ハミルトン伯爵が幸せになるまで:28
僕のラブコメはやはり古いらしい。もううですノリが古くて何が悪いのだ(´;ω;`)
『査定とは、ロンドンで妹(拓海)を絶賛拘留中の長女(詩織)が、千代田区の母(絢子)から「ハミルトン様より正式な交際の申し込みがあった」と知らされ、「拓海ですよね? うちの?」と二重確認した末、母娘そろって深々と溜め息をつく現象のことであるという話』
【学園都市・プライベートヴィラ】
~衝撃の国際通信~
詩織が滞在している学園都市のプライベートヴィラ。
地獄のマナー復習を終え、別室でぐったりと行き倒れている拓海を横目に、
詩織は母・絢子からの電話を受けていた。
『拓海の様子はどう?』
「とりあえず今は、大人しくしているわ。」
詩織はちらりと別室を見る。
「『逃げたら即、日本へ強制送還。そのままお見合い漬けよ』が、相当効いたみたい^^」
『そう。』
『引き続きよろしく頼むわね。』
「はい。」
『それと、もう一つ。』
「?」
わずかな間。
そして絢子は、淡々と告げた。
『ハミルトン様から、お電話があったの。』
「ハミルトン様から?」
『ええ。』
『拓海と正式に交際したい、と。』
「……。」
「…………。」
「…………は?」
思わず出た。
先日の母とまったく同じ、素の「は?」だった。
「あの、お母様。」
『何?』
「確認ですけれど。」
「……拓海、ですよね?」
『拓海よ。』
「うちの?」
『他に誰がいるのよ。』
「…………。」
詩織は額を押さえた。
「ハミルトン様が拓海をお気に召しているのは……。」
「先日お会いした時に、嫌というほど分かりましたけれど。」
思い出す。
ジャージ姿で男子学生を叩き、
電動キックボードで爆走し、
豪快に笑う妹。
そして
その姿を木陰から、蕩けそうな顔で見つめていた英国屈指の若き伯爵。
「……まさか。」
「もう正式な交際を申し込まれるとは思いませんでした。」
◆
【千代田区 & イギリス】
~母娘の査定~
『あなたから見て、どう?』
絢子の問いに、詩織は少しだけ考えた。
「……ハミルトン様ご本人については。」
「私は、反対する理由はありません。」
『そう。』
「家柄やお立場は言うまでもありませんし。」
「実際にお会いしても、礼儀正しく誠実な方でした。」
一拍。
「それに……。」
詩織はなんとも言えない顔になる。
「社交界でエドワード・ハミルトン様といえば。」
「女性にまったく興味を示さないことで有名でしたから。」
『ええ。私も聞いたことがあるわ。』
「まさか……。」
詩織は遠い目をした。
「あんな『じゃじゃ馬』を通り越した『野生の暴れ馬』が好みだったとは……。」
『…………。』
絢子も否定しなかった。
できなかった。
しばしの沈黙。
やがて詩織が口を開く。
「まあ。」
「ハミルトン様についてはいいとして。」
『ええ。』
「問題は。」
二人の頭に、同時に一人の女が浮かんだ。
「拓海が。」
『……ええ。』
「『恋愛』という概念を、人並みに理解しているかどうかです。」
『…………でしょうね。』
「…………。」
『…………。』
そして。
東京とイギリス。
九千キロ以上離れた二つの場所で。
母と娘は同時に、深々と息を吐いた。
「「はぁ………………。」」
◆
【ヴィラ・別室】
~問題の本人~
その頃。
母と姉が自分の恋愛能力について地球規模で頭を抱えているなど、知る由もなく。
佐伯拓海は絨毯の上で大の字になっていた。
「腹減ったぁぁぁぁ……。」
ごろり。
「マナー復習、いつまでやんだよぉ……。」
さらに、ごろり。
そして天井を見ながら呟いた。
「終わったらエドんとこ行って。」
「なんか旨いもん奢らせよ^^」
西欧屈指の名門伯爵家当主から、
正式な交際を申し込まれている女の発言である。
なお
本人の脳内におけるエドワード・ハミルトンの現在の分類は、
『変態外人。ただし飯を奢ってくれる』
から、まだ一歩も進んでいなかったのであった……(笑)。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
悠馬君の父、佐伯拓海と、ノアの父、エドワード・ハミルトンのお話です。
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この話もゆるく続いていく予定なので、
また気が向いたときに覗いていただけたら嬉しいです。




