第五百四十一話 「露見(プロファイル)とは、印字ではなく人間(感情)を見抜き、『そんな顔しねぇ』の一言で秀才の数式へ最初の違和感を刻む現象のことである」という話
書いてていいのか悪いのかわかるのかグルグル回ってるのかわからなくなってきています_| ̄|○
【合同捜査本部・深夜】
~ 二枚目の写真~
深夜
誰もいない合同捜査本部。
蛍光灯だけが静かに机を照らしていた。
松本龍平は、一枚の封筒を見つめている。
差出人不明。
そこに印字された短い一文。
『真実を知りたくないか』
小さく息を吐く。
中に入っていた一枚の古い写真……
若い女性。
松本薫。
龍平の母。
その隣には、見覚えのない外国人の男。
背景には巨大な港。
鉄骨のクレーンが並んでいる。
龍平は裏返した。
手書きで一行だけ。
〇〇年 横浜港
「……。」
指先に力が入る。
(死んだと思っていた。)
(そう思うことで。)
(忘れようとした。)
(最低の母親だったと。)
(そう決めつけることで。)
(ようやく前を向けた。)
それなのに。
「……母さん。」
写真は。
確かに存在していた。
【翌朝】
刑事課。
拓海がいつものように出勤してくる。
龍平を見る。
すぐに気付いた。
「松本。」
「……はい。」
「何かあったな。」
龍平は少しだけ迷う。
本当は見せたくない。
これは自分だけの問題だ。
巻き込むべきではない。
だが。
昨日
自分が口にした言葉を思い出す。
「信用しているからです。」
龍平は小さく舌打ちすると、
黙って写真を差し出した。
拓海は受け取る。
何も言わない。
十秒。
二十秒。
三十秒。
龍平は口を開く。
「……どうですか。」
拓海は写真から目を離さない。
「……。」
「嫌な匂いがする。」
龍平は眉をひそめた。
「どこがです。」
「分かんねぇ。」
「でも。」
「これ。」
「違う。」
「証拠は。」
「ない。」
「だから。」
拓海は写真を龍平へ返した。
「松本。」
「頼む。」
「ちゃんと調べろ。」
【数日後】
~ 完璧な鑑定~
数日後、
龍平は鑑識結果を机へ置いた。
「紙。」
「インク。」
「現像。」
「年代。」
「すべて本物でした。」
「改ざんもありません。」
「この写真自体は、本物です。」
拓海は静かに写真を見た。
「そうか。」
龍平は報告書を閉じる。
「あなたの違和感は。」
「今回は外れです。」
拓海は首を振った。
「いや。」
「やっぱ変。」
龍平は少しだけ苛立った。
「何がです。」
「全部調べました。」
「証拠もあります。」
「何が変なんです。」
拓海は写真を持ち上げた。
じっと龍平を見る。
「松本。」
「普通さ。」
「母親見つけた写真。」
「相棒に見せる時。」
「そんな顔しねぇ。」
「……。」
「お前。」
「写真見てねぇ。」
「母ちゃん見てねぇ。」
「ずっと。」
「証拠しか見てねぇ。」
龍平は何も言えなかった。
【その夜】
家賃数万円のアパート。
机の上に写真を置く。
龍平はもう一度見る。
今度は紙ではない。
インクでもない。
年代でもない。
”母親だけ”を見る。
笑っている。
「……。」
「気のせいだ。」
写真を置く。
水を飲む。
椅子へ座る。
もう一度
写真を手に取る。
「……。」
目だけが。
笑っていなかった。
龍平は息を止める。
「……佐伯さん。」
「あんたは。」
「何を見てるんですか。」
初めてだった。
拓海の違和感を、
自分の目で確かめたのは。
【General Logistics・地下機密セクタ】
巨大モニター。
部下が報告する。
「管理者。」
「松本龍平。」
「写真の科学鑑定を終了。」
ヴィクターは頷いた。
「予定通りだ。」
「あの写真は本物だからな。」
「だが。」
部下が続ける。
「現在。」
「写真そのものではなく。」
「被写体の表情を調べ始めています。」
ヴィクターの指が止まった。
ほんの一瞬。
「……誰だ。」
「誰が。」
「あの秀才の思考へそんな”ノイズ”を混ぜた。」
部下は即答した。
「世田谷署。」
「佐伯拓海です。」
沈黙。
ヴィクターは画面を見つめる。
そこには写真ではなく、
龍平を見ていた佐伯拓海。
そして、
写真を見つめ直す松本龍平。
静かな沈黙。
やがてヴィクターは、
小さく息を吐いた。
「……そうか。」
「秀才を動かしているのは。」
「写真ではない。」
「佐伯拓海か。」
部下が尋ねる。
「排除しますか。」
ヴィクターは首を横へ振る。
「まだだ。」
「だが。」
「予定を。」
「一つ。」
「修正する。」
ここまで読んでいただきありがとうございます。
悠馬君の父、佐伯拓海と、ノアの父、エドワード・ハミルトンのお話です。
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この話もゆるく続いていく予定なので、
また気が向いたときに覗いていただけたら嬉しいです。




