表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
276/383

第二百四十五話 「情報収集とは、国家の安全を守る行為ではなく、嫉妬した男が無関係の受験生一名を調べ上げる私的暴走である」という話

毎回変な方向へ話を持っているエドワード。たまには僕の思う方向へ話を進めてほしいんだが?

三月。放課後。図書室の最奥。

そこは、もはや学習の場ではなかった。


机いっぱいに広げられた日本地図。

時差表。

鉄道路線図。

そして、関東圏高校偏差値一覧。

さらに壁には、赤い糸で結ばれたメモ。


菜摘

高坂直哉

駅まで送る

危険


「お前何してんだバカ!!」

拓海の叫びが静寂を裂いた。


エドワードは椅子へ深く座り、指先を組んだまま顔を上げる。


「来たか、タクミ」


「来たかじゃねぇよ。なんで一般受験生一名に包囲網張ってんだよ」


「一名ではない」


「は?」


「お前の幼馴染へ接近した一名だ」


「言い方が怖ぇよ!!」


拓海が机を覗き込む。

ノートには細かな文字で分析が並んでいた。



高坂直哉

推定起床 6:40

通学経路A・B・C

塾終了 21:10前後

数学得意

駅まで送迎能力あり


「送迎能力ってなんだよ」


「実績だ」


「評価項目に入れんな」


そこへジョージが現れた。

腕には分厚い紙束。表紙には雑にマジックで、


極秘


と書かれている。


「残念ながら顔写真はまだないね(笑)」


「お前も乗るな」


「でもハミルトン様の伝手、少し使わせてもらったよ」


「職権乱用だろバカ!!」


少し離れた位置で下級生たちがざわつく。


「ハミルトン先輩、極東で戦争始めたらしい」

「相手、一般男子高校生らしいぞ」

「勝てる気しねぇ……」

「どっちが?」

「高校生」


その頃、日本。

塾帰りの高坂直哉はコンビニ前でくしゃみをした。


「ハクション!」


友人が振り向く。


「大丈夫か?」

「なんか急に寒気した……」

「風邪じゃね?」

「いや……もっとこう……遠距離から狙われてる感じ」


平和な高校生だった。


英国へ戻る。

エドワードは書類をめくっていた。


一枚。

二枚。

三枚。

沈黙。


「……なんだよ」


「隙がない」


「何が」


「成績優秀。礼儀正しい。サッカー部主将経験あり。教師評価高。

近所の老婦人の荷物を運搬した記録あり」


「なんでそこまで出てくんだよ!!」


「しかも菜摘への下心、現時点で確認できず」


「普通に良い奴じゃねぇか」


「不気味だ」


「お前が一番不気味だよ!!」


エドワードは苦渋の顔で資料を握りしめた。


「認めん」


「何を」


「ここまで清潔感のある人類が存在することを」


「失礼すぎんだろ!!」


「擬態だ」


「違う」


「善人を装った策略家だ」


「違うって言ってんだろ!!」


拓海は資料をひったくった。

そこには赤字で大きく書かれていた。


要注意人物

高坂直哉


「やめろバカ!!」


「なぜだ」


「俺が恥ずかしいんだよ!!」


「安心しろ。お前の名は一切出していない」


「もっと怖ぇよ!!」


ジョージが肩を震わせる。


「いやー面白いね(笑)」


「どこがだよ」


「ハミルトン様、高坂君の偏差値見て、

“……私の方が五ポイント高いな”って小声で確認してたよ」


「うるさい」


「張り合うなよ!!」


エドワードは立ち上がり、窓の外を見た。


「タクミ」


「なんだよ」


「お前の日本での二年間」


嫌な予感しかしなかった。


「私が高坂直哉として擬態し、同行してやる」


「狂ってんのかバカ!!」


「名字だけ借りる」


「借りるな!!」


「顔は努力する」


「無理だろ!!」


拓海は頭を抱えた。


「高坂に負けるな」


「高坂に失礼なんだよバカ!!」


■ジョージの機密ログ(三月:善良なる脅威)

三月。図書室最奥。

僕は見ていたよ。

ハミルトン様が、“普通に良い奴”という最も対処しづらい敵へ、完全に詰まされる瞬間を。


サエキ。

君の恋敵(仮)は、君と真逆だ。

真面目で、礼儀正しくて、将来も堅そうで、送迎までできる。

でも安心して。

君には“面倒見たくなる異常な魅力”があるから。

……たぶんね。


■ジョージ幕間(観測ログ:00-BAKA 極東調査編)

三月。廊下。


エドワード:

高坂君の欠点が見つからず混乱中。


拓海:

なぜ自分の周囲の人間関係が国際案件になるのか理解不能。


高坂直哉:

何も知らず受験勉強中。かわいそう。


ジョージ:

「青春って、理不尽だね(笑)」


(追記)

ジョージは、エドワードが真顔で

「高坂直哉……覚えたぞ」

と呟きながら、資料へ花丸を付けている瞬間を激写した。

「ハミルトン様。君が一番焦ってるのは――」

「高坂君じゃなく、サエキがちゃんと誰かを失いたくないと思い始めたことなんだよ(笑)」


ここまで読んでいただきありがとうございます。


悠馬君の父、佐伯拓海と、ノアの父、エドワード・ハミルトンのお話です。


いいねや感想など、いつも励みになっています。

この話もゆるく続いていく予定なので、

また気が向いたときに覗いていただけたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ