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小話1 「保護(監禁)とは、危険から身を隠すことではなく、西欧の魔王(エドワード)の館へ足を踏み入れた瞬間、家族ごと東館の『主(あるじ)』として包囲完了される現象のことである」という話

ここからは小話集と短編です。

はい。作者の完全な趣味です。


【オマケ:到着当日】

~ 豪勢すぎる重力の檻~


イギリス・ウィルトシャー、ハミルトンホール。


重厚なオーク材の扉をくぐり、広大な玄関ホールへ一歩足を踏み入れた瞬間、

黒と白の給仕服に身を包んだ使用人たちが、整然と二列に並び、一斉に深々と頭を下げた。


列の先頭から、白髪の老執事が静かに一歩前へ出る。


「──お帰りなさいませ、佐伯様」


拓海は荷物を抱えたまま固まった。


「……あ?」


執事は穏やかに微笑む。


「東館の主がお戻りになりました。お部屋の準備は、すべて整っております」


「……は?」


拓海は自分を指差した。


「主? 俺?」


「はい。伯爵様より、そのように承っております」


「……どゆこと?」


「……」


老執事は完璧な営業スマイルを崩さない。

答える気はないらしい。


【東館・内覧】

~ 狂気の過保護リフォーム~


渡り廊下を抜け、東館の重厚なダブルドアが静かに開く。


その瞬間

拓海は思わず足を止めた。


「――でかっ!!」


館内を見渡し、目を丸くする。


「え、東館ってこんな広かったっけ!?」


執事は淡々と答えた。


「改装いたしました」


「……は?」


「すべて伯爵様のご命令でございます」


そのまま案内が始まる。


「こちらが佐伯様の書斎。」


「ご夫婦の寝室。」


「奥様のお部屋。」


「ドレスルーム。」


菜摘が目を丸くした。


「え……私のドレスルーム……?」


「はい。」


執事はさらに奥へ進む。


「こちらがお子様方のお部屋でございます。」


扉が四つ並んでいた。


「悠馬様のお部屋。」


「双子のお嬢様方のお部屋。」


そして最後の一室。


「こちらは現在空室でございます。」


拓海が眉をひそめる。


「……何だ、この部屋?」


「伯爵様のご指示でございます。」


「だから何のためだよ。」


「……」


執事は再び営業スマイル。


菜摘が恐る恐る尋ねる。


「ほかには……?」


「お子様専用図書室。」


「プレイルーム。」


「学習室。」


「家庭教師控室。」


「乳母部屋。」


「専用庭園。」


拓海は頭を抱えた。


「……待て。」


「何人育てる気だ、あいつ。」


【魔王、登場】

~完璧な噛み合わなさ~


あまりの規模に、菜摘はそっと拓海の袖をつまんだ。


「……ねぇ、拓海。」


「ん?」


菜摘は広すぎる東館を見回し、小声で囁く。


「……私たち、本当に保護されに来たのよね?」


「……」


「……騙されてない?」


拓海は真顔で頷いた。


「……俺も今、まったく同じこと思ってた。」


その時だった。

廊下の奥から、紅茶のカップを片手にエドワードがゆっくり歩いてくる。


「……何を騒いでいる。」


拓海は勢いよく振り向いた。


「お前だ!!」


エドワードは首をかしげる。


「何か問題でもあったか?」


「問題しかねぇよ!」


拓海は空室を指差した。


「あと一部屋子供部屋多いの、何なんだよ!」


エドワードは一瞬だけ考え、

至って真面目な顔で答えた。


「君たちの子どもが増える可能性を考慮した。」


一拍。


「……いや、増えねぇよ!!」


「未来は誰にも分からない。」


「そのために部屋一つ用意するやつがあるか!!」


「不足してからでは遅い。」


「備えが重いんだよ!!」


菜摘は顔を真っ赤にして拓海の腕を引っ張る。


「た、拓海っ! そんな大声で……!」


拓海はエドワードを指差したまま叫ぶ。


「お前さ!」


「『保護』って言葉、一回辞書で引いてこい!」


エドワードは即答した。


「引いた。」


「危険から守ることだ。」


「守り方がおかしいんだよ、バカちんが!!^^」


エドワードは最後まで、本気で何が悪いのか分かっていなかった。

ここまで読んでいただきありがとうございます。


悠馬君の父、佐伯拓海と、ノアの父、エドワード・ハミルトンのお話です。


いいねや感想など、いつも励みになっています。

この話もゆるく続いていく予定なので、

また気が向いたときに覗いていただけたら嬉しいです。

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