幕間 「観測者同士が情報交換すると、本人だけ知らない真実が増える」という話
また幕間です(´・ω:;.:...
十月。夜。
予備校近くの自販機前。
自習室には、まだ拓海がいる。
相変わらず、正面から泥臭く、
一問ずつ問題と殴り合っている時間だった。
その外で、佐藤とジョージが並んで缶コーヒーを開けた。
「君、何者?」
佐藤が横目で言う。
「ていうか、いつも拓海の近くにいるよね」
ジョージは肩をすくめた。
「友人。特派員。保護者代理かな(笑)」
「全部怪しい。まともな説明になってないよ」
佐藤は缶を持ち直し、本題に入った。
「拓海、最近かなり無理してる」
「A判定が出ても、あいつの顔は崖っぷちのそれだ」
「知ってるよ」
ジョージの声から笑みが消える。
「睡眠時間も削ってるし、食事も適当になってる」
「止めないのか」
佐藤は眉を寄せた。
「このままじゃ、本番前にパンクする」
ジョージは夜空を見上げた。
「止まる男なら、ここまで来てないよ」
静かな声だった。
「あいつは根性だけはある」
「でも、自分の守り方が致命的に雑なんだ」
佐藤は鼻で笑った。
「まったくだ」
「あんな非効率な生き方、見てるこっちが疲れるよ」
拓海が知らない場所で。
静かな共謀が成立した瞬間だった。
■佐藤の独白(十月:自販機の前)
十月。深夜の空気。
ジョージとかいう男は、底が知れない。
でも、サエキを見る目だけは、僕と同じだった。
放っておけない。
たったそれだけの、面倒な色だ。
サエキ。
君がどれだけ一人で戦っているつもりでも。
君の知らないところで、僕たちは君の着地点を、勝手に作ろうとしているんだよ。
■ジョージの機密ログ(十月:観測者たちの密談)
十月。千代田区、自販機横。
僕は、佐藤君が冷徹な仮面の奥に隠していた、サエキへの深い友情を見たよ。
佐藤君。
君はサエキの雑さを嘆いているけれど。
自分の受験があるのに、彼の体調を気にして時間を割いている。
君も十分、不合理な男だ。
ハミルトン様。
君が英国で「私のものだ」と主張している間に。
サエキは日本で、君も知らない本当の戦友を手に入れているよ。
■ジョージ幕間(観測ログ:36-TOKYO・裏・保護者会編)
エドワード(英国・残留組):
「……佐藤と密会だと?」
「情報漏洩は許さん」
「佐藤にハミルトン家秘伝の“口が軽くなる薬”を盛れ」
嫉妬で判断力が死んでいた。
ジョージ(日本・特派員):
「薬は盛らないよ(笑)」
「佐藤君、サエキのこと“雑な男だ”って呆れてたよ」
「サエキ。君は本当に、頭のいい男たちを世話焼きに変えてしまうんだね」
拓海(自習室):
「……なんか外うるせぇな」
「佐藤の野郎、いつまで休憩してんだよ……バカ」
何も知らず、またペンを走らせる。
(追記)
「あーあwwww」
ジョージは、佐藤から渡された栄養剤を見た。
「……あいつ、飲みすぎると胃を壊すから、一本だけにしておけ」
ぶっきらぼうな声だった。
ジョージは笑った。
「ハミルトン様。君がどれだけ彼を独占したくても。
彼を一番支えているのは、君の権力じゃなく―
隣で呆れながら背中を支える、実在する友人の情なんだよね」
ここまで読んでいただきありがとうございます。
悠馬君の父、佐伯拓海と、ノアの父、エドワード・ハミルトンのお話です。
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この話もゆるく続いていく予定なので、
また気が向いたときに覗いていただけたら嬉しいです。




