↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
676/738

ハミルトン伯爵が幸せになるまで:27

拓海嬢は何も考えていないと思うんだ

前進ポジティブとは、舞踏会で木に登った娘の報告を受けた直後の日本の母親(絢子)へ「真剣なお付き合いを」と国際電話を掛け、「……はぁ?」と困惑されながらも、「とりあえず主人と本人に相談させてください」と返された過保護魔王エドワードが、「断られてはいない。つまり希望はある」と灰色の瞳を輝かせる現象のことであるという話』



【千代田区・佐伯家 & ハミルトンホール】

~混迷の国際回線~


受話器の向こうから聞こえたのは、母・絢子の静かな一言だった。


『……はぁ?』


一瞬の沈黙。

やがて、困惑を隠しきれない声が返ってくる。


絢子『……ええと。……どういうことでしょうか?』


エドワードは背筋を伸ばし、受話器を握る手に力を込めた。


「も、文字どおりです!」


「私は拓海嬢と、真剣にお付き合いをさせていただきたいと考えております!」


「何卒、ご理解を賜りたく……!」


電話の向こう。

千代田区の居間で、湯呑みを持ったまま絢子は静かに固まった。


(……ちょっと待ちなさい。)


(昨日、詩織から届いた報告は。)


(『舞踏会でお酒を飲みすぎて木へ登り、そのまま落ちました』だったわよね。)


(その数日後に。)


(どうして英国の伯爵様から交際のお申し込みが来るの……?)


思考が、まったく追いつかない。


一方、イギリスでは。


「何卒……!」


「何卒よろしくお願いいたします!!」


受話器へ向かって深々と頭を下げ続ける若き伯爵。


絢子は小さく息を吐いた。


『……ハミルトン様。』


「はい!」


『突然のお話で、少々驚いております。』


「……はい。」


『娘のことですので。』


『主人と、本人にも相談させていただけますか。』


エドワードの表情がぱっと明るくなる。


「もちろんです!」


「どうか、よろしくお願いいたします!」


絢子は穏やかに応じた。


『ありがとうございます。』


『それでは、失礼いたします。』


ツー……。


国際電話は静かに切れた。



【ハミルトンホール・執務室】

~超絶前向き思考~


受話器をそっと置いたエドワードは、そのまま動かなくなった。


ジョージがコーヒーを片手に近づく。


「どうだった?^^」


しばらく沈黙したあと。


エドワードはゆっくりと顔を上げた。


翡翠の瞳には、希望の光が満ちている。


「……断られてはいない。」


「うん?」


「つまり。」


「まだ希望はある。」


「…………。」


「私は前進した!!」


ジョージは思わず吹き出した。


「ハミルトン。」


「そのポジティブ思考だけは、世界一だね^^」


エドワードは満足そうに頷いた。


「正攻法は、間違っていなかった。」



【千代田区・佐伯家】

~年末の頭痛~


一方、電話を終えた絢子は、静かに湯呑みを置いた。

ふぅ、と一つ息をつく。


(……主人と本人に相談、とは言ったけれど。)


まず主人。


『うちの可愛い拓海に男だとぉぉぉ!?』


……百パーセント、この反応だろう。


次に本人。


『交際?』


『飯おごってくれる変態外人だぞ?^^』


……そんな返事しか返ってこない未来が容易に想像できた。


絢子は静かに天井を見上げる。


(……年末くらい。)


(穏やかに過ごせると思っていたのだけれど。)


そのささやかな願いは

イギリスから掛かってきた一本の国際電話によって、あっさりと打ち砕かれたのであった。


そして、佐伯家の年末は。


まだ誰も想像していない、新たな騒動へ向かって静かに動き始めるのだった……(笑)。


ここまで読んでいただきありがとうございます。


悠馬君の父、佐伯拓海と、ノアの父、エドワード・ハミルトンのお話です。


いいねや感想など、いつも励みになっています。

この話もゆるく続いていく予定なので、

また気が向いたときに覗いていただけたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。