幕間(オマケ) 「記録は、後世で勝手に”神話化”される」という話
ノア→エドワードの息子
悠馬→拓海の息子
ハミルトン邸、書斎。
「……あった」
ノアが、本棚の奥から一冊のノートを引き抜く。
【サエキ事変:観測記録及び年表】
「……それ」
悠馬が、嫌な予感しかしない顔をする。
「やめた方がいいぞ」
「いや無理」
即答。
「これ“当たり”のやつだろ」
「やめろ」
ノアは、もうページを開いていた。
「・ナツミ:巫女※本人無自覚」
一拍。
「…………」
悠馬も、覗き込む。
さらに一拍。
「……フッ」
「…………ッ」
「……くっ……」
二人同時に、肩が震え始める。
「……やめろ」
悠馬が言う。
「……まだ耐えられる」
ノアは、次の行を読む。
「供給源兼、霊的干渉能力」
「……ダメだ」
「無理」
「無理だこれ」
「ちょっと待って」
「ちょっと待って」
二人同時に崩れる。
「いや待ってこれ」
「“供給源”って何だよ」
「何を供給してんだよ」
「精神じゃない?」
「余計怖ぇよ」
「しかもさ」
ノアが、ページを叩く。
「“本人無自覚”って何」
「最悪だろ」
「気づいてないのが一番怖いだろ」
「やめろ」
悠馬は、すでに顔を覆っている。
「……やめろ」
だが。
ノアは止まらない。
「“神社”」
一拍。
「……確定じゃん」
「違う」
即答。
だが、声が弱い。
「いやでも兄さん、これ全部繋がってるぞ」
「エドワード父上のロジック崩壊」
「拓海父さんの敗北」
「全部この人じゃん」
「違うって言ってるだろ」
そのとき。
「……何を読んでいるんだ?」
低い声、拓海だ。
いつの間にか、背後に立っていた。
二人、固まる。
ゆっくりと、ノアがノートを閉じる。
「……いや」
一拍。
「歴史を」
「閉じろ」
即答。
「返せ」
「嫌だ」
「返せ」
「嫌だ」
「それは家族の名誉に関わる」
「もう手遅れだろ」
「違う」
そのとき。
悠馬が、ぽつりと言った。
「……父さん」
「何だ」
一拍。
「……母さんって」
さらに一拍。
「……巫女なの?」
沈黙。
空気が止まる。
「違う」
即答。
だが。
ほんの一瞬、間が空く。
「……実家が神社なだけだ」
ノアが、ゆっくり頷いた。
「……確定だね」
「違うわ!!」
ノートは、そのまま奪い取られた。
しかし。
その日の夜、ノアの部屋の机の上には。
一枚の紙が、そっと置かれていた。
・ナツミ:巫女※複数証言により確度上昇
ここまで読んでいただきありがとうございます。
悠馬君の父、佐伯拓海と、ノアの父、エドワード・ハミルトンのお話です。
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この話もゆるく続いていく予定なので、
また気が向いたときに覗いていただけたら嬉しいです。




