表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
306/366

第二百七十二話 「夏休みとは、一人だけ正しく満喫している男が現れる季節である」という話

三者三様?

七月下旬。

日本の夏は、三人の格差を容赦なく照らし出していた。


【AM 6:00:千代田区・道場】


「面!!」


「ぐぇっ!!」


竹刀の音と共に、拓海の魂が抜けていく。


「遅い!! 腰が死んでいる!!」


「朝六時に人へ求める熱量じゃねぇんだよ、ジジイ……」


汗と共に、意識が飛んだ。


【PM 1:00:海外大対策塾】


「Why Oxford, Mr. Saeki?」


拓海は白い天井を見た。


「……なんでだっけ」


講師が眉を上げる。


「Excuse me?」


「理由……あったっけ……」


努力の過剰摂取により、拓海の脳内からは、エドワードの存在すら押し出され始めていた。


【同時刻:英国・ハミルトン本邸】


眩いシャンデリアの下。


完璧な夜会服に身を包んだエドワードが、令嬢の手を取る。


「Edward, shall we dance?」


「……喜んで」


無欠の微笑。

非の打ち所のない所作。


だが胸中は荒れていた。


(タクミは何をしている。ジョージの報告も三日前で止まっている)


(私は……忘れられたのか?)


【同時刻:神奈川・江の島】


「いやー、日本の夏って最高だね(笑)」


ジョージはサングラス姿で笑っていた。


「海! 花火! 女子大生!」


ライカ片手に、水着美女と記念撮影。


エドワードの


『連絡を減らせ』


という命令を、


『自由時間の付与』


と解釈した男だけが、正しく夏を満喫していた。


【PM 8:00:千代田区・自習室】


「基本的人権……」


拓海の目が死んでいる。


「俺……何に追われてんだ……?」


もはや主人公なのに、目的を見失った迷子だった。


■深夜:生存確認


英国の夜。


三日間の沈黙に耐えきれず、エドワードは端末を開いた。

震える指で送信。


『生きているか』


十二時間後。


予備校の机へ突っ伏していた拓海から返信が来る。


『今起きた。で、お前誰だっけ』


次の瞬間。


英国本邸にて、最高級ティーカップが粉々に砕け散った。


■ジョージの機密ログ(七月末:光と影)


七月。それぞれの夏。

僕は見たよ。


サエキが「ハミルトン」という単語を、ただの英単語として処理し始めたのを。

努力しすぎると、人は初心を失うんだね。


ちなみに江の島で撮った僕のハーレム写真をハミルトン様へ送ったら、国際問題になると思う(笑)


■ジョージ幕間(観測ログ:09-TOKYO・江の島パラダイス編)


エドワード(英国・情緒崩壊組):

「お前誰だっけ」により精神損傷。日本の予備校買収を検討中。


ジョージ(夏満喫組):

「いやー、日本の女の子ってフレンドリーだね(笑)」


拓海(記憶混濁組):

「エドワード……ああ、世界史の王様か……」と重度の勉強ハイ。


(追記)


浜辺で女子大生に囲まれたジョージは、ライカを構えて笑った。


「ハミルトン様。君がどれだけ王を演じても――」


シャッター音。


「今いちばん寂しいの、君だよ(笑)」

ここまで読んでいただきありがとうございます。


悠馬君の父、佐伯拓海と、ノアの父、エドワード・ハミルトンのお話です。


いいねや感想など、いつも励みになっています。

この話もゆるく続いていく予定なので、

また気が向いたときに覗いていただけたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ