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ハミルトン伯爵が幸せになるまで:16

おかしい・・もっとハイテンポで進めるはずだったのに・・・

第一声コールとは、西欧の若き伯爵が世界中の要人とは渡り合えても、

ただ一人の日本の母親へ国際電話を掛けるだけで手が震える現象のことであるという話』


【ロンドン・ハミルトン別邸:書斎】

~運命の国際電話~


ハミルトン別邸の重厚な書斎。


普段なら世界経済を左右する商談や、各国要人との極秘会談が行われるその部屋は……


今日に限って、国家非常事態にも等しい緊張感に包まれていた。


原因は、たった一つ。


デスクの上に置かれた、一台の固定電話。


その受話器を前に、西欧の若き伯爵エドワード・ハミルトンは、

見事なまでに手をぶるぶると震わせていた。


ジョージ「……ハミルトン。」


「本当に掛けるの?^^」


エドワード「ああ。」


「昨日、決めた。」


「正攻法で、お母上へご挨拶する。」


ジョージは腕を組み、しみじみと頷く。


「……世界経済は平気で動かせるのに。」


「一本の国際電話で、生まれたての子鹿みたいになってるね^^」


その言葉に反論する余裕すらない。


書斎の隅では執事たちまで整列し、固唾を呑んで見守っていた。


ハミルトン家始まって以来執事「旦那様、お紅茶を。」


「……いらない。」


「では、深呼吸を。」


「…………すぅぅぅ。」


ジョージ「過呼吸になってるよ^^」

の重大局面である。



【ダイヤル】

~魔王、自分を励ます~


震える指先で国番号を押す。


ピッ。


市外局番。


ピッ。


佐伯家の番号。


ピッ。


電子音が鳴るたび、エドワードの心拍数は右肩上がりで急上昇していく。


(落ち着け……。)


(エドワード・ハミルトン。)


(私は世界中の交渉で負けたことはない。)


(相手は、日本のお母様だ。)


(礼節を尽くし、誠意を持ってお願いすれば必ず伝わる。)


(大丈夫だ。)


(私はできる……!!)


ジョージはコーヒーを一口飲みながら呟いた。


「その理論。」


「絶対フラグだけど、大丈夫?^^」


プルルルルル……


受話器の向こうで、日本・千代田区の佐伯家を呼び出す音が鳴り響く。

書斎中の視線が、エドワードへ集中した。


誰一人として息をしない。

執事長は両手を胸の前で組み、まるで祈るような表情を浮かべていた。



【回線接続】

~世界経済、停止~


ガチャ。


『……はい。佐伯でございます。』


その一言で――


エドワード「…………。」


【エドワード・ハミルトン

 全思考回路・完全停止】


固まった。


ジョージ「……出たよ?^^」


エドワード「…………。」


執事「旦那様。」


「回線が繋がっております。」


エドワード「…………。」


執事長「旦那様ぁ……!」


ジョージ「このままだと。」


「世界経済より先に電話代だけ増えていくよ^^」


受話器の向こうでは、不思議そうな声が続く。


『……もしもし?』


『お電話、遠いでしょうか?』


その瞬間。


エドワードは弾かれたように背筋を伸ばした。


「――ッ!!」


「し、失礼いたしました!!」


「わ、私は……!」


「エドワード・ハミルトンと申します!!」


書斎が静まり返る。


一秒。

二秒。

三秒。


執事長が拳を握る。


「……。」


「……名乗れた。」


執事一同


「おおぉぉぉ……!」


パチ……


パチパチ……


パチパチパチパチ!!


ジョージ「何で拍手してるんだよ^^」



【日本・千代田区 佐伯家】

~最強の母~


『……ハミルトン様。』


絢子の声が、ほんの少しだけ静かになる。


「はい。」


「突然のお電話を差し上げましたこと、お詫び申し上げます。」


「本日は、お嬢様……佐伯拓海さんのことで、お話ししたく、お時間を頂戴いたしました。」


受話器の向こうが静かになる。


「…………。」


エドワードの額を、冷や汗が一筋流れた。


(怒っておられる……。)


(当然だ……。)


(突然、名も知らぬ外国人から娘の話をされれば……。)


その横でジョージが小さく呟く。


「いや。」


「たぶん今、『ハミルトン?』って頭の中整理してるだけだから^^」


やがて、絢子は穏やかに口を開いた。


『……どうぞ。』


その二文字だけで十分だった。


エドワードの翡翠の瞳が、一気に輝きを取り戻す。


(……聞いてくださる。)


(お母上は……私の話を聞いてくださる……!!)


執事長「旦那様……!」


執事「第一関門突破です……!」


ジョージ「まだ何も突破してないけどね^^」


エドワードは大きく息を吸い、人生で最も真剣な声で切り出した。


「実は――。」


「クリスマスに開催いたします、ハミルトン家の舞踏会へ……。」


「拓海さんをご招待したく、お電話いたしました。」


受話器の向こうで、お茶の湯呑みが静かに置かれる音がした。


『……そうでしたか。』


一拍。


『それで。』


『あなたは、拓海と……どういうご関係なのでしょう?』


「…………。」


書斎の空気が凍りつく。


ジョージは静かに天井を見上げた。


「……。」


「始まったね^^」


ここまで読んでいただきありがとうございます。


悠馬君の父、佐伯拓海と、ノアの父、エドワード・ハミルトンのお話です。


いいねや感想など、いつも励みになっています。

この話もゆるく続いていく予定なので、

また気が向いたときに覗いていただけたら嬉しいです。

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