小話6 「画策(トラップ)とは、親友を一代限りで手放さず、その子どもたちまで婚姻同盟で囲い込み、佐伯家との縁を未来永劫ハミルトン家へ固定しようとする、西欧の魔王の執念のことである」という話
エドワードの家族計画?
【ハミルトンホール本館・執務室】
~ 魔王の絶対勝利宣言~
「……よし。」
月明かりが差し込む静かな執務室。
エドワード・ハミルトンは、手元の万年筆を静かに置き、小さく頷いた。
拓海が来た。
しかも、自ら助けを求め、自らこの屋敷へ来てくれた。
これ以上に喜ばしいことはない。
十年間、
日本で泥だらけになりながら戦い続けていた親友のために、世界統括会議議長の席を空け、
東館を整え、使用人を集め、日本語教育を施し、渡航経路まで準備してきた。
すべて報われた。
拓海はもう安心して暮らせる。
菜摘さんも。
悠馬君も。
双子も。
ここなら誰も傷付けられない。
エドワードは静かに目を閉じた。
(……では。)
(次は、その先だ。)
友情は一代で終わらせるには惜しい。
家族になったのなら、その子どもたちもまた家族であればよい。
それだけのことだ。
幸いにも、間もなくジェシカとの間に子どもが生まれる。
実に都合がいい。
(女児なら悠馬君と。)
(男児なら双子のどちらかと。)
(そうすれば佐伯家とハミルトン家は、百年先まで家族だ。)
翡翠の瞳が満足そうに細められる。
完璧だ。
誰も不幸にならない。
全員が幸せになる。
これ以上に合理的な未来設計は存在しない。
「……エドワード?」
静かな声に振り返る。
ドアの前には、大きなお腹を優しく支えたジェシカが立っていた。
「……ジェシカ。」
夫の顔を一目見て、ジェシカは確信する。
……また何か考えている。
しかも、
かなりロクでもない。
「……ねぇ。」
「はい。」
「また変なこと企んでるんじゃないでしょうね?^^」
「企んではいない。」
エドワードは真顔で首を横に振った。
「私は、ハミルトン家と佐伯家が百年先まで家族であり続ける方法を考えていただけだ。」
「…………。」
「我が子と悠馬君、あるいは双子との婚姻であれば─」
「それを企みって言うのよ、この馬鹿伯爵!!!」
クッションが飛ぶ。
見事にエドワードの顔面へ命中した。
その頃、日本支社。
モニター越しに一部始終を見ていたジョージは、腹を抱えて笑い転げていた。
「ぶはははははっ!!」
『駄目だよハミルトン様!』
『拓海君に知られたら、「お前、人んちの子どもで何やってんだバカちんが!!^^」って、
本気で張り倒されるよ!』
「問題ない。」
エドワードはクッションを拾い上げ、淡々と言う。
「婚約書類はまだ作成前だ。」
「まだ!?」
「来週中には完成する予定だ。」
「作るなーーーーーー!!!!」
二発目のクッションが飛んだ。
こうして今日もまた。
親友を手元へ迎え入れたことに満足するどころか、
その子ども、その孫、その先までを「家族」として迎え入れる計画を、
ごく自然に組み立ててしまう過保護伯爵の暴走は、
妻のクッションによって一時中断されたのであった。
なお本人は最後まで、
「何が問題なのだろう?」
と、本気で首を傾げていた。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
悠馬君の父、佐伯拓海と、ノアの父、エドワード・ハミルトンのお話です。
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この話もゆるく続いていく予定なので、
また気が向いたときに覗いていただけたら嬉しいです。




