表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
357/374

第三百十四話 「待たされた者ほど、現実を疑うものである」という話

やっとキャンパス編が開始です(`・ω・´)

九月(再会・存在の証明)

講義開始前夜。


ロンドン・ハミルトン家タウンハウスの書斎では、

エドワードがジョージの肩を掴み、激しく揺さぶっていた。


「ジョージ! 答えろ!」


「タクミは本当に実在したのか!?

私が作り出した、都合の良い幻影ではなかったのか!?」


「実在してるよ」


ジョージは死んだ魚のような目で答えた。


「君が揺らしすぎて、僕の首が取れそうなだけで」


机の上には、エドワードのスマホ。


送信履歴、八十件超。


いつ来る

生きているか

寮はどこだ

声だけでも聞かせろ

今、何を食べている?


それに対する拓海からの返信は、たった四つだった。


そのうちな

忙しい

ねむい

バカ


エドワードは天を仰いだ。


「やはり夢かもしれん……」


講義当日

石造りの講義棟。朝。


エドワードは最前列中央に座っていた。


背筋は完璧。

姿勢も完璧。

服装も完璧。


ただし、瞳だけが死んでいた。


教授が来る直前。

静まり返った教室の後方から、気の抜けた声が落ちる。


「いよう」


エドワードの全身が止まった。


ゆっくりと。

壊れかけた機械のように首だけが回る。


そこに、拓海がいた。


少し眠そうに目をこすり、カジュアルな崩れた服装で、鞄を雑に机へ置く。


何事もなかったような顔で、エドワードの真後ろの席へ座った。


数秒。

教室の時間だけが止まる。


「……タクミ?」


エドワードの声は、珍しく震えていた。


「本物の……タクミなのか?」


拓海は鼻で笑った。


「なんだその顔は、バーカ」


それから椅子を引き寄せ、机に肘をつく。


「早く前向け。教授来るぞ」


二年の空白。

数週間の潜伏。

八十件の未練がましいメッセージ。


そのすべてが、たった一言で日常へ戻された。


■ジョージの機密ログ(九月:幻影の帰還)


九月。石造りの講義室。


僕は、ハミルトン様が“既読無視され続けた果てに存在論へ到達した男”から、

ようやく人間へ戻る瞬間を見たよ。


ハミルトン様。

君はサエキを神格化しすぎたんだ。

だから、目の前に現れた彼が、眠そうな顔で、

適当な服装で、第一声に「バカ」と言った時。

ようやく”安心”したんだろう?


それこそ、彼が本物だって証拠だからね。


サエキ。

君の勝ちだよ。

数週間姿を見せなかっただけで、この魔王は情緒を半壊させた。

君は本当に、人の扱いが上手い。


■ジョージ幕間(観測ログ:66-UK・魔王の復活編)


講義終了後。石畳の回廊。


エドワード(主演・蘇生した王):


「ジョージ! 見たか!」


「タクミは実在した!

しかも私を“バカ”と呼んだのだ!」


「……ああ、あの響き。あの不遜さ。間違いない。私のタクミだ!」


今にもスキップしそうな勢いだった。


「明日の講義は二時間前から並ぶぞ!」


「いや、教室ごと買い取り、彼の席に最高級クッションを――」


ジョージ:


「また逃げられるよ(笑)」


拓海(学食テラス席):


「……あいつの顔、傑作だったな」


紙皿の料理を見下ろし、眉をひそめる。


「……で、これ食い物か? 英国、やっぱ信用ならねぇな」


それでも口元は、少しだけ笑っていた。


(追記)


講義中、エドワードは五回振り返った。

そのたびに、拓海から小声で言われた。

「前向け、バカ」

ジョージは全部撮った。

ここまで読んでいただきありがとうございます。


悠馬君の父、佐伯拓海と、ノアの父、エドワード・ハミルトンのお話です。


いいねや感想など、いつも励みになっています。

この話もゆるく続いていく予定なので、

また気が向いたときに覗いていただけたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ