ハミルトン伯爵が幸せになるまで:18
まぁ。うん。でしょうね^^
『視察とは、妹を舞踏会へ誘った英国の若き伯爵の人物を確かめるため学園都市へ乗り込んだ長女(詩織)が、電動キックボードで爆走し、男子学生を叩きのめし、パブへ爆進する野生児と、それを見て「可愛い……///」と幸せそうに微笑む過保護魔王を目撃し、「問題なのは拓海の方です」と母へ報告する現象のことであるという話』
【学園都市・メインストリート】
~姉の視察~
スコットランド・エディンバラ在住。
長女・佐伯詩織は、母・絢子からの頼みを受け、妹・拓海の様子を確かめるため学園都市を訪れていた。
目的は二つ。
妹を舞踏会へ招待したという「ハミルトン」という青年がどんな人物なのか。
そして、拓海がどんな学生生活を送っているのか。
詩織は静かに歩きながら思う。
(拓海も、英国へ来てまだ数か月。)
(そろそろ生活にも慣れてきた頃かしら。)
(舞踏会へ招待されるくらいなのだから、少しは淑女らしく……。)
そんな姉の淡い期待は、わずか数十秒で粉々に砕け散った。
広場の向こうから聞こえてくる、聞き慣れた声。
「──どけぇぇぇぇぇ!!!!!^^」
ブォォォォォン!!
電動キックボードで全力爆走するジャージ姿の妹。
詩織「…………。」
男子学生が笑顔で手を振る。
「佐伯ー!」
「おう!!^^」
バシィィン!!
景気よく背中を叩き、そのまま肩を組んで大笑い。
詩織「…………。」
さらに講義棟の前では男子学生同士が揉め始める。
「──やめろこのバカちんがぁぁ!!^^」
ドゴォォォン!!
仲裁に入ったはずの拓海が、二人まとめて転がしていた。
周囲から歓声が上がる。
「さすが佐伯!」
「お姉さまー!」
教授が落とした大量の本も軽々と抱え上げ、
「おう! 持つ持つ!^^」
女子学生から感謝され、男子学生からは、
「今日パブ行こうぜ!」
「おう! おごれよバカ日常!^^」
豪快な笑い声がキャンパス中へ響いた。
詩織は静かに空を見上げる。
(……お母様。)
(心配する相手、そこではありません。)
◆
【木陰】
~もう一人の当事者~
ふと視線を動かした詩織は、広場の木陰に一人の青年を見つけた。
仕立ての良いスーツ。
整った立ち姿。
そして、翡翠の瞳は広場だけを見つめている。
その先には……当然、拓海。
エドワードは頬をほんのり赤く染め、幸せそうに微笑んでいた。
(……可愛い。)
(今日も、なんて無邪気なのだ……。)
その横でジョージが苦笑する。
「ハミルトン。」
「今日も幸せそうだね^^」
詩織は二人を見比べ、小さく息を吐いた。
(……なるほど。)
(この方は、噂どおり礼儀正しくて誠実そう。)
(でも……。)
(妹より、この人の方が少し重症かもしれないわ。)
◆
【日本・千代田区】
~現地調査報告~
その日の夕方。
詩織は母へ電話を掛けた。
「お母様。」
『何か分かった?』
「ええ。」
「ハミルトン様ですが……。」
一拍置いて続ける。
「少なくとも、お母様が心配されるような方ではありません。」
『そう。』
「とても礼儀正しく、誠実そうな方でした。」
絢子は静かに頷く。
『それなら安心ね。』
詩織は苦笑しながら続けた。
「ただ……。」
『ただ?』
「──問題なのは、拓海の方です。」
『……。』
『……そう。』
母は静かに目を閉じた。
「詳しく聞かせてもらえるかしら。」
こうして、千代田区の母とエディンバラの姉による現地調査の結果、
疑われていた若き伯爵よりも、自由奔放に学園を駆け回る妹の方が、
よほど目を離せない存在であることが判明したのだった……(笑)。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
悠馬君の父、佐伯拓海と、ノアの父、エドワード・ハミルトンのお話です。
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この話もゆるく続いていく予定なので、
また気が向いたときに覗いていただけたら嬉しいです。




