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第五百七十五話 「家族(ファミリー)とは、血の繋がりではなく、『ヨロシク』から始まった友情が、互いの愛する者(日常)を何年経っても護り合う約束へ変わった関係のことである」という話

やったあああああああああ!!!!やっとここまでたどりついたーながかった(´;ω;`)

もうどうでもいい日常を書きとうて書きとうて!!(´;ω;`)

次からしばらくどうでもいい日常を乗っけます。

気が済んだら完結します。

奇特な読者さんいたら付き合ってください!!!

【最終話 ハミルトンホール】

~巡り着いた絶対の城~


イギリス・ウィルトシャー。

雨上がりの空の下、どこまでも続く深い緑の庭園。

その中心に佇むのは、何百年もの歴史を刻んできたハミルトンホール。


巨大な鉄門がゆっくりと開く。


ハミルトン家の紋章を掲げた黒塗りの専用車は、白い砂利道を静かに進み、

噴水の前を抜け、重厚な石造りの屋敷の正面玄関へ滑り込んだ。


「……。」


車内から顔を上げた悠馬が、小さく目を丸くする。


「父さん……。」


「ん?」


「お城?」


拓海は窓の外を見て、苦笑した。


「似たようなもんだ。」


「変なおじさんの家。」


その瞬間

車の外から落ち着いた声が聞こえた。


「聞こえているぞ。」


拓海は吹き出す。


「ガハハハ! 早速いた!」


菜摘も思わず笑った。


「相変わらずね。」


ドアが開く。

最初に降りた拓海は、大きく伸びをする。


「ふぅー……。」


「長かった。」


続いて菜摘。

双子を抱えながら辺りを見回し、小さく息を呑む。


「……すごい。」


「本当に、お城みたい。」


悠馬も父親の服を掴んだまま車を降りる。


視線の先には、高い柱。

大きな窓。

何人いるのか分からないほど並んだ執事とメイド。


その中央に、一人だけ静かに立つ青年。


黒いスーツ。

銀色の髪。

翡翠色の瞳。


エドワード・ハミルトン。

彼は一歩だけ前へ出る。


「……来たか。」


拓海も一歩進む。


「おう。」


それだけだった。

十数年という歳月を経ても、二人に交わす言葉は増えない。

増える必要もない。


菜摘がくすりと笑う。


「久しぶりなのに、それだけ?」


「……十分だ。」


エドワードは静かに答えた。


「昔からこうだからな。」


拓海も肩をすくめる。


「面倒くさい奴だろ?」


「君ほどではない。」


「なんだと。」


「事実だ。」


「お前なぁ。」


菜摘は呆れたように笑った。


「二人とも、本当に変わらないわね。」


その言葉に、エドワードは初めて少しだけ口元を緩めた。


「……そうかもしれない。」


その視線が、ゆっくりと拓海の後ろへ向く。

父親の背中から半分だけ顔を出している、小さな男の子。


エドワードは静かにしゃがみ込んだ。


「……君が、悠馬君かな。」


悠馬は拓海を見上げる。

拓海は優しく頷いた。


「大丈夫。」


「怖くねぇよ。」


「ちょっと面倒くさいだけだ。」


「誰がだ。」


「お前。」


悠馬は少しだけ笑って前へ出る。


「……はい。」


エドワードは、その返事を聞くだけで満足そうだった。


「私の日本語は。」


「君のお父さんが教えてくれた。」


悠馬は首を傾げる。


「父さん?」


拓海は照れくさそうに頭をかいた。


「昔な。」


「俺が教えた。」


「最初に覚えた日本語がある。」


エドワードは、一度だけゆっくり息を吸う。


あの日。

寄宿学校の談話室で。

目の前の少年から教わった、たった一つの言葉。


何度も練習した。


忘れないように。

忘れたくなくて。

そして今日、この日のために。


「─ヨロシク。」


少したどたどしい。

けれど、昔よりずっと自然な日本語。


「『これから、一緒に仲良くしよう。』」


「そういう意味だと教わった。」


「だから。」


エドワードは右手を差し出す。


「ヨロシク。」


「悠馬君。」


悠馬はその大きな手を見る。


少しだけ考える。

それから、小さな手をぎゅっと重ねた。


「よろしく!」


その瞬間だった。


「ガハハハハハ!」


拓海が腹を抱えて笑い出す。


「エド!」


「お前!」


「発音、昔よりずっと上手くなってんじゃねぇか!」


「当然だ。」


エドワードは悠然と答える。


「先生が良かったのでな。」


「誰が先生だ。」


「君だ。」


拓海は鼻の頭をかきながら照れ笑いを浮かべた。


「……へっ。」


「昔の話だ。」


「私にとっては。」


エドワードは悠馬の手をそっと握ったまま続ける。


「昨日のことのようだ。」


拓海は何も言わなかった。

言えなかった。

その一言だけで十分だったから。


「エドワード?」


柔らかな声が屋敷の奥から聞こえる。


ゆっくり姿を現したのは、大きなお腹を優しく支えたジェシカだった。


「お帰りなさい。」


その一言に、菜摘は少し驚く。


"ようこそ"ではない。

"お帰りなさい"だった。


エドワードはジェシカの隣へ歩み寄り、自然に腰へ手を添える。


「紹介しよう。」


「私の妻、ジェシカだ。」


ジェシカは穏やかに微笑む。


「初めまして。」


「いつも主人がお世話になっています。」


拓海は慌てて首を振る。


「いやいや!」


「世話になってるの俺だから!」


「違う。」


エドワードが即座に否定する。


「私だ。」


「なんで張り合う。」


「譲れん。」


「そこかよ!」


思わず全員が笑った。

笑い声が高い天井へ吸い込まれていく。


エドワードは、その笑い声を静かに聞いていた。


そして、拓海を見る。

あの日、寄宿学校で出会った少年。


共に笑い、喧嘩をし、別れ、また巡り会った親友。


今は、その隣に家族がいる。

守るべきものがいる。


エドワードは静かに胸を張った。


「……そして。」


その声に、皆が彼を見る。


「私の、親友だ。」


指し示されたのは、世界を救った英雄でも、警視庁の刑事でもない。

いつものようにガハハと笑い、照れ隠しに鼻をかく、一人の男。


佐伯拓海だった。


拓海は少し照れくさそうに笑う。


「へっ。」


「よろしくな。」


その言葉に

エドワードも、小さく笑った。


「ああ。」


「よろしく。」


その日。


十数年前、異国の談話室で交わされた一つの「よろしく」は、長い時を越え、

新しい家族へと受け継がれた。


そしてハミルトンホールには、今日もまた、誰かの笑い声が響き始める。


物語はここで一区切りを迎える。


けれど……

彼らの日常は、まだ終わらない。

ここまで読んでいただきありがとうございます。


悠馬君の父、佐伯拓海と、ノアの父、エドワード・ハミルトンのお話です。


いいねや感想など、いつも励みになっています。

この話もゆるく続いていく予定なので、

また気が向いたときに覗いていただけたら嬉しいです。

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