小話12 「委託(ネコ)とは、世田谷のマンションを龍平へ譲るついでに愛猫二匹まで丸投げし、渡英後に悠馬から泣いて問われる、拓海らしい雑な引継ぎのことである」という話
龍平君はめっちゃ真面目に世話しそう
【世田谷・高級マンション】
~ 鍵と、想定外の同居人~
佐伯一家がイギリスへ旅立つ直前。
拓海は、自宅マンションの鍵を龍平の手へ無造作に押し付けた。
「じゃ、あとは頼んだ!」
「……?」
「美咲ちゃんと住め^^」
そう言い残すと、本人は荷物を抱えたまま、さっさと空港へ向かってしまった。
龍平は鍵を見つめ、小さく息を吐く。
(……まだヴィクターの脅威は消えていない。)
(佐伯さんが戻るまで、美咲を守る。それが俺の役目だ。)
そう自分に言い聞かせ、その日のうちに美咲と共にマンションへ移り住んだ。
玄関を開ける。
静まり返った室内。
部屋の中は佐伯一家がいた時のまま残されている。
そのままリビングへ足を踏み入れた瞬間だった。
「……ん?」
部屋の中央。
堂々と置かれた二つの大型ケージ。
その中では、一匹は黒、一匹は白。
ふわふわとした二匹の猫が、のんびりこちらを眺めていた。
「…………」
視線を横へ向ける。
テーブルの上には、一枚のメモ。
【メモ】
『事件が落ち着いたら戻る!
ネガとポジをイギリスへ連れて行けねぇから、
戻るまで世話よろしく!!^^』
拓海
「…………」
もう一度読む。
「…………」
天井を見上げた。
(……聞いてない。)
そこへ荷物を抱えた美咲が入ってくる。
「きゃーーっ!!」
ケージへ駆け寄る。
「えええ?何この子達!!かわいいーーーっ!!
この子たち、すっごくかわいい!!」
しゃがみ込み、夢中で猫たちを撫で始める。
ゴロゴロと喉を鳴らすネガ。
ケージ越しにじゃれるポジ。
その笑顔を見てしまえば、龍平も何も言えない。
静かにため息をついた。
(……まあ。)
(美咲が喜んでいるなら、それでいいか。)
【数日後・英国ウィルトシャー ハミルトンホール東館】
引っ越しも一段落し、家族で荷物を片付けていた昼下がり。
五歳の悠馬が、不安そうな顔で拓海の服を引っ張った。
「……お父さん。」
「ん?」
「……ねがとぽじは?(´;ω;`)」
「…………」
数秒、考える。
そして。
「あーーーーーっ!!」
「!?」
「忘れ、、いや!預けてきた!!!」
「え?」
「つれてこれねぇから龍平に任せてきた!! ガハハ!!^^」
一瞬
悠馬の思考が止まる。
龍平
日本
ネガ
ポジ
………父
全部が一本の線で繋がった。
「…………」
そして。
「このクソ親父ぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!(´;ω;`)」
東館中に、五歳児とは思えぬ絶叫が響き渡った。
こうして
美咲を守るために世田谷マンションへ引っ越したはずの龍平は、
気付けば猫二匹の飼い主(仮)となり。
イギリスへ渡った悠馬は、大好きなネガとポジを置いてきた事実を、
父親が渡英後に思い出すという最悪の形で知ることになる。
一方その頃、日本では
ネガ
「にゃあ。」
ポジ
「にゃ。」
二匹は初日から美咲の膝を占領し、龍平だけが「猫のトイレの掃除方法」をスマホで必死に検索していたのだった……(笑)。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
悠馬君の父、佐伯拓海と、ノアの父、エドワード・ハミルトンのお話です。
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この話もゆるく続いていく予定なので、
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