第五十六話 「上陸の”音声コード”は、論理を破壊する」という話
やっと菜摘ちゃんを出せる!(*´ω`*)
「」→日本語
『』→英語
→すみませんが脳内変換してください!
六月下旬。成田国際空港、到着ゲート。
長時間のフライトを経て。
拓海が、日本の地を踏んだ、その瞬間――。
「たっくーーん!! おかえりー!!」
黄色い声が響き、一直線に“日常”が突進してきた。
日向菜摘。
拓海の幼馴染であり、この物語における最強の非論理的(天然)爆弾である。
「……やめろ。その呼び方、人前でやめろっつったろ、菜摘」
拓海は反射的に顔をしかめたが、菜摘は止まらない。
「いいじゃん別に! あ、この人がエドワード君?」
くるり、と視線が移る。
「……ハロー! アイム・ナツミ! ベリー・ハッピー・トゥ・ミート・ユー!!」
全力の中学英語。
勢いだけで構成されたその発声が、エドワードの鼓膜を直撃した。
―沈黙。
英国の貴公子は、石像のように固まる。
数秒。
ゆっくりと、口が開いた。
『』……ナツミ。お前の「オンセイ(音声)」、強度が、高いという話
「……あ、今の日本語まじってる? 似合ってるー! たっくん、今のなんて言ったの?」
「……声がデカい、うるせぇって言ったんだよ」
即答。※超訳である。
「えー!? そんなこと言ってないでしょ!?」
そのやり取りを、少し離れた位置から見ていた男がいる。
腕を組み、仁王立ちする父・和也。
その後ろには、不審物を検分する医学徒の兄・拓人。
「……拓海」
低い声。
空気が一段、冷える。
「……そちらの金髪の個体……エドワードと言ったか。
……日本語の使い方に、……重大な誤認がある」
「……和也・サエキ」
エドワードが居住まいを正し、カタコトで応じる。
「……私ノ、『コウゾウ(構造)』、日本ニ、『エモい』、…適応中デス」
「……却下だ」
間を置かない否定。
「……『エモい』という語彙で、……国家権力を形容するな」
その一言で、和也の中の評価が更新された。
―危険度:極高(言語テロの疑い)。
『……タクミ』
エドワードが、袖を引く。
『……確認だ。『タッ・クン』という単語には、お前の構造を幼児化させる、呪術的効果があるのか?』
『……ねぇよ!! ただのあだ名だ!!』
『……否定する』
間を置かない反論。
『……お前の耳まで赤くなっている。……これはナツミによる『精神占領』の兆候だ』
「……いや、拓海」
横から、拓人が静かに口を挟む。
手帳を開き、淡々と記録する。
「……バイタルに乱れがある。……幼馴染による慢性的ストレス暴露、あるいは英国人による急性執着中毒の併発だな。……隔離が必要だ」
「……うるせぇよ!! 医者の卵が家庭内検問に加担すんな!!」
「まぁまぁ、みんな」
柔らかい声が割り込む。
母・絢子だけが、この場で唯一“通常運転”だった。
「……せっかくいらしたんだから。……今日はお赤飯を炊いて待っているわね」
「……アヤコ。”アカメシ(赤飯)”…祝祭の構造、デスネ」
「あら、詳しいのねぇ。…うふふ、仲良くしましょうね?」
拓海は、天井を見上げた。
エドワードの執着。
菜摘の日常。
父の監視。
兄の診断。
それらが、一斉に押し寄せてくる。
一瞬だけ。
空気が止まった気がした。
(……始まったな)
「……ナツミ」
エドワードが、改めて言う。
『……お前の言語運用は非効率だが、興味深い。私のロジックを破壊しに来たか』
「え、褒めてる? よくわかんないけどサンキュー!」
満面の笑み。
英国の執着と、日本の日常。
その衝突は―
まだゲートを出る前だというのに、すでに死傷者(拓海の精神)を出しながら、幕を開けた。
ジョージの記録:
【サエキ事変・上陸直後】
サエキ家、初対面にてハミルトン様の『論理』を物理的に包囲。
特筆すべきは、『タッ・クン』という音波兵器による著しい動揺。
日本遠征、生存確率――現在、計測不能。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
悠馬君の父、佐伯拓海と、ノアの父、エドワード・ハミルトンのお話です。
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この話もゆるく続いていく予定なので、
また気が向いたときに覗いていただけたら嬉しいです。




