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幕間 「夏期講習最終日とは、最も見たくないものが届く日に限って設定されている」という話

まぁうん。呪われてると言えなくもないよね

八月。夏期講習最終日。

自習室の閉館直前。


疲れ切った拓海のスマホが、不穏な通知音を鳴らした。


件名:七夕記念・超大作動画(完全版)


拓海。


「……は?」


隣で佐藤が画面を覗き込む。


「何それ。再生時間、五十八分三十二秒?」


一拍。


「映画でも撮ったの?」


「……殺す」


拓海は虚ろな目で呟いた。


「あの野郎、マジで殺す」


【動画冒頭:災厄の開幕】


再生ボタンを押した瞬間。

画面いっぱいに、無駄に高画質な星空。


ゆっくり流れるピアノ。

そして、暗転。


次の瞬間――エドワードのドアップ。


低音ボイスが響く。


『タクミ。七夕とは――』


拓海、一秒で停止。


「閉じろ」


「まだ何も始まってないよ」


「もう終わってる」


【動画視聴後:沈黙の自習室】


数分後。

倍速再生と早送りを駆使しながらも、二人は一部始終を目撃した。


エドワード横顔三連発

校舎の塔を背景に遠くを見る姿

“うめぇけど、パサパサするな”REMIX

星座図に書き込まれた“TAKUMI”

最後に謎の白薔薇演出


佐藤は無言で眼鏡を押し上げた。


「……拓海」


「なんだよ」


「お前、何かに呪われてないか?」


沈黙。


「これはもう、デジタルな呪物だ」


拓海はスマホを握りしめた。


「……ジョージ」


返信画面を開く。


「……お前も共犯だろ、このバカ!」


即返信。


届いた?(笑)

編集、三徹したよ!


「死ね!!」


【佐藤の警告】


佐藤はスマホを机に置き、

かつてないほど真剣な顔で拓海を見た。


「……お前、イギリス行くって言ってたけど」


「……あ?」


「大丈夫か?」


一拍。


「後悔するんじゃないか?」


拓海は机に額をぶつけた。


「……もうしてるわ」


「今、三億回くらいしてるわ、バカ……」


佐藤は静かに頷いた。


「……さすがにそれは、やめとけ」


その声には、初めて友人を案じる温度があった。


■ジョージの機密ログ(八月:呪物の配送完了)


八月。自習室閉館間際。

僕は、サエキが動画を見た瞬間、魂が一歩外へ出るのを見たよ。


サエキ。


君の隣にいる佐藤君が、初めて“予想外の恐怖”を顔に出していたね。

ハミルトン様の愛は、日本の秀才の論理すら、一撃で破壊する兵器なんだ。


ちなみに低音ボイスについては、


「眠気を誘う特殊な周波数が出ている」


と佐藤君が科学的に分析していたよ(笑)。


■ジョージ幕間(観測ログ:30-TOKYO・佐藤の警告編)


エドワード(英国・残留組):


「よし。タクミは感動のあまり、言葉を失ったようだな」


完璧な勘違いである。


ジョージ(現地特派員):


「いやー、ハミルトン様。佐藤君が本気で渡英を止めてたよ(笑)」


「サエキ、“戻りたくねぇ……”って泣きそうな顔で机握ってた」


拓海(帰宅路):


「……あいつ……来年絶対殴る」


「……三倍の力で殴る……」


屈辱に震えながら、夜道を歩く。


(追記)


「あーあwwww」


ジョージは、五十八分の動画を、


「……消すと後が怖い」


という理由で、必死にSDカードへバックアップするサエキを激写した。


「ハミルトン様。君がどれだけ彼を感動させたくても。

彼が今一番感じているのは、君への愛じゃなく―

”関わってはいけない人間と契約してしまった”

という、手遅れな絶望なんだよね(笑)」

ここまで読んでいただきありがとうございます。


悠馬君の父、佐伯拓海と、ノアの父、エドワード・ハミルトンのお話です。


いいねや感想など、いつも励みになっています。

この話もゆるく続いていく予定なので、

また気が向いたときに覗いていただけたら嬉しいです。

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