第二十話 「好敵手(菜摘という名のライバル)」の話
幼馴染は強い
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放課後の談話室。
拓海は、手紙を広げたまま、しばらく動かなかった。
贈られて来た写真。
一人の見慣れた少女が笑っている。
「……ふぅ… やっぱ落ち着くわ」
小さく、息を吐く。
「……誰だ?」
振り返る前に気配でわかる。
いる。
エドワードが、背後に立っていた。
視線は、手元の写真。
「幼馴染」
写真を軽く持ち上げる。
「日本で、俺の帰りを待ってる奴だよ」
一拍。
「……ほう」
エドの目が細くなる。
「その個体は、私より接触時間が長いのか」
「言い方w」
肩をすくめる。
「まぁ、ガキの頃から一緒だし」
一拍。
「あいつ、料理うまいんだよなぁ」
拓海は遠い目をする。
エドワードが見たことのないような表情を浮かべて。
椅子が引かれる音。
エドワードが座る。
ノートを開く。
「タクミ」
「やめろ」
「まだ何も言っていない」
「言う前からわかるんだよ!」
ペンが構えられる。
「その『オサナナジミ』という存在」
「始まった」
「なぜお前は、今ここにいながら」
一拍。
「数千キロ先に引っ張られている」
「……思い出だよ」
「非合理だな」
即答。
「合理で生きてねぇんだよ」
沈黙。
ペンが走る。
「おいやめろ」
「分析中だ」
『オサナナジミ=時間蓄積型優位』
『料理=高威力補正』
「だからやめろって!」
エドは止まらない。
「……タクミ」
「なんだよ」
「私は今から過去に遡れるか?」
「は?無理にきまってんだろ馬鹿か」
即答。
「では」
一拍。
「今から未来で積み上げる」
「何を」
「幼馴染だ」
「意味がわからねぇよ! 幼馴染は過去から積み上げるもんだろ!」
沈黙。
エドワードが黙る。
ほんの少しだけ、眉が寄る。
「……解せんな」
「うまい料理とは……」
「そんなに強いものなのか」
拓海は少しだけ見る。
「……お前さ」
一拍。
「ジェラってんの?」
「違う」
即答。
「事実を整理しているだけだ」
「どの辺がだよ」
「最適解を探している」
「だから重いんだってばよ」
沈黙。
拓海は笑った。
少しだけ。
「……まあ」
「無理だと思うけどな」
「……そうか」
エドワードはノートを閉じる。
「だが」
一拍。
「試行は続ける」
「は?やめろ」
夕方。
光が少しだけ赤くなる。
拓海はもう一度、写真を見る。
エドワードは、見ない。
「……ヤバイな」
ぽつり。
「強敵だ」
「人の幼馴染に何言ってんだよ」
笑い声が、小さく落ちた。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
悠馬君の父、佐伯拓海と、ノアの父、エドワード・ハミルトンのお話です。
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