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第二百三十話 「初詣とは、新年の幸福を祈る慎ましい儀礼ではなく、異国の理屈屋が神意を独占契約へ変換するために、堂々と宗教へ喧嘩を売る危険行為である」という話

学校の備品?でそれはダメなのでは・・・

クレストフィールド学院

一月三日、早朝。

まだ薄暗い冬空の下、パブリックスクールの中庭には、一夜にして異様な建造物が出現していた。


ラグビーのゴールポストに赤布を巻きつけただけの鳥居。

近くで見るとかなり曲がっている。


その下には、白布をかけただけの祭壇。

その前には、最新式のセンサー付き賽銭箱(という名の金庫)。

さらに横には、おみくじ受付・進路相談所兼用窓口 の札まで立っていた。


拓海は立ち尽くした。


「……おい、エドワード」


「なんだ」


「ついに一線越えたな、お前」


「安心しろ」


白いカーテンを強引に縫い合わせた神主装束をまとい、エドワード・ハミルトンは

翡翠色の瞳を冷たく光らせた。


「これは神への挑戦ではない」


一拍置く。


「ハミルトン家の権限による、神域の再構築だ」


「もっと悪いわ、バカ!!」


拓海の叫びが冬空へ消える。


エドワードは祭壇の奥から一枚の写真を取り出した。


そこには、菜摘が巫女装束で微笑む姿が映っている。


去年送られてきた動画の切り出しである。


「私は見た」


「返せ、それ勝手に印刷しただろ」


「見たのだ、タクミ」


エドワードは写真を掲げる。


「この“シャーマン菜摘”が、鈴を鳴らし、舞い、笑みを浮かべ、

お前の精神を日本へ誘導しようとしていた様を」


「ただの巫女バイトだよ!!」


「黙れ」


「お前が黙れ!」


エドワードはさらに机の上の破魔矢を指差した。


「そして、あの女の実家から送り込まれたこの呪物」


「縁起物な?」


「私の科学的防衛線を突破し、お前の部屋に“郷愁”という名のウイルスを撒いた」


「だから!言い方ぁ!!」


拓海は頭を抱えた。


エドワードは静かに歩み寄る。


「いいか、タクミ」


「嫌な予感しかしねぇ」


「東洋の神々がお前を日本へ引き戻そうとするなら――」


胸に手を当てる。


「私はここで、神を買収してでも、お前の進路を英国へ固定する」


「神様逃げてぇぇぇ!!」


エドワードは木箱を開いた。


「引け」


「何を」


「おみくじだ」


拓海は一本引く。


紙には大きく金文字でこうあった。


ハミルトン特級大吉


「一種類しかねぇだろこれ!」


「当然だ。お前の未来に凶など存在しない」


「怖ぇんだよその思想が!」


「なお進学運は極めて良好」


「どこへ?」


「私の近くへ」


「帰れ、神主!!」


続いて絵馬が差し出された。


しかも分厚い。重い。角が痛い。


「なんで鈍器なんだよ」


「上質な木材を使用した」


拓海はため息をつき、殴り書きした。


卒業まで、これ以上バカなことが起きず、平和でありますように。


エドワードはそれを見たあと、自分の絵馬をその隣に打ちつけた。


金具付きである。


卒業後も、拓海の全時間はハミルトン家の管理下に置かれるべきである。


「なんで願い事じゃなくて契約条項なんだよ!!」


「神も法も、本質は近い」


「絶対違ぇわ!!」


エドワードは最後に、どこから持ち出したのか学校の鐘を見上げた。


「菜摘が鈴を鳴らすなら、私は鐘を百八回鳴らし」


腕を広げる。


「お前の耳から“たっくん”という言霊を除霊する」


「新年早々、発想が物騒なんだよ!!」


その時だった。


背中に、べたり、と何か貼られる感触。


「……ん?」


振り返ると、エドワードが満足げに頷いている。


「よし」


「何した」


「ハミルトン家紋入り護符だ」


「ガムテープじゃねぇか!!」


「これで術式は破綻した」


「背中がベタベタするだけだ、バカ!!」


拓海が怒鳴る。


エドワードはふと真顔になった。


「……タクミ」


「なんだよ」


「日本へ、行くな」


一瞬だけ、風の音だけがした。


拓海は顔をしかめる。


「急に本音混ぜんな、バカ!!」


そのまま全力のタックルが炸裂した。

偽鳥居が倒れた。


新年の神域は、三十分で陥落した。


■ジョージ幕間(観測ログ:新春・対シャーマン迎撃戦編)


『サエキ事変ノート:ハミルトン家、東洋神学と正面衝突』


一月三日。早朝。


エドワード(偽神主):

菜摘嬢を“高位召喚士”と断定。神社に対抗するため、学校敷地内に私設神域を無断建立。

もはや信仰ではなく対抗心である。


拓海:

「菜摘はただの女子高生だ!」という正論を何度も主張したが、

すべて“敵への擁護発言”として却下された。かわいそう。


ジョージ:

「いやあ、壮大だね(笑)。ハミルトン様、巫女動画をスロー再生しながら“この指の角度……サエキの深層心理へ干渉しているな”って本気で分析してたよ」


(追記)


「……あはははは!!」


ジョージは、拓海の背中へ家紋入り護符を貼りながら満足そうに頷くハミルトン様を激写した。


「ハミルトン様。君がどれだけ除霊を叫んでもね――」


「彼に一番深く呪いをかけてるのは、君自身の重たすぎる愛なんだよ、バカ(笑)」

ここまで読んでいただきありがとうございます。


悠馬君の父、佐伯拓海と、ノアの父、エドワード・ハミルトンのお話です。


いいねや感想など、いつも励みになっています。

この話もゆるく続いていく予定なので、

また気が向いたときに覗いていただけたら嬉しいです。

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