ハミルトン伯爵が幸せになるまで:4
男だと大型犬だけど女だと狂犬になる拓海さん
『脱ぎ捨て(爆誕)とは、一か月に及ぶ母・絢子の厳しい監視と「小言(誓約書)」から解放されたその瞬間、二度と戻らぬ覚悟で「お嬢様」の仮面を粉砕し、学園都市へ解き放たれた千代田区の狂犬(拓海)の真の姿のことである』という話
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【学園都市・カフェテラス】
~魔王、捜索開始~
授業が始まって数日。
若き次期伯爵エドワード・ハミルトンは、講義の合間という合間に、あの東洋の令嬢の姿を探していた。
「あの女性は、今日は来ていないのか……。」
静かな声。
表情は変わらない。
しかし、その足は無意識のうちにキャンパス中を巡っていた。
その隣でジョージはコーヒーを片手に笑う。
「いやぁ……まさか、あのハミルトン様が女性を探して歩く日が来るとはねぇ。」
「笑うな。」
「至って真面目だ。」
「彼女は、気品と知性を兼ね備えた理想的な淑女だ。」
「正式に挨拶をしなければならない。」
ジョージは肩をすくめた。
(終わってる。)
(完全に恋だ。)
その頃、エドワードの理想の淑女は……
◆
【学生寮】
「いいですか、拓海。」
母・絢子は、机へ一枚の紙を置いた。
『これからの生活の在り方(誓約書)』
・毎日きちんと起きること。
・身だしなみを整えること。
・勉学を最優先すること。
・三食きちんと食べること。
・毎日入浴すること。
・困ったら必ず母か姉へ相談すること。
拓海は神妙な顔で頷く。
「はい^^」
「返事だけはいいのね。」
「はい^^」
ソファの陰では、しっかり鼻をほじっていた。
「拓海。」
「はいっ!!」
「聞いていますか?」
「もちろんです!!」
コンマ一秒で正座。
姿勢百点。
笑顔百点。
猫のかぶり方だけは世界最高峰だった。
「よろしい。」
満足そうに頷いた絢子は荷物を持ち、ヒースロー空港へ向かった。
そして。
タクシーが角を曲がり、完全に見えなくなった、その瞬間。
◆
【狂犬、解放】
「……。」
一秒
二秒
三秒
拓海は窓の外を見つめる。
「……よし。」
バン!!
部屋中に響く音。
「ヒャッハーーーーーー!!!!」
第一ボタン解放。
髪留めを放り投げる。
ブラウスの袖を豪快にまくり上げる。
ベッドへダイブ。
「自由だぁぁぁぁぁぁ!!!!^^」
一か月耐え続けた『お嬢様養成ギプス』。
完全粉砕。
『ハイパー猫かぶりモード』
アンインストール完了。
「まず飯!!」
「街歩く!!」
「面白そうな店探す!!」
「誰か困ってたら助ける!!」
やりたいことリストが脳内で爆速展開される。
こうして。
学園都市に一人の東洋の令嬢は消えた。
代わりに現れたのは。
泥と正義感と「この馬鹿ちんが!」で構成された、千代田区の狂犬――佐伯拓海。
なお、その頃。
学園中を歩き回るエドワード・ハミルトンは、まだ知らない。
自分が必死に探している「可憐な東洋の淑女」が、わずか数分前に絶滅し、
代わりにとんでもない野生児が解き放たれていたことを。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
悠馬君の父、佐伯拓海と、ノアの父、エドワード・ハミルトンのお話です。
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この話もゆるく続いていく予定なので、
また気が向いたときに覗いていただけたら嬉しいです。




