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ハミルトン伯爵が幸せになるまで:7

愛が重い?エドワード(`・ω・´)

『心遣い(ストーカー)とは、初冬の寒空をTシャツとヨレヨレのジャージ姿で闊歩し、男女問わず無自覚に抱きついて勘違い男を大量発生させる狂犬お嬢様(拓海)に対し、「紳士として当然の心遣いだ」と言い張る西欧の魔王エドワードが、ジョージの一言で「粛清」を決意してしまう現象のことである』という話


**************


【学園都市・講義棟】


最近、

学園内で一つの噂が流れ始めていた。


「あの日本人留学生、可愛いよね。」


「しかも距離近くない?」


「昨日なんて肩組まれた。」


「俺なんて抱きつかれたぞ。」


「えっ。」


「もしかして……俺のこと……。」


そんな会話を。

講義棟の柱の陰から、静かに聞いている男が一人。


「……。」


エドワード・ハミルトン。


その灰色の瞳は、今日も冷静だった。


少なくとも表面上は。



問題は、佐伯拓海本人だった。


「おーい!」


廊下の向こうから全力で手を振る。


「テスト終わったぁぁぁ!!」


男子学生が叫ぶ。


「マジか!!」


拓海は嬉しそうに駆け寄り、


ガシッ!!


肩を組む。


「よく頑張ったな!!^^」


バンバンと背中を叩く。


「今日飯行こうぜ!」


「え……。」


男子学生は真っ赤になった。


「う、うん……。」


その様子を見ていた女子学生が苦笑する。


「また勘違いする人が増えたね。」


「仕方ないよ。」


「お姉さま、女子にも同じことするもん。」


その通りだった。


女子学生にも

教授にも

職員にも

拓海は全員同じ距離感だった。


「よっ!」


ガシッ。


「久しぶり!」


ハグ。


「元気だった?」


腕を組む。


本人に恋愛感情など一ミリもない。



しかし

男子学生たちは違った。


「……俺、脈あるのかな。」


「いや、昨日俺にも抱きついてたぞ。」


「え?」


「でも今日、一緒に飯行こうって……。」


「俺にも言われた。」


「……。」


「……全員じゃん。」



【講義棟の陰】


「……ジョージ。」


「何だい。」


「増えている。」


「何が?」


「害虫だ。」


ジョージは柱の陰から顔を覗かせる。


そこには拓海を囲む男子学生たち。


「ああ。」


「友達ね。」


「違う。」


「害虫だ。」


「まだ言う?」


エドワードは真顔だった。


「彼らの視線。」


「明らかに不純だ。」


「いや、君も十分不純だと思うけど。」


「私は純粋だ。」


「恋愛的に。」


「なお悪い。」



ジョージはため息をついた。


「それにしても。」


「佐伯さん、寒そうだね。」


拓海は初冬だというのに、


伸びきったTシャツ

ヨレヨレのジャージ

サイズの大きいパーカー

どう見ても近所のコンビニへ行く格好だった。


「風邪引きそう。」


「……。」


エドワードは何も言わない。


「上着くらい買えばいいのに。」


「……。」


「聞いてる?」


「心遣いが必要だ。」


「はい?」


「彼女は無防備すぎる。」


「だから?」


「見守る。」


「毎日?」


「毎日。」


「朝から?」


「朝から。」


「帰るまで?」


「帰るまで。」


ジョージは額を押さえた。


「ハミルトン。」


「それ。」


「心遣いじゃなくてストーカー。」


「違う。」


「紳士だ。」


「どこの紳士が毎日物陰から観察するの。」



その時だった。


「でもさ。」


ジョージが何気なく口を開く。


「仮に誰か襲おうとしても。」


「佐伯さんなら拳一つで返り討ちだろ。」


「……。」


空気が止まる。


「……襲う?」


エドワードが静かに聞き返した。


「可能性の話だけどね。」


「……。」


次の瞬間。


翡翠の瞳へ静かな闇が宿る。


「粛清だ。」


「早い早い。」


「誰だ。」


「まだいないって。」


「予備軍も含めて粛清する。」


「犯罪だから。」


「学園周辺の警備を強化する。」


「それは分かる。」


「監視体制も増やす。」


「まだ分かる。」


「ハミルトングループ情報部を——」


「分からない。」


ジョージは即座に遮った。


「そこまで行くと国家レベルだから。」


エドワードは腕を組み、

しばらく真剣に考えた。


「……。」


「ならば。」


「私が直接話しかけよう。」


ジョージは目を丸くする。


「お。」


「ようやく?」


「うむ。」


「普通に自己紹介する。」


「それが一番だよ。」


「……。」


エドワードは静かに頷いた。


その頃。


「あーー腹減ったーー!!^^」


拓海は購買へ向かって全力疾走していた。


「パン売り切れるぅぅぅ!!」


「あ。」


エドワードは呆然と立ち尽くす。


「……見失った。」


ジョージは肩を震わせながら笑う。


「ハミルトン。」


「また明日だね。」


こうして、西欧の魔王による長かった『心遣い』は、もう少しだけ続くことになったのである。


ここまで読んでいただきありがとうございます。


悠馬君の父、佐伯拓海と、ノアの父、エドワード・ハミルトンのお話です。


いいねや感想など、いつも励みになっています。

この話もゆるく続いていく予定なので、

また気が向いたときに覗いていただけたら嬉しいです。

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