↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
666/734

ハミルトン伯爵が幸せになるまで:17

相変わらずゆるゆると進む

許可パーミッションとは、西欧の若き伯爵が人生で初めて「母親」という存在へ真正面から礼を尽くし、その誠意だけで最初の扉を開く現象のことであるという話』


【ロンドン・ハミルトン別邸】

~誠意のコンパイル~


受話器を握るエドワードの手には、まだ微かな震えが残っていた。


しかし、その声には迷いも、普段の甘さもない。


エドワード


「……クリスマスに開催するハミルトン家の舞踏会へ、

ぜひ拓海さんをご招待したく、お電話いたしました。」


最後まで礼を尽くし、誠意だけを言葉に乗せる。

電話の向こうで、母・絢子は静かに問いかけた。


『……一つ、お聞きしてもよろしいですか。』


「……はい。」


『あなたは、拓海とどういうご関係なのでしょう。』


翡翠の瞳が揺れた。


恋人ではない。

婚約者でもない。


今の自分は、彼女にとって「スケベ外人」であり、「変態外人」であり、

せいぜい「エド」と呼ばれる知り合い程度の存在だ。


それでも。

偽ることだけはしたくなかった。


「……大切な学友です。」


短く、真っ直ぐな答えだった。

受話器の向こうで、小さな沈黙が流れる。


『……学友、ですか。』


「はい。」


再び静寂。

やがて絢子は穏やかに口を開いた。


『お話はよく分かりました。』


『ですが、娘のことですので、一度考えさせていただけますか。』


「もちろんです。」


「お時間をいただければ幸いです。」


『ありがとうございます。』


『失礼いたします。』


静かに電話が切れた。


ジョージは小さく笑う。


「……ハミルトン。」


「よく言ったね。」


「完璧な誠意だったよ。」


エドワードは深く息を吐き、そのままデスクへ突っ伏した。


人生最大の交渉、その第一歩は終わった。



【日本・千代田区 佐伯家】

~母の判断~


電話を切った絢子は、静かに湯呑みを手に取った。


(礼儀は申し分ない。)


(誠実な方なのも伝わってきた。)


一口、お茶を含む。

それでも結論は変わらない。


(……でも。)


(ハミルトン?)


(その方がどんな方なのか、私はまだ何も知らない。)


一瞬だけ、拓海の顔が浮かぶ。


(拓海に聞く……?)


すぐに首を横へ振った。


(……駄目ね。)


(あの子の「大丈夫」は、まるで当てにならないもの。)


ならば、確認する相手は一人。


絢子はスマートフォンを手に取る。


「……詩織。」


数回のコール音。


『お母様?』


「少しお願いがあるの。」


「拓海を舞踏会へ招待したいという方から、お電話をいただいたわ。」


『……え?』


「ハミルトン、と名乗っていた。」


その瞬間。

電話の向こうで詩織が息を呑む。


『……ハミルトン?』


『それって……もしかして、あのハミルトン伯爵家の……?』


絢子は静かに頷いた。


「だから、お願い。」


「その方がどんな方なのか。」


「それと、拓海が向こうでどんな学生生活を送っているのか。」


「あなたの目で見てきてちょうだい。」


短い沈黙のあと、詩織は力強く答えた。


『分かった。』


『私が見てくる。』


電話が切れる。


母は日本で。

姉はエディンバラで。


そして何も知らない拓海は、今日もどこかで豪快に笑っている。


妹を案じる姉は静かに立ち上がった。

その先で待っているのが、「野生へ完全回帰した拓海」だとは、まだ知る由もなかった。


ここまで読んでいただきありがとうございます。


悠馬君の父、佐伯拓海と、ノアの父、エドワード・ハミルトンのお話です。


いいねや感想など、いつも励みになっています。

この話もゆるく続いていく予定なので、

また気が向いたときに覗いていただけたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。