ハミルトン伯爵が幸せになるまで:10
まぁ、うん(`・ω・´)
『男友達とは、全校男子が狂犬お嬢様(拓海)を「最高のマブダチ」と認識する中、西欧の魔王だけが「可憐な一輪の薔薇」と見つめ続ける、致命的な認識バグのことであるという話』
【学園都市・十一月下旬】
~迫る聖夜と魔王の決意~
冷たい風が学園を吹き抜ける。
気が付けば、季節はもう十一月の終わり。
キャンパスではクリスマスの飾り付けが始まり、学生たちもどこか浮き足立っていた。
そんな中……
若き伯爵エドワード・ハミルトンは今日もまた、柱の陰から静かに佐伯拓海を見守っていた。
……いや。
本人は「見守る」と言い張っているが、ジョージから見れば完全に張り込みである。
「……もうすぐクリスマスか。」
灰色の瞳が細められる。
(今年こそ。)
(今年こそは、拓海嬢をハミルトン家の舞踏会へ正式に招待しよう。)
そう固く決意するものの……
「……。」
「あの。」
「……。」
「こんにちは。」
「……。」
結局、今日も声を掛けられない。
あの「また俺のパンツ見たいのか?^^」事件以来、お茶一つ誘えずに一か月近くが過ぎていた。
「ハミルトン。」
ジョージが呆れ顔で肩を叩く。
「あと一か月もしないうちに舞踏会だよ?」
「分かっている。」
「なら早く誘いなよ。」
「……。」
「……その一歩が難しい。」
「恋する伯爵って、本当に面倒くさいねぇ。」
◆
【中央広場】
~男友達、完成~
一方その頃。
拓海を取り巻く男子学生たちにも、大きな変化が起きていた。
入学当初。
「東洋の美少女だ。」
「可愛い。」
「もしかして彼氏いるのかな。」
そんな淡い期待を抱いていた男子たちは、ここ一か月で一つの結論へ到達する。
**あいつ、美人だけど中身ほぼ男だ**
「佐伯ー!」
「今日パブ行こうぜ!」
「おう! 行く行く!^^」
バシィッ!
男子の背中を遠慮なく叩く。
「レポート終わった!」
「マジか! お疲れ!」
ガシッ。
肩を組む。
「筋トレ付き合え!」
「いいぞ!」
「飯おごれ!」
「却下だバカちん!」
ガハハハ!
豪快に笑う。
学食ではフィッシュ&チップスを頬張り、木を見つければ登り、
電動キックボードでは「どけぇぇぇ!」と叫びながら構内を走り抜ける。
服装は今日もヨレヨレのパーカーにジャージ。
髪は適当に一本結び。
それでも、不思議と誰よりも目を引く。
凛々しく、真っ直ぐで、誰にでも分け隔てなく接するその姿は、
女子生徒からは「最高のお姉さま」と慕われ、
男子生徒からは「最高のマブダチ」と認定されていた。
恋愛感情?
そんなものは、誰の頭にも浮かばない。
◆
【木陰】
~世界でただ一人の認識バグ~
「……。」
そんな光景を見つめる翡翠の瞳があった。
エドワードは拓海を見つめ、小さく息をつく。
(……なんと可憐なのだ。)
(誰にでも優しく。)
(誰にでも笑いかけ。)
(無防備すぎる。)
(やはり私が守らねば。)
その横でジョージが男子学生たちへ目を向ける。
「ハミルトン。」
「何だ。」
「周りの男子、全員"最高のマブダチ"として接してるよ。」
「……。」
「恋愛対象だと思ってるの、君だけ。」
「……そうか。」
「つまり。」
「私だけが、彼女の本当の魅力に気付いているということだな。」
「違う。」
「認識がズレてるだけ。」
「……。」
ジョージは空を仰いだ。
(重症だ。)
(この伯爵、もう手遅れだ。)
クリスマスまで、あとわずか。
果たして若き魔王は、「マブダチ」の壁を越え、拓海を舞踏会へ誘うことができるのか。
それとも…また木陰から見守るだけで終わるのか。
その答えを知る者は、まだ誰もいなかった。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
悠馬君の父、佐伯拓海と、ノアの父、エドワード・ハミルトンのお話です。
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この話もゆるく続いていく予定なので、
また気が向いたときに覗いていただけたら嬉しいです。




