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第三百二十四話 「祝祭とは、離れているものを際立たせる装置である」という話

拓海はエドワードがいなくても平気だよねw

十二月。ハミルトン邸。


広大なホールには、祝祭に相応しい光と音が満ちていた。

磨き上げられた床。揺れるシャンデリア。洗練された笑顔。


エドワードは、その中心に立っていた。


完璧な姿勢。

完璧な応対。

完璧な会話。


何一つ問題はない。


だが。


「……妙だな」


ふと、呟く。


周囲は賑やかなはずだった。

音も、人も、十分すぎるほどにある。


それなのに。


「……静かすぎる」


理由は分からない。

ただ、何かが欠けている。


「ハミルトン様」


背後から、軽い声。


「サエキ、今日サウス・ケンジントンにいたよ」


一瞬。


空気が止まる。


「……どこだと?」


「外交官の集まり。サエキの義兄上主催のやつ」


ジョージは肩をすくめる。


「似合ってたよ、あいつなりに。育ちの良さが、

あの隠しきれない毒気を、ちょうどいい具合に中和してた」


沈黙。


「……あいつが?」


視界の奥で、何かが引っかかる。


あの雑で、適当で、面倒くさがりの男が。

ああいう場所に立つ姿が、うまく結びつかない。


……いや。


違う。


「……私の知らない場所で」


小さく、噛み締める。


「……私の知らない顔をしているのか」


胸の奥に、言葉にならない違和感が広がる。

それが何かは分からない。


ただ。


”気に入らない”。


その時。


ポケットの中で、スマホが震えた。


取り出す。


表示された一行。


『……死ぬほど疲れた。……バカばっかだってw』


数秒。


ただ、それを見つめる。

先ほどまで頭にあった光景が、ふっと崩れる。


外交の場。

知らない顔。

遠い場所。


全部、どうでもよくなる。


「……そうか」


小さく、息を吐く。


……いつもの、あいつだ。


■ジョージの機密ログ(十二月:距離の測定)


十二月。ハミルトン邸のテラス。


僕は、ハミルトン様が“二つのサエキ”を並べて理解しようとしているのを見たよ。


知らない場所で、大人の顔をするサエキ。

そして、いつも通り「バカ」と言うサエキ。


どちらも本物だ。


ハミルトン様。


君は今、初めて知った。

彼には、君の外側で回っている世界がある。


だが同時に。

彼はどこにいても、結局は彼のままだ。


祝祭とは残酷だ。


距離を作り、

そして、その距離の正体を暴く。


■ジョージ幕間(観測ログ:78-UK・安心という名の迷宮編)


エドワード(主演・安堵と執着の支配者):


「……タクミは、やはりタクミだった」


低く、言い切る。


「あのような場は、彼にとってはただの労働に過ぎん」


一拍。


「彼の本質は、私の隣にある」


ジョージ(観察員):


「その考え、甘いよ(笑)」


一枚の写真を差し出す。


外交の場で、隙のない笑顔を見せるサエキ。


「安心してる顔してるけどさ」


肩をすくめる。


「それ、解決じゃない」


一拍。


「ただ、“両方ある”って知っただけだ」


「君の知らない彼は、これからも増え続ける」


拓海(寮へ向かうタクシーの中):


「……あー、……肩凝った」


小さく息を吐く。


「……エドの野郎、連絡返すんじゃなかったな」


一瞬だけ、口角が上がる。


「……調子乗るだろ、あいつ」


(追記)


「あーあwwww」


ジョージは、スマホを握りしめたまま、ほんのわずかに表情を緩めたエドワードを見逃さなかった。


「ハミルトン様」


「君がどれだけ彼を独占しているつもりでも」


一拍。


「彼はいつだって、君の想像の外側にいる」


「―それでも手を離さないなら」


「まあ、悪くない関係かもね(笑)」

ここまで読んでいただきありがとうございます。


悠馬君の父、佐伯拓海と、ノアの父、エドワード・ハミルトンのお話です。


いいねや感想など、いつも励みになっています。

この話もゆるく続いていく予定なので、

また気が向いたときに覗いていただけたら嬉しいです。

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