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小話11 「考察(アナライズ)とは、政略結婚を持ちかけられた女性経営者が、その裏にある「日本人への重すぎる片想い」を一瞬で見抜き、「あなた面倒くさい男ね」と結論づける現象のことである」という話

ジェシカさんはお見通しです。(`・ω・´)

【ジェシカの回想】

~ニューヨーク~


大学時代、

仲間たちと立ち上げた小さなIT企業は、奇跡のような成功を収めた。


徹夜で書いたコード。

寝袋で過ごしたオフィス。

失敗と改善を繰り返しながら、会社は世界へ羽ばたいた。


だが、IT業界の変化は早い。


創業メンバーは次々と会社を去り、気付けば最後まで残っていたのは私一人だった。


会社を守るか

理念を守るか


その答えを探していた時だった。


英国最大級の企業グループ――ハミルトングループ。


その総帥自ら、ニューヨークへ来るという知らせが届いた。


若き魔王

初めて会ったエドワード・ハミルトンは、想像以上に若かった。


まだ三十にも届かない。


だが、その翡翠の瞳には、一切の迷いがなかった。


数日に及ぶ交渉。

企業理念

従業員の雇用

経営権

互いに一歩も譲らぬまま、最後の確認へ入った、その時……


彼は静かに言った。


「……私と結婚してほしい」


一瞬、言葉を失った。


”恋愛感情ではない”


彼は最初からそう言っていた。


経営は私が続ける

生活も今まで通り

互いの自由も尊重する


完全な契約結婚。


そして………


「後継者だけは必要だ」


なるほど。

私は少し考え、提案した。


「……人工授精にしましょう」


「構わない」


即答だった。

迷いは、一秒もない。


その瞬間、

私の頭の中で、一つのプログラムが完成した。


(……なるほど)


(この男には、好きな人がいる)


”わかりやすい男ね”


後日、

契約内容を確認している時、私は何気なく尋ねた。


「あなた、好きな人がいるでしょう?」


「……答える義務はない」


即答、

あまりにも分かりやすい。


私は苦笑した。


「その人とは結婚できなかったの?」


エドワードは少しだけ目を伏せ、静かに答えた。


「……『彼』に問題はない」


”彼”


私はそこで、すべてを理解した。


「……ああ、そういうこと」


世界には、色々な愛の形がある。

それだけの話だった。


【東館】


イギリス・ウィルトシャー

ハミルトンホール。


本館に隣接する東館は、大規模な改築工事の真っ最中だった。


私は尋ねた。


「誰が住むの?」


「……タクミだ」


その名前を口にした瞬間だけ

彼の声が、ほんの少し柔らかくなった。


「ここへ来ることになるかもしれない」


「……そうならないことを願っているが」


その言葉とは裏腹に。


屋敷

仕事

警備

教育

生活

子ども部屋まで

まるで、その男が明日にでも来るかのように、完璧な受け入れ態勢が整えられていた。


私は思わず笑ってしまう。


(……用意周到にも程があるでしょう)


(あなた、本当に面倒くさい男ね)


【初対面】


それからしばらくして。


その「タクミ」は、本当に現れた。


奥さんと、子どもたちを連れて。


屋敷中が慌ただしく動き始める。


”東館の主が帰ってきた”


誰もがそう口にしていた。


そして私は初めて、その男を見た。


豪快に笑い

誰とでも肩を組み

子どもを抱き上げ

使用人にまで笑顔を向ける。


「なるほど。」


私は納得した。


この男は、人を惹きつける

意識しているわけでもなく

努力しているわけでもなく


ただ、自然に。


だから

エドワードが二十年近く、一人で抱え続けた理由も理解できた。


【面倒くさい男】


後日。


執務室で書類に目を通すエドワードへ、私は尋ねた。


「ねぇ、彼は知っているの?」


「何をだ」


「あなたの気持ちよ」


エドワードはペンを止めることもなく答えた。


「……いや」


そして続ける。


「君も、拓海には余計なことは言うな」


「彼は私の”無二の親友”だ」


私は小さく息を吐いた。


この男は

世界有数の企業を率いる天才経営者でありながら、

恋愛に関してだけは、驚くほど不器用だった。


「……本当に」


思わず笑みがこぼれる。


「あなたって、本当に面倒くさい男ね」


エドワードは、その言葉の意味を最後まで理解しないまま、黙って書類へ視線を戻した。




ここまで読んでいただきありがとうございます。


悠馬君の父、佐伯拓海と、ノアの父、エドワード・ハミルトンのお話です。


いいねや感想など、いつも励みになっています。

この話もゆるく続いていく予定なので、

また気が向いたときに覗いていただけたら嬉しいです。

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