ハミルトン伯爵が幸せになるまで:9
この話、別連載に乗せてました_| ̄|○
半日そのままだったのに誰も何も言わないということは
読んでる人がいないのかもしれない(´・ω:;.:...
『窮鼠(藁掴み)とは、若き伯爵エドワードが「エド」という呼び名ひとつで十一月の寒空を初夏と錯覚し、学園中で男気ハグを繰り返す狂犬お嬢様(拓海)へ「また俺のパンツ見たいのか?^^」と煽られ、周囲の誤解を全力で否定しながら、お茶へ誘うことだけは決して諦めない現象のことである』という話
【講義棟】
その日のエドワードは、完全に壊れていた。
教授の講義は耳に入らない。
ノートへ書かれているのは講義内容ではなく、
> エド
という二文字だけ。
その横には、
> 「拓海嬢にそう呼ばれた。」
> 「人生最高の日。」
>「今日は記念日だ。」
などという、誰にも見せられない文章が延々と綴られていた。
「……ハミルトン。」
ジョージが覗き込む。
「何だ。」
「君の脳内、春になってるね。」
「違う。」
「初夏だ。」
「訂正するところそこ?」
エドワードは真剣だった。
「十一月とは思えない。」
「今日は世界が美しい。」
ジョージは吹き出す。
「重症だ。」
◆
その時
窓の外から笑い声が聞こえた。
拓海だった。
今日も男女問わず学生に囲まれ、
「ガハハ!」
と豪快に笑っている。
「お前最高だな!」
男子学生の肩を組み、
女子学生とは抱き合って笑い、
教授には気軽に手を振る。
「ああ……。」
エドワードが頭を抱えた。
「あの男は。」
「肩を組まれている。」
「あれは拓海嬢から組みに行ってる。」
「問題だ。」
「その女子学生は抱きつかれている。」
「あれも拓海ちゃんから。」
「もっと問題だ。」
ジョージは苦笑する。
「羨ましいなら。」
「自分で行けば?」
一拍
エドワードは立ち上がった。
「……そうしよう。」
「お。」
「ついに?」
「正式に話をする。」
「頑張れ。」
◆
【中央広場】
「やあ。」
学生たちの輪へ入る。
「今朝ぶりだね、佐伯嬢。」
一斉に空気が止まる。
「あ。」
拓海が振り向く。
「今朝のスケベ外人^^」
「…………。」
周囲がざわつく。
「スケベ外人?」
「誰?」
「ハミルトン?」
エドワードは咳払いを一つ。
「あれは誤解だ。」
「私は見ていない。」
「神に誓って。」
拓海はニヤリと笑う。
「へぇ?」
「また俺のパンツ見たいのか?^^」
「ぶっ!!」
誰かがジュースを吹いた。
周囲はさらにざわつく。
「パンツ?」
「見た?」
「ハミルトンが?」
エドワードは耳まで真っ赤になる。
「違う!」
「私は見ていない!」
「本当に!」
「偶然!」
「事故だ!」
拓海は腕を組みながら笑う。
「必死だな、エド^^」
「……。」
その一言で、
エドワードは一瞬だけ我に返る。
(今。)
(エド、と呼んだ。)
顔が少し緩む。
ジョージは遠くから頭を抱えた。
(そこじゃない。)
◆
「佐伯嬢。」
エドワードは姿勢を正した。
「誤解を解くためにも。」
「ぜひ。」
「今度、お茶でもご一緒しませんか。」
拓海は少し考える。
「お茶?」
「うん。」
「いや。」
「俺、コーヒー派^^」
「…………。」
エドワードの動きが止まる。
「違う。」
「飲み物ではなく。」
「食堂とか喫茶店とか。」
「ああ。」
拓海は納得したように頷いた。
「そういう意味か。」
「そうだ。」
「じゃあ時間ある時な^^」
「!!」
エドワードの表情が一気に明るくなる。
「本当か!」
「おう。」
「暇だったらな。」
「十分だ。」
「私は待つ。」
拓海は缶ジュースを飲み干すと、
「じゃ、またな。」
と笑いながら去っていった。
その背中を見送りながら、
エドワードは静かに拳を握る。
「……約束した。」
ジョージが隣へ来る。
「おめでとう。」
「やっと前進したね。」
「うむ。」
「ところで。」
「何だ。」
「君、最後まで『スケベ外人』って呼ばれてたけど。」
「…………。」
エドワードは空を見上げた。
「……次の課題だ。」
ここまで読んでいただきありがとうございます。
悠馬君の父、佐伯拓海と、ノアの父、エドワード・ハミルトンのお話です。
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この話もゆるく続いていく予定なので、
また気が向いたときに覗いていただけたら嬉しいです。




