ハミルトン伯爵が幸せになるまで:25
頑張れ拓海ちゃん( ˘ω˘ )
『雷鳴とは、英国社交界で奇跡の令嬢として称賛された狂犬お嬢様(拓海)が、舞踏会終了後わずか一日で長姉(詩織)の雷を落とされ、若き伯爵まで胃を痛める現象のことであるという話』
【ハミルトンホール・サロン】
~夢の余韻と現実~
舞踏会の翌日。
柔らかな朝日が差し込むサロンで、エドワードは幸せそうに紅茶を口へ運んでいた。
翡翠の瞳は、どこか遠くを見つめている。
「……拓海嬢。」
「昨夜は、本当に素晴らしい夜でした。」
「あのダンスも……。」
「月明かりの庭園での再会も……。」
向かいのソファでは、いつものジャージへ戻った拓海が、頬杖をついて大きなため息を吐く。
「……飯食えなかった(´・ω・`)」(※極度の不機嫌顔)
「…………。」
エドワードは静かに固まった。
彼にとって昨夜は人生最高の夜。
拓海にとっては、
「腹いっぱい食べられなかった夜」
だったらしい。
その時だった。
コンコン。
静かなノック。
「失礼します。」
現れたのは詩織だった。
拓海の背筋が反射的に伸びる。
「は、はいっ!!^^」
詩織は妹へ優しく微笑む。
「拓海。」
「はい……。」
「少し、お話しましょうか^^」
その笑顔を見た瞬間
拓海の顔色が一気に青くなった。
◆
【姉の尋問】
詩織は穏やかな口調のまま尋ねる。
「あなた。」
「昨夜、木へ登ったそうね。」
「…………。」
「お酒も、かなり飲んだそうね。」
「…………。」
「枝から落ちたそうね。」
「…………。」
一拍。
「全部、本当?^^」
拓海は静かに正座した。
「…………はい。」
「よろしい。」
詩織はゆっくり頷いた。
その横でエドワードが立ち上がる。
「あ、あの……詩織様。」
「私にも責任がございます。」
「私が拓海嬢から目を離してしまい……。」
詩織はエドワードへ向き直り、深々と一礼した。
「ハミルトン様。」
「ご心配をお掛けしたこと、お詫び申し上げます。」
「ですが。」
「一つだけ、お聞きしてもよろしいでしょうか。」
「……はい。」
「拓海がお酒を飲み始めた時。」
「なぜ、お止めにならなかったのですか。」
エドワードはゆっくりと目を伏せた。
「……私の配慮が足りませんでした。」
「申し訳ございません。」
言い訳はしない。
責任から逃げもしない。
ただ真っ直ぐ頭を下げる若き伯爵を見て、詩織は小さく息を吐いた。
(……この方は。)
(本当に誠実なのね。)
怒る気持ちは、もう残っていなかった。
◆
【再教育・延長決定】
詩織は拓海へ向き直る。
「拓海。」
「はい……。」
「冬休みの間。」
「私のところへ来なさい。」
拓海が顔を上げる。
「え?」
「マナーの復習をします。」
「もう一度、最初から。」
「えぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!^^」
サロン中へ絶叫が響く。
詩織は優しく微笑んだまま告げた。
「舞踏会は終わりました。」
「でも。」
「教育は終わっていません^^」
拓海は崩れ落ちた。
「そんなぁぁぁぁ……。」
詩織は続ける。
「休暇が明けるまで。」
「あなたは私が預かります。」
「ハミルトン様。」
「申し訳ありませんが、もう少しだけ妹をお借りしますね。」
エドワードは少し寂しそうに微笑みながらも、静かに頷いた。
「……もちろんです。」
「どうか、よろしくお願いいたします。」
「ありがとうございます。」
その返答を聞いた詩織は、心の中でそっと呟く。
(……本当に。)
(この方、ご苦労なさっているのね。)
むしろ妹の方が百二十パーセント問題児だった。
◆
【見送る魔王】
「ほら、拓海。」
「行くわよ。」
「いやだぁぁぁぁ!!」
「エドーーー!!」
「助けてくれぇぇぇぇぇぇ!!!!^^」
首根っこを掴まれるように連行されていく拓海。
その姿を見送りながら、エドワードはぽつりと呟いた。
「……ジョージ。」
「何だい?^^」
「佐伯家の女性は……。」
「皆さん、お強いな。」
ジョージは肩をすくめる。
「うん。」
「でも。」
「一番強いのは、その人たちに育てられても全然変わらない拓海ちゃんだけどね^^」
「…………。」
エドワードは静かに天井を仰いだ。
確かに、その通りだった。
こうして若き伯爵は、しばしの別れに少しだけ肩を落とし
一方、狂犬お嬢様・佐伯拓海は、長姉による地獄の冬期補習へと連行されていったのである……(笑)。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
悠馬君の父、佐伯拓海と、ノアの父、エドワード・ハミルトンのお話です。
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この話もゆるく続いていく予定なので、
また気が向いたときに覗いていただけたら嬉しいです。




