ハミルトン伯爵が幸せになるまで:20
ep700まで終わらせたいなー(´・ω・`)
『待機とは、世界経済の数千億円規模の案件は即断即決できる若き伯爵が、日本の母親からの一本の返事だけは一日が一年にも感じられる現象のことであるという話』
【ハミルトンホール・執務室】
~止まった時間~
日本の母・絢子へ電話を掛けてから、一日。
普段なら数千億円規模の投資案件も数秒で決裁してしまう若き伯爵、
エドワード・ハミルトンは――見事なまでに機能停止していた。
ジョージは呆れたように書類を覗き込む。
「……ハミルトン。」
「仕事しなよ^^」
「している。」
「その書類、逆さまだよ?^^」
「…………っ!?」
慌てて書類を持ち替えるエドワード。
その様子を見た執事長は、そっと別の書類を差し出した。
「若旦那様。こちら、年間予算のご決裁を。」
「……。」
さらさらと署名する。
執事長は困ったように苦笑した。
「若旦那様。」
「そちら、先ほどご決裁いただいた書類でございます。」
ジョージは肩をすくめる。
「完全に上の空だねぇ^^」
その瞬間。
デスクの固定電話が鳴り響いた。
─PRRRRRR……!!
書斎中の空気が凍り付く。
執事たちが一斉に顔を上げた。
エドワードは椅子を弾き飛ばす勢いで立ち上がる。
「……っ!」
執事長はハンカチを握り締めた。
「来ましたか……!」
エドワードは深呼吸を一つ。
受話器を取る。
「……はい。ハミルトンでございます。」
『お世話になります。金融リスク保険のご案内で――』
ガチャ。
無言で電話を切る。
静寂。
ジョージが咳払いした。
「……営業さん、かわいそう^^」
エドワードは額へ手を当てた。
「待っているだけでは精神が保たん……。」
「何かしていなければ落ち着かない。」
ジョージは嫌な予感しかしなかった。
「……何する気?」
「決まっている。」
「舞踏会の準備だ。」
◆
【ロンドン・老舗ブティック】
~過保護、暴走開始~
その日の午後。
エドワードはジョージを半ば強引に連れ出し、ロンドン屈指の老舗ブティックを訪れていた。
店内には、一流デザイナーによるドレスが並ぶ。
純白。
深紅。
エメラルドグリーン。
淡い桜色。
エドワードの翡翠の瞳が、みるみる輝き始める。
「……美しい。」
「こちらも良い。」
「ああ、この色も拓海嬢によく似合う……。」
頭の中では、ジャージ姿の拓海が次々とドレスへ着替えていく。
ジョージは遠い目をした。
「始まったねぇ^^」
エドワードは静かに頷く。
「これも。」
「あれも。」
「……全部いただこう。」
店員は営業スマイルのまま固まった。
「す、すべて……でしょうか?」
「もちろんだ。」
「靴。」
「ジュエリー。」
「バッグ。」
「コート。」
「すべて最高のものを。」
ジョージは頭を抱える。
「……ねぇ。」
「拓海ちゃんのサイズ、知ってるの?^^」
エドワードは不思議そうにジョージを見た。
「当然だ。」
その一言に、店内が静まり返る。
「私に拓海嬢のことで、知らないことなど何一つない。」
店員「…………。」
ジョージ「いや、怖い怖い^^」
「本人まだ何も知らないからね?」
エドワードは胸を張る。
「身長。」
「靴。」
「利き手。」
「好きな食べ物。」
「苦手な食べ物。」
「好きな色。」
「好きな季節。」
「好きな花。」
「すべて把握済みだ。」
ジョージは静かに天井を見上げた。
「……。」
「店員さん。」
「気にしないでください。」
「この人、恋をすると昔からこうなんです^^」
店員は営業スマイルのまま、小さく頷くしかなかった。
こうして、日本からの返事を待つ若き伯爵は、不安と期待を紛らわせるかのように、
今日もまた過保護という名の愛情を全力で暴走させるのだった……(笑)。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
悠馬君の父、佐伯拓海と、ノアの父、エドワード・ハミルトンのお話です。
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この話もゆるく続いていく予定なので、
また気が向いたときに覗いていただけたら嬉しいです。




