなお

詩織の滞在するプライベートヴィラで、絶賛『再教育』を受け続けていた。


歩き方。

座り方。

言葉遣い。

食事作法。

身だしなみ。


来る日も来る日も、


教育。

教育。

教育。


そして、ついに。

佐伯拓海の精神は、限界を迎えた。


「…………。」


ヴィラ最上階。

窓辺に立った拓海は、静かに眼下を見下ろしていた。


「……逃げたら日本へ強制送還。」


「つまり。」


「逃げたことがバレなきゃいいんだよな。」


一拍。


「……いや。」


「逃げ出したって。」


「捕まらなきゃいいじゃん^^」


とうとう犯罪者の思考回路へ到達した。


窓を開ける。

冷たい冬の風が吹き込む。


拓海は身を乗り出し、下を見る。


三階。

地面までは、かなりの高さがある。


しかし幸い、真下には背の高い植え込みが密集していた。


「…………。」


「よし。」


「いけるな^^」


何が『いける』のか。


誰にも分からない。



【ヴィラ前】

~偶然という名の必然~


その頃。


ヴィラの正面へ、一台の車が静かに到着していた。


後部座席から降りてきたのは……。


エドワード・ハミルトン。


もちろん、

今日は『たまたま』近くまで来たのである。


『たまたま』新年の挨拶を思い出し。

『たまたま』先日の交際申し込みについて佐伯家の反応が気になり。

『たまたま』拓海の様子も心配になっただけである。


助手席のジョージが窓を開けた。


「ハミルトン。」


「ここ、君の家から結構遠いけど?^^」


「新年の挨拶だ。」


「ふーん^^」


「他意はない。」


「はいはい^^」


エドワードは咳払いをして、ヴィラを見上げた。


その時。


「…………?」


最上階の窓。


人影が見えた。


黒髪。

見慣れた姿。


「……拓海嬢?」


次の瞬間。


その身体が………


窓から消えた。


「…………。」


「…………。」


エドワードの顔から血の気が引いた。


「たっ…」


「拓海嬢!?!?」



【落下】

~魔王、決死のキャッチ~


「よっしゃあああ!!^^」


拓海が飛んだ。


「拓海嬢ーーーーー!!!!」


エドワードも飛び出した。


全力疾走


からの


芝生へ滑り込む勢いで両腕を伸ばす。


「危ない!!!!」


ドサッ!!


「ぐっ……!!」


衝撃とともに、エドワードの腕の中へ拓海が落ちてきた。


「…………。」


「…………。」


拓海は瞬きをした。


そして

にぱっ、と笑った。


「おお^^」


「変態外人!」


「元気か?^^」


「元気か、ではない!!!!」


エドワードは真っ青だった。


「た、拓海嬢!!」


「なんということを!!」


「三階ですよ!?」


「万が一、私がいなかったら!!」


その後ろから、のんびりとジョージが車を降りてくる。


「いやぁ。」


「ハミルトン。」


「よくキャッチしたねぇ^^」


「感心している場合か!!」


その時だった。


ヴィラの中から

地獄の底まで響きそうな声が轟いた。


「拓海いいいいいいいいいい!!!!!!」


拓海の顔が凍った。


「…………。」


エドワードも凍った。


玄関の扉が勢いよく開く。


「げっ!!」


拓海は即座に立ち上がった。


「ねーちゃん!!」


そして、エドワードの腕を掴む。


「おい変態!!」


「逃げるぞ!!」


「……は?」


「いいから来い!!」


「ちょ、拓海嬢!?」


そのまま拓海はエドワードの手を引き、車へ向かって全力疾走。


「ジョージ!!」


「車出せ!!^^」


「何で僕まで共犯なんだよ^^」


そう言いながらも

ジョージは笑って運転席へ乗り込んだ。


「待ちなさい拓海ぃぃぃぃぃ!!!!」


「出せえええええ!!^^」


「ジョージ!!」


「行けぇぇぇぇぇ!!」


「はいはい^^」


エンジン音。

車は勢いよくヴィラを飛び出した。


後部座席では、ようやく自由を手に入れた拓海が大笑いしている。


「やったぁぁぁぁ!!」


「脱獄成功!!^^」


その隣。


状況をまったく理解できないまま脱獄幇助の共犯者となった英国の若き伯爵は…


真っ青な顔で、ただ一言。


「……拓海嬢。」


「今すぐ。」


「三階から飛び降りた理由を説明してください。」


「ん?」


「逃げたかったから^^」


「そういう意味ではありません!!!!」


こうして新年早々。


西欧の過保護魔王は、愛する狂犬お嬢様の脱獄に巻き込まれ…


佐伯家長女を敵に回すという、人生最大級の危機へ自ら車で突っ込んでいったのであった……(笑)。


ここまで読んでいただきありがとうございます。


悠馬君の父、佐伯拓海と、ノアの父、エドワード・ハミルトンのお話です。


いいねや感想など、いつも励みになっています。

この話もゆるく続いていく予定なので、

また気が向いたときに覗いていただけたら嬉しいです。

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