ハミルトン伯爵が幸せになるまで:15
拓海は女でも拓海です
『混迷とは、西欧の過保護魔王が「母上攻略」という人生最大の難関へ挑み、日本では母・絢子が娘を舞踏会へ誘った男を追い始める中、当の狂犬お嬢様(拓海)だけが「ラーメンと寿司^^」しか考えていない現象のことであるという話』
【学園都市・昼休み】
~主人公だけ通常運転~
翌日
クリスマス休暇を目前に控えた学園都市は、どこか浮き足立っていた。
「実家帰る?」
「俺はスキー!」
「彼女と旅行!」
「いいなー!」
学生たちが思い思いの予定を語り合う中、その輪の中心では佐伯拓海が
缶ジュースを片手に満面の笑みを浮かべていた。
「日本帰るならさ!」
「まずラーメン!」
「寿司!」
「牛丼!」
「コンビニのおにぎり!」
「あと焼肉!!^^」
友人たちが吹き出す。
「お前、食い物しか出てこねぇな。」
「でもさ。」
「イギリスのクリスマスも綺麗だろ?」
「マーケットもあるし。」
「イルミネーションもすごいじゃん。」
拓海は一度だけ頷いた。
「ああ。」
「綺麗だよな。」
「マーケットも楽しい。」
「だろ?」
一拍。
拓海は真顔で言った。
「でも。」
「飯がまずいだろ!!!^^」
一瞬の静寂。
「そこかよ!!」
「結局それか!」
「お前ブレねぇな!」
笑い声が広場へ響き渡る。
その少し離れた場所。
大きな木の陰から、その様子を見守る二人の青年がいた。
エドワードは静かに目を閉じる。
(……今だ。)
ジョージが小さく肩を叩く。
「ハミルトン。」
「昨日は『お母上へご挨拶する』なんて大口叩いたんだ。」
「まず本人と話してきなよ。」
エドワードはゆっくり頷く。
「ああ。」
「逃げるわけにはいかない。」
ゆっくりと拓海のもとへ歩み寄る。
「拓海嬢。」
「あ?」
「少々、お時間をいただいてもよろしいでしょうか。」
拓海は缶ジュースを飲みながら笑う。
「いいぞ^^」
「じゃ、俺ら学食行ってるわ。」
友人たちはニヤニヤしながら、その場を離れていった。
二人きりになる。
エドワードは静かに息を整えた。
「クリスマス休暇ですが……。」
「本当に日本へ帰られるのですね。」
「帰る^^」
即答だった。
「飯うまいし。」
エドワードは一瞬だけ肩を落とした。
それでも、昨日決めた覚悟を思い出す。
「……ですが。」
「私は。」
「ぜひ、あなたにハミルトン家の舞踏会へご参加いただきたいと思っています。」
拓海は首を傾げた。
「帰ってきたら出るぞ?^^」
その一言に、エドワードの表情が一気に明るくなる。
しかし。
「まぁ。」
「かーちゃんが『帰れ』って言ったら帰るけど^^」
再び沈黙。
エドワードは静かに拳を握った。
「……でしたら。」
「一つ、お願いがあります。」
「ん?」
「お母様から、舞踏会参加のお許しをいただけないでしょうか。」
拓海は数秒きょとんとしたあと、不思議そうに首を傾げた。
「?」
「……あ。」
「そっか。」
「かーちゃんか。」
「そんなもん。」
「自分でカーちゃんに電話すりゃいいじゃん^^」
「…………。」
「…………。」
少し離れた場所から、そのやり取りを見守っていたジョージが吹き出した。
「ハミルトン。」
「それが一番早いね。」
エドワードは空を見上げ、静かに目を閉じた。
西欧の若き魔王。
人生最大の難関。
『佐伯絢子へ国際電話をかける』
その決意だけは、より一層固まったのだった……(笑)。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
悠馬君の父、佐伯拓海と、ノアの父、エドワード・ハミルトンのお話です。
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この話もゆるく続いていく予定なので、
また気が向いたときに覗いていただけたら嬉しいです。




