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第三百二十六話 「それからとは、動いた後に理由を探す行為である」という話

拓海もある意味罪だなw

十二月。ハミルトン邸。


祝祭の光に満ちたその場所は、今のエドワードにとっては、ただの空虚な額縁でしかなかった。


脳裏を掠めるのは、サウス・ケンジントンの夜。

自分の知らない場所で、知らない顔をして、

知らない誰かと結ばれようとしている―佐伯拓海の幻影。


「エドワード様、明日の予定は――」


「変更だ。……帰る」


執事の言葉を遮り、エドワードは立ち上がった。


理由は言わない。


……いや。


言えない。


自分でも、まだ知らないからだ。


車を走らせ、深夜の列車を乗り継ぎ、

彼は冷たい雨の降る学術都市へと“帰還”した。


深夜の寮の廊下。


コンビニの袋を提げた拓海が、角を曲がった瞬間に足を止める。


「……は?」


一拍。


「……おい、エド。なんでここにいんだよ」


「来た」


コートを濡らしたまま、エドワードはそこに立っていた。

ただ、それだけを言いに来たかのような存在感。


「なんでだよ。邸に帰ったんじゃねぇのか。予定はどうした」


「必要だった」


一拍。


「……それ以上の理由は、今はない」


拓海は、心底めんどくさそうに溜息をつく。


「……で? 用はそれだけか?」


鍵を弄りながら、続ける。


「縁談の話なら、だから知らねぇって言ってんだろバーカw

……あんなの、姉貴が勝手に言ってるだけだ」


「断ったのか」


「……断ってるさ」


一拍。


「秒で無理って送ったわ、バカ」


その瞬間。


エドワードの肩から、はっきりと力が抜けた。

凍りついていた表情が、ほんの僅かに解ける。


「そうか」


小さく。


「……断ったのか」


「あーあwww 帰ってきちゃったよ、この人(笑)」


後から追いついたジョージが、暗い廊下でフラッシュを焚いた。


「ハミルトン様、祝祭のメインディッシュを捨ててまで、

サエキの“バカ”を聞きに来るなんて。本当に救いようがないねぇ」


「……用はそれだけか、エド」


拓海が鍵を差し込みながら言う。


エドワードは、少しだけ視線を落とした。


「……私は、理由があって戻ったのではない」


静かに。


「……戻ってから、理由を考えている」


一拍。


「……今、分かった」


顔を上げる。


「私は、君のその不遜な一言を確認しなければ―」


「今日を終えられなかったのだ」


■ジョージの機密ログ(十二月:それからの帰還)


十二月。深夜の寮。


僕は、ハミルトン様が“行動の後に意味を付ける”という、

あまりにも人間らしい愚行を選ぶ瞬間を見たよ。


サエキ。


君は相変わらず、「なんで帰ってきやがったコイツめんどくせぇ」という顔をしているね。


でも。


君が“秒で断った”というその事実が、

今のハミルトン様にとっては、どんな外交条約よりも価値のある誠実に見えている。


ハミルトン様。


君を動かしたのは、知識でも権力でもない。


ただの、名前のない焦燥だ。


戻ってから理由を見つける。


それはつまり―


君が、自分の意思で“サエキという地獄”を選び直した、ということだね。


■ジョージ幕間(観測ログ:80-UK・衝動の肯定編)


エドワード(主演・衝動を正当化する魔王):


「ジョージ。私は確信した」


低く、満足げに。


「タクミの安寧を守れるのは、ハミルトン家の財力ではない」


一拍。


「私の、この“不測の事態に対応する決断力”だ」


「……縁談の件は、既に処理した」


ジョージ(観察員):


「それ、ただのストーカー気質だよ(笑)」


肩をすくめる。


「サエキは君を“救いようのないバカ”だと思ってる」


一拍。


「でもね」


「そのバカさにだけは、付き合ってくれてる」


「君の最大の武器は―理屈が通じないところかもね」


拓海(部屋の中、ドア越し):


「……おいエド」


一拍。


「……風邪引くぞ、バカ」


「……さっさとどっか泊まれ」


「……俺はもう寝るわ」


■(追記)


「やれやれw」


ジョージは、ドア越しに投げられたその乱暴な気遣いに、


この世のすべてを手に入れたような顔で頷いたエドワードを見逃さなかった。


「ハミルトン様」


「どれだけ“それから”を理由づけしても」


一拍。


「結局、君を一番生かしているのは――」


「彼の、その安っぽい一言なんだよねw」


ここまで読んでいただきありがとうございます。


悠馬君の父、佐伯拓海と、ノアの父、エドワード・ハミルトンのお話です。


いいねや感想など、いつも励みになっています。

この話もゆるく続いていく予定なので、

また気が向いたときに覗いていただけたら嬉しいです。

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