ハミルトン伯爵が幸せになるまで:26
書いてる分には楽しいなこれ
『飛躍とは、説教を受けた狂犬お嬢様(拓海)が「厳格なお嬢様教育はヒースロー空港のトイレに捨ててきた」と白状して連行される一方、過保護魔王が「合法的に彼女へ会う方法」という思考から、なぜか千代田区の母(絢子)へ正式な交際許可を申し込むまで一気に飛躍する現象のことであるという話』
【詩織の滞在先】
~十五年の教育はどこへ~
学園都市近くのプライベートヴィラ。
正座する拓海を前に、詩織の説教は佳境を迎えていた。
「拓海。」
「はい……。」
「三歳から十八歳まで。」
「あれだけ厳しい教育を受けてきたのに。」
「あなたの淑女教育は、一体どこへ消えたの?」
拓海はしばらく考え、
小さく手を挙げた。
「……ヒースロー空港のトイレ^^」
数秒静寂。
「拓海ぃぃぃぃぃぃ!!!!!!」
「ひぃぃぃ!!」
「全部捨ててきましたごめんなさいぃぃ!!」
詩織は深々とため息を吐く。
「次に同じことをしたら、日本へ強制送還です。」
「えぇっ!?」
「帰国したら、お母様がお見合い写真を山ほど用意して待っているでしょうね。」
拓海の顔色が一瞬で青くなった。
「いやぁぁぁぁぁぁ!!」
「それだけは勘弁してぇぇぇぇ!!」
◆
【ハミルトンホール・執務室】
~魔王の超理論~
その頃、
エドワードは窓の外を眺めながら、大きくため息をついていた。
「……拓海嬢。」
「お姉様に連れて行かれてから、一度もお会いできない。」
ジョージは紅茶を飲みながら肩をすくめる。
「説教中だからね。」
「待つしかないよ^^」
エドワードは静かに首を振った。
「いや。」
「今の私は。」
「お姉様の教育へ口を挟める立場ではない。」
「うん。」
「だから待とう。」
「……だが。」
翡翠の瞳が鋭く光る。
「合法的に。」
「堂々と。」
「拓海嬢に会える立場になれば話は別だ。」
ジョージは嫌な予感しかしなかった。
「……ハミルトン?」
「まさか。」
エドワードはゆっくり立ち上がる。
「家族公認になればいい。」
「…………。」
「つまり。」
「佐伯お母上より、正式に交際のお許しをいただけばいいのだ。」
ジョージは天井を見上げた。
「飛び方がおかしい。」
「途中の階段全部飛ばしたね^^」
◆
【千代田区・佐伯家】
~予想外の電話~
数分後。
国際電話が佐伯家へ繋がる。
「はい、佐伯でございます。」
「佐伯夫人。」
「エドワード・ハミルトンでございます。」
「先日は舞踏会で拓海嬢をお預かりしながら、ご心配をお掛けいたしました。」
「その件は詩織から聞いております。」
「ありがとうございます。」
「そして本日は。」
「どうしても、お伝えしたいことがございます。」
絢子は静かに耳を傾ける。
エドワードは深く息を吸った。
「私は。」
「拓海嬢を、一人の女性として大切に想っております。」
「つきましては――。」
「正式に。」
「拓海嬢とお付き合いさせていただく、お許しをいただけないでしょうか。」
お茶を飲もうとしていた絢子の手が止まる。
舞踏会で酒を飲み、木へ登り、姉に連行された娘。
その報告を聞いた数日後。
今度は英国の若き伯爵から、まさかの正式な交際の申し出。
あまりにも予想外すぎる展開に、冷静な母・絢子でさえ、一瞬だけ思考が止まった。
「…………。」
そして、ぽつりと一言。
「……は?」
そのあまりにも素直な一言が、ロンドンの若き伯爵へ容赦なく突き刺さるのだった……(笑)。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
悠馬君の父、佐伯拓海と、ノアの父、エドワード・ハミルトンのお話です。
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この話もゆるく続いていく予定なので、
また気が向いたときに覗いていただけたら嬉しいです。




