表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
257/386

第二百二十七話 「古典とは、時を超えて語り継がれる人類の宝ではなく、進路を決めない相棒(バカ)を神話級の理屈で縛り上げるための、極めて高尚な拘束具である」という話

エドワードの進路提案→なお、拒否権はない。みたいな。

一月一日、夜。

図書室の暖炉が赤く燃えている。


その前で拓海は、片靴下・片裸足という終わった格好でソファに沈み、


「……帰りてぇ……」


と魂を漏らしていた。


帰る場所は同じ寮である。


エドワードはそんな男の前に、百科事典のような厚みを持つ一冊を置いた。


ドサリ。


表紙には金文字で記されている。


ダンテ『神曲』


「タクミ」


「やだ」


「まだ何も言っていない」


「厚さで嫌だ」


エドワードは本を開いた。


「地獄の門にはこう刻まれている」


姿勢を正し、朗々と読む。


『ここに入る者は、一切の希望を捨てよ』


拓海は半目で見上げた。


「……お前の部屋の入口の話か?」


「違う」


「進路相談室か?」


「違う」


「じゃあ何だよ」


エドワードは指を差す。


「お前の現状だ」


「は?」


「進路未定。未来保留。責任先送り。卒業後白紙」


一つずつ数える。


「お前は今、地獄の前門――迷える魂の待機列にいる」


「言い方ぁ!!」


拓海がクッションを投げる。

エドワードは受け流す。


「ダンテには案内人がいた。詩人ヴェルギリウスだ」


「へぇ」


「タクミ。お前の案内人は誰だ」


「知らねぇよ」


「私だ」


「即答すんな、バカ!!」


エドワードは動じない。


「安心しろ。導線は既に確保済みだ」


「何の!?」


「大学。住居。職歴形成。家業研修。将来的幹部候補ーー」


「だから!なんで天国への道が、お前ん家の事業部直通なんだよ!!」


拓海はプロテインシェイカーを掴んだ。


「なお、ダンテは最後にベアトリーチェに導かれーー」


「嫌な予感しかしねぇ」


「お前は私のベアトリーチェだ」


「意味わかんねぇし鳥肌立ったわ!!」


シェイカーが飛ぶ。

エドワードは華麗な横移動で回避した。


「……これも試練か」


「ただの拒否反応だ、バカ!!」


暖炉の火が、年明け早々の騒音を静かに照らしていた。


■ジョージ幕間(観測ログ:新春・神曲サエキ版)


『サエキ事変ノート:天国の所在地、ハミルトン家』


エドワード:

進路未定を“魂の危機”へ拡大解釈。文学を使えば何でも正当化できると思っている節あり。


拓海:

神曲の壮大さを三秒で「お前の独占欲」に翻訳。才能。


ジョージ:

「いやあ、見事だねwww。ハミルトン様、地獄・煉獄・天国って言ってたけど、全部サエキの住所変更手続きの話なんだよ」

ここまで読んでいただきありがとうございます。


悠馬君の父、佐伯拓海と、ノアの父、エドワード・ハミルトンのお話です。


いいねや感想など、いつも励みになっています。

この話もゆるく続いていく予定なので、

また気が向いたときに覗いていただけたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ