表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
307/369

第二百七十三話 「生存確認とは、魔王が主演する短編映画になるものである」という話

ちょっと見てみたい気もする

深夜。千代田区の自室。

六法全書に顔を近づけたまま、拓海の意識は限界へ近づいていた。


その時。


スマホが震える。


届いたのは、一件の動画ファイル。


送信者―英国の魔王。


拓海は嫌な予感しかしないまま、再生を押した。


【動画タイトル:緊急声明】


重厚なオーケストラが流れ出す。


暗い部屋。

一脚の椅子。

中央に落ちるスポットライト。


足を組み、指を組み、その上へ顎を乗せたエドワードが、三秒間、無言でレンズを見つめていた。


「……なんだこれ」


拓海が呟く。


ようやくエドワードが口を開く。


「タクミ。私を誰だか覚えているか」


無駄に低い声だった。


続けて、意味のないスローモーション。


「最近、お前の返信は粗雑である」


ズーム。


「これは由々しき事態だ」


さらにズーム。


「私の名はエドワード・ハミルトン」


横顔カット。


「三年前、お前に日本語を教わった男だ」


謎の逆光演出。


「お前は最近、私を世界史上の人物として扱った」


一拍。


「実に遺憾である」


画面暗転。


テロップ。


― END OF MESSAGE ―


拓海は真顔で、返信を一行だけ打った。


『で、誰だっけ?』


数秒後。


通知音。


新着動画。


タイトルは、


『今から覚え直させる』


「勉強の邪魔なんだよ、バカ……」


拓海はそう呟きながら、なぜか削除せず保存した。


手紙は人間が書く。


エドワードは、PVを送りつける。


■ジョージの機密ログ(八月:英国の映像産業)


八月。深夜。


僕は見たよ。

ハミルトン様が総力を挙げて作った映像作品が、サエキに三秒で茶化される瞬間を。


サエキ。君の「誰だっけ」は、ハミルトン様の自尊心へ核直撃だった。


彼は今、第二弾制作に入っている。


ちなみに編集したのは僕だよ(笑)

江の島で遊びすぎた件の埋め合わせさ。


■ジョージ幕間(観測ログ:10-UK・編集地獄編)


エドワード(主演・監督):

自分のアップを0.1秒単位で確認。

「この角度が最も恋しさを伝える」と主張。


ジョージ(編集・謝罪担当):

「いやー、本気すぎるね(笑)」


拓海(被害者):

「容量の無駄なんだよ……」と呟きながら、お気に入り保存済み。


(追記)


ジョージの元へ、新たな企画書が届いた。


次回作

『枕草子 第一段を私が暗誦する三時間特別版』


ジョージは頭を抱えた。


「ハミルトン様。君がどれだけ盛っても――」


シャッター音。


「タクミが覚えてるのは、PVの君じゃない」


少し笑って続ける。


「三年前、下手くそな日本語で『ヨロシク』って言った、あの日の君だよ(笑)」

ここまで読んでいただきありがとうございます。


悠馬君の父、佐伯拓海と、ノアの父、エドワード・ハミルトンのお話です。


いいねや感想など、いつも励みになっています。

この話もゆるく続いていく予定なので、

また気が向いたときに覗いていただけたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ