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ハミルトン伯爵が幸せになるまで:23

拓海には「色気」という概念がない(`・ω・´)

爆誕ファンファーレとは、長姉(詩織)の地獄の再教育をどうにか生き延びた狂犬お嬢様(拓海)が、ハミルトン家専属チームによって本来の美貌を解放され、その姿を見た過保護魔王エドワードの脳内で天使がラッパを吹き始める現象のことであるという話』


【女子寮前】

~再教育、修了~


数日後

女子寮の一室。


詩織は深く息を吐き、妹をじっと見つめた。


「……よし。」


「最低限、人前へ出せるわ。」


その声には達成感より、疲労感の方が色濃く滲んでいた。


拓海は両手を突き上げる。


「やったぁぁぁぁぁ!!^^」


「終わったぁぁぁ!!」


「もう風呂も毎日入った!」


「姿勢もやった!」


「敬語もやった!」


「俺、頑張った!!^^」


詩織は静かに頷く。


「ええ。」


「本当によく頑張ったわ。」


「……私が。」


拓海


「俺じゃねぇの!?^^」


その時。


コンコン。


部屋のドアが叩かれた。


「佐伯様。」


「ハミルトン家より、お迎えに参りました。」


拓海の目が輝く。


「おっ!」


「飯だ!!^^」


「違います。」


詩織のツッコミと同時に、背中へ軽い手刀が落ちる。


「姿勢。」


「はいっ!!^^」


こうして、最低限の令嬢教育を終えた拓海は、黒塗りのリムジンへ乗り込んだ。



【女子寮前】

~迎え~


リムジンの横には、一人の青年が立っていた。


黒のコート。

白い手袋。

いつもどおり隙のない身なり。


エドワード・ハミルトンである。


ドアが開く。


そこから現れたのは、ジャージではない拓海だった。


落ち着いたワンピースにロングコート。

髪もきちんと整えられている。


その姿を見た瞬間。

エドワードは止まった。


「…………。」


翡翠の瞳がゆっくり見開かれる。


(……可愛い。)


(…………。)


(可愛い。)


思考が、それ以上進まない。


ジョージは苦笑した。


「ハミルトン。」


「語彙力が消滅してるよ^^」


エドワードは小さく頷いた。


「……ああ。」


「可愛い。」


「それしか出てこない。」



【ハミルトンホール】

~魔王、本気を出す~


リムジンがホールへ到着すると、執事たちが一斉に頭を下げた。


「佐伯様。」


「お支度のお時間でございます。」


拓海は首を傾げる。


「え?」


「もう服着てるぞ?^^」


「こちらはご移動用のお召し物でございます。」


「本番は、これからです。」


「は?^^」


次の瞬間。


専属スタイリスト。

美容師。

ドレスフィッター。

アクセサリー担当。


総勢十数名が一斉に動き出した。


「えっ。」


「ちょっ。」


「待っ………。」


「うわぁぁぁぁ!!」


そのまま拓海は、更衣室へ連行されていった。


一方その頃。


廊下では

エドワードが落ち着きなく歩き回っていた。


「ジョージ。」


「まだなのか。」


「あとどれくらい掛かる。」


「五分前にも聞いたよ^^」


「落ち着きなって。」


「落ち着けるものか。」


「今日という日のために、私は何日待ったと思っている。」



【大広間前】

~奇跡~


やがて

重厚な扉が、静かに開かれた。


エドワードが選び抜いた純白のドレス。

丁寧に結い上げられた黒髪。

繊細なアクセサリー。


飾り立てたから美しいのではない。

もともと持っていた美しさが、初めてそのまま姿を現した。


誰もが息を呑む。


エドワードも。


「…………。」


動けない。


その頭の中では。


パァァァァァン!!


天使がラッパを吹き。

教会の鐘が鳴り響き。

色とりどりの花びらが舞い散り。


「おめでとうございます!」


「末永くお幸せに!」


なぜか祝福の大合唱が始まっていた。


ジョージは額を押さえる。


「ハミルトン。」


「これ舞踏会。」


「結婚式じゃないから^^」


ようやく現実へ戻ったエドワードは、目を潤ませながら小さく呟いた。


「……美しい。」


「世界で、一番。」


その感動を、当の本人が一秒で粉砕する。

拓海はコルセットをぐいぐい引っ張りながら、不満そうに顔をしかめた。


「なぁ。」


「これ。」


「腹いっぱい飯食えねぇじゃん!(・д・)チッ」


世界最高峰のドレスも。

若き伯爵の恋心も。


狂犬お嬢様の胃袋には、最後まで勝てなかったのだった……(笑)。


ここまで読んでいただきありがとうございます。


悠馬君の父、佐伯拓海と、ノアの父、エドワード・ハミルトンのお話です。


いいねや感想など、いつも励みになっています。

この話もゆるく続いていく予定なので、

また気が向いたときに覗いていただけたら嬉しいです。

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