小話4 「隔離(ロックアウト)とは、日本出張へ向かった世界統括議長が『そのまま日本へ逃げる』可能性を一ミリグラムも許容しない魔王が帰国経路ごと封鎖する過保護な現象のことである」という話
ずっとこういうのを書いていたい
【数日後:執務室】
~アジアの地図に潜む違和感~
数日後。
ハミルトンホールの豪華すぎる執務室で、拓海は慣れない手つきで『世界統括会議』の
分厚い資料に目を通していた。
膨大な数字。
世界中へ張り巡らされたハミルトングループの組織図。
何気なくページをめくっていた拓海の指が、不意に止まる。
「……。」
もう一度見る。
中国
韓国
台湾
シンガポール
タイ
インド
……
”日本だけが、ない”
拓海はゆっくりと顔を上げた。
「……エド。」
デスクの向こうで書類へ目を通していたエドワードが視線だけを向ける。
「何だ。」
拓海は資料を指差した。
「これさ……日本、なくない?」
「……。」
「—俺、日本人なんだけど?」
エドワードは一瞬だけ資料へ目を落とし、何事もなかったかのように紅茶を一口飲む。
「ああ。」
「気付いたか。」
「……気付くわ!!」
「日本はジョージに任せてある。」
「え?」
「日本は危険だからね。」
「……危険?」
「君が行く必要はない。」
「いや、俺の母国なんだけど!?」
エドワードは穏やかに微笑んだ。
「ジョージは優秀だ。」
「日本は彼に任せれば十分だよ。」
【過保護の自白】
~帰ってこなくなる可能性~
拓海は腕を組み、疑念一二〇〇%の目でエドワードを睨む。
「……なんか隠してないか?」
「隠していない。」
「ほんとか?」
「もちろんだ。」
〇・一秒の迷いもない即答だった。
拓海はじーっとエドワードを見つめる。
エドワードは優雅にトーストを口へ運び、紅茶を嗜んでいる。
静まり返る執務室。
「……絶対、嘘だ。」
「嘘ではない。」
「じゃあ、本当の理由は?」
エドワードはカップを静かにソーサーへ戻した。
そして、ごく自然な口調で答えた。
「……君が日本へ行けば。」
「……?」
「そのまま帰って来なくなる可能性がある。」
一拍。
「だから担当から外した。」
拓海は固まった。
「…………。」
「…………。」
「……お前、それ本音だろ。」
エドワードは少しだけ首を傾げる。
「何か問題でも?」
「問題しかねぇよ!!!!^^」
「日本出張まで監禁すんなバカちんが!!!!^^」
その瞬間。
壁一面の大型モニターが起動した。
画面いっぱいにジョージの笑顔が映し出される。
『あははは! サエキ君、ごめんね^^』
『日本行きの出張申請だけは、全部僕のところへ回るようになってるんだ。』
拓海は嫌な予感しかしなかった。
「……で?」
ジョージは営業スマイルのまま親指を立てる。
『僕が却下する^^』
「システム化すんなぁぁぁぁ!!!!」
『ちなみに、飛行機の予約も日本行きだけは自動でキャンセルされる設定だよ^^』
「どこまで徹底してんだ、あの魔王は!!!!」
モニターの向こうでジョージは肩をすくめた。
『旦那様が言うにはね。』
『「タクミは一度日本へ帰せば、そのまま居着く可能性がある」』
『だから日本だけは最初から選択肢に入れないのが一番安全なんだって^^』
拓海はその場に崩れ落ちた。
「……俺の母国が……。」
「……会社のシステムから消えてる……。」
エドワードは静かに紅茶を飲み終えると、満足そうに一言だけ告げた。
「完璧な危機管理だ。」
「危機管理じゃねぇ!! ただの囲い込みだろ、バカ!!!!^^」
―エドワード・ハミルトンにとって「日本」は危険地帯ではない。
"佐伯拓海を失う可能性が存在する唯一の国"。
だからこそ、最初から担当区域そのものを消してしまう。
それが、西欧の魔王流・過保護なリスクヘッジなのであった(笑)。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
悠馬君の父、佐伯拓海と、ノアの父、エドワード・ハミルトンのお話です。
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この話もゆるく続いていく予定なので、
また気が向いたときに覗いていただけたら嬉しいです。




