幕間 「特派員とは、海を越えたバカの情熱を、最前線で浴びる仕事である」という話
幕間2つ目 なんかもう全部本編でいいんじゃないかって気もする
九月。日本、予備校近くのカフェ。
ジョージは、英国から届いた最新の指令書と、
添付された膨大な資料データを眺め、深く溜息をついた。
エドワードは今、最終学年。
次期当主として重圧の真っただ中にいるはずだった。
それなのに、日本への干渉だけは一切衰えていない。
ジョージの端末には、執拗なメッセージが並んでいた。
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タクミの模試結果を送れ。
偏差値だけでなく、筆跡から集中力の推移も分析しろ。
佐藤との接触時間が昨日より三十分増えている。
理由を至急報告せよ。
最近の歩幅も気になる。計測しろ。
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ジョージは眉間を押さえた。
「……ハミルトン様」
「最終学年の責任、どうしたんだい(笑)」
「……まあ、いいけどさ」
そう呟きながら席を立つ。
ちょうど、自習室から拓海が出てきた。
目の下には隈。
肩は落ち、足取りも重い。
ボロボロである。
ジョージは何も言わず、冷たい缶コーヒーを差し出した。
拓海は受け取りながら顔をしかめる。
「……お前、まだ日本にいんのかよ」
「特派員だからね(笑)」
「意味わかんねぇよ」
■ジョージの機密ログ(九月:日本の現場より)
九月。千代田区、予備校前。
僕は、サエキがA判定という結果を手にしながら、
ただ「眠い」と呟くのを見守っているよ。
ハミルトン様。
君は英国で“あと一年”と小躍りしているけれど。
現場のサエキは、君が想像しているよりずっと、
今、この一日を生き抜くことで精一杯だ。
サエキ。
君の隣にいる佐藤君が、最近ずっと僕を見ている。
たぶん、
”所属不明の外国人”
として冷静にプロファイリングしているね(笑)。
■ジョージ幕間(観測ログ:34-TOKYO・日本の空気編)
エドワード(英国・残留組):
タクミが剣道をしているそうだな。
胴着の洗濯には、ハミルトン家指定の洗剤を使わせろ。
もはや生活指導である。
ジョージ(日本・特派員):
「無理言わないでよ(笑)」
「サエキ、普通に家の洗剤で洗ってるよ」
「佐藤君にも、“君の友人、家事代行でも始めたいの?”って呆れられてたよ」
拓海(日本・自習室):
「ジョージ。お前、いい加減帰れよ……バカ……」
監視の目に慣れながら、赤本を解き続ける。
(追記)
「やれやれ、だなぁ」
ジョージは、日本で買った合格祈願のお守りを、
「エドには内緒だぞ」
と小声で言いながら鞄につけるサエキを激写した。
「ハミルトン様。君がどれだけ権力で彼を導きたくても。
彼が今、一番大切にしているのは―
君の高級洗剤じゃなく、
日本の神社で買った、小さな自分の意志の象徴なんだよねぇ(笑)」
ここまで読んでいただきありがとうございます。
悠馬君の父、佐伯拓海と、ノアの父、エドワード・ハミルトンのお話です。
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この話もゆるく続いていく予定なので、
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