ハミルトン伯爵が幸せになるまで:12
ずれる認識(`・ω・´)
『平行とは、人生最高の初デートを計画した過保護魔王と、タダ飯だけを楽しみにドカジャン姿で現れた狂犬お嬢様(拓海)の目的が、最後まで一ミリも交わらない現象のことである』という話
【学園都市・広場前】
~人生最高の初デート~
「クリスマスだから。」
「初デートだから。」
「彼女には、最高の一日を過ごしていただきたい。」
そう考えた結果、
エドワード・ハミルトンは、少しやり過ぎた。
待ち合わせ場所には、黒塗りのリムジン。
運転手がドアを開け、その後ろには老執事。
車内には温かい飲み物と膝掛け。
マーケットでは特別案内。
食事は予約済み。
エドワードは一つ頷く。
「……完璧だ。」
その時だった。
「おー! エド!!^^」
元気な声が響く。
振り向いたエドワードは、その場で固まった。
モコモコのドカジャン。
変なポンポンが付いた毛糸帽。
軍手。
足元は歩きやすさ重視のスニーカー。
”完全防寒仕様”の拓海が、大きく手を振っていた。
「寒ぃなー!」
「……。」
「エド?」
「…………。」
(愛称。)
(私を。)
(愛称で呼んでくださった。)
ジョージは隣で静かに呟く。
「終わったね。」
「何がだ。」
「君の理性。」
◆
【クリスマスマーケット】
イルミネーションが街を彩る。
エドワードは歩幅を合わせながら微笑んだ。
「この景色をご覧ください。」
「うおっ!」
拓海の目が輝く。
「ソーセージ!!!!^^」
一目散に屋台へ走る。
「一本!」
「二本!」
「ホットワインも!」
エドワードは慌てて後を追う。
「拓海嬢。」
「実は今日―」
「うまっ!!^^」
「……。」
「このホットワイン最高!」
「……。」
「焼き栗ある!」
「……。」
「チュロスも!」
エドワードは何度か話しかけようとする。
しかし
そのたびに拓海は屋台を見つけて走っていく。
「エド!」
「はい。」
「これもうまいぞ!」
「……ええ。」
結局。
エドワードが一番多く口にした言葉は、
「どうぞ。」
だった。
◆
少し離れた屋台。
ジョージはホットワインを飲みながら二人を眺めていた。
「……。」
「進まない。」
一口飲む。
「恋愛は一ミリも進まない。」
もう一口。
「でも。」
「食べ歩きだけは順調だね。」
◆
【帰り道】
「今日は本当にありがとうございました。」
エドワードが静かに頭を下げる。
拓海は満面の笑みだった。
「最高だった!^^」
エドワードの胸が熱くなる。
(私との時間が。)
(彼女にとって。)
(”最高”だった……。)
「また行こうな!」
「はい!」
「ソーセージ!」
「……。」
ジョージが即座に突っ込む。
「ハミルトン。」
「勘違いしない。」
「最高だったのは。」
「君じゃない。」
「ソーセージだ。」
「……。」
少しだけ肩を落とすエドワード。
だが、すぐに顔を上げた。
「拓海嬢。」
「はい?」
「来週、ハミルトン家のクリスマス舞踏会があります。」
「へぇ。」
「ぜひ私のパートナーとして――」
「ドレス持ってねぇ^^」
即答だった。
「でしたら準備します。」
「え?」
「世界最高の仕立て屋に依頼します。」
「マジで?」
「もちろんです。」
拓海は少し考えてから笑った。
「じゃあ行く!^^」
「飯も出る?」
「もちろんです。」
「やった!」
その一言だけで十分だった。
エドワードは静かに微笑む。
ジョージは空を見上げて苦笑する。
「……結局。」
「最後まで目的が違うんだよなぁ。」
ここまで読んでいただきありがとうございます。
悠馬君の父、佐伯拓海と、ノアの父、エドワード・ハミルトンのお話です。
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この話もゆるく続いていく予定なので、
また気が向いたときに覗いていただけたら嬉しいです。




