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第三百十五話 「課題とは、才能より段取りを試すものである」という話

テストが得意な人っているよね

十月(図書館・段取りと芸術点)

大学図書館。

最初の大きな課題を前に、二人のやり方は見事なまでに割れていた。


エドワードは完璧主義だ。


注釈の隅まで読み込み、参考文献を増やし続け、序論の一文に三十分悩む。

提出物には点数以上に、美しさと格を求める。


結果として、筆は遅い。


対する拓海は現場型だった。


設問の意図を一瞬で確認し、必要文字数を把握する。

点になる箇所から埋め、不要なこだわりは切り捨てる。


八割完成した時点で、迷わず提出する。


結果、誰よりも早い。


深夜の図書館。

静まり返った空間に、拓海が椅子を引く音だけが響いた。


「じゃ、お先」


「待てタクミ!」


エドワードが顔を上げる。


「私はまだ序論の構成を練っている最中だぞ!」


「知るか。締切、明日だろ」


「まだ時間はある!」


「その台詞、死ぬやつだぞ」


少し離れた席で、ジョージが持ち込み禁止のポテトを隠しながら囁いた。


「ハミルトン様は百点を取りに行く」


「サエキは八十点を最速で取りに行く」


「試験社会では、後者が勝つことも多いんだよ」


拓海は浪人時代に、締切への恐怖も、徹夜の配分も、

集中力の使い方も嫌というほど叩き込まれていた。


大学一年の課題程度では、もう慌てない。


「私の方が知識量は上だ!」


エドワードは机を叩いた。


「資料の数も! 考察の深さも! 私の方が上だ!」


拓海は荷物を肩に担いだまま振り返る。


「でも、お前まだ出してねぇじゃん」


一拍置く。


「……出さなきゃ点数ゼロだ。バーカ」


エドワードは絶句した。


その夜、提出三分前まで脚注を整え、提出一分前に

サーバーの重さへ泣きそうになりながら送信ボタンを連打する羽目になった。


知識の秀才。

現場の勝負師。


二人の差が、はっきり出た夜だった。


■ジョージの機密ログ(十月:締切の魔術師)


十月。歴史ある図書館の回廊。

僕は、サエキが合理性だけで、ハミルトン様の完璧主義を粉砕していくのを見たよ。


サエキ。


君のあの割り切り方は、戦場を知る人間のそれだ。

理想に溺れる相手の横を、最短距離で駆け抜ける。

浪人時代の暗い日々は、君に“何を捨てるべきか”を教えたんだね。


ハミルトン様。


君の論文はたしかに美しい。

でも大学は、君の個展会場じゃないんだ。

君が芸術を仕上げている間に、サエキはもう寮で寝ているよ。


■ジョージ幕間(観測ログ:69-UK・効率の勝利編)


十月。深夜の学生街カフェ。


エドワード(主演・完璧主義の被害者):


「納得がいかん!」


コーヒーを握りしめ、目を血走らせる。


「教授は私の論文を“独創的だ”と褒めた! なのに点数はタクミと同じだったぞ!」


「私の芸術が、あの最短距離作文と同格だというのか!」


ジョージ:


「ハミルトン様」


「それ、大学ではよくあることだよ(笑)」


エドワード:


「次は負けん!」


「タクミが八割で出すなら、私は九割を倍の速度で仕上げる!」


ジョージ:


「一番サエキのペースに飲まれてるね」


拓海(翌朝の講義室):


「……ふわぁ」


欠伸をひとつして席に座る。


「おい、エド。クマすげぇぞ」


教科書を開く。


「段取り悪ぃんだよ、バカ」


(追記)


提出期限一分前。


半泣きでマウスを連打していたエドワードの姿を、ジョージはしっかり撮っていた。


ハミルトン様。

君がどれだけ彼を自分の高みへ引き上げたくても。


彼を一番強くしているのは―

“最低限で最高の結果を出す”という、泥臭い生存技術なんだよ。バカ(笑)

ここまで読んでいただきありがとうございます。


悠馬君の父、佐伯拓海と、ノアの父、エドワード・ハミルトンのお話です。


いいねや感想など、いつも励みになっています。

この話もゆるく続いていく予定なので、

また気が向いたときに覗いていただけたら嬉しいです。

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