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第百八十七話 「光と影とは、補完し合う関係ではなく、影が光を侵食し、その輪郭を独占するための契約である」という話

光属性が拓海で、闇属性がエドワードか。

てか「ベルばら」とかどこから持ってきたのエドワードくん?

クレストフィールド学院

九月、深夜の寮。


窓から差し込む月光が、床に長い影を落としていた。

エドワードは机に置かれた一冊の古い漫画を、静かに閉じる。


『ベルサイユのばら』


トランクの上に座ったまま、拓海がそれを見た。


「……珍しいな。今度は本じゃなくて漫画かよ」


軽口。


エドワードはすぐには答えない。


視線を落としたまま、指先で表紙をなぞる。


「……興味深い関係だ」


ぽつりと呟く。


「光と影」


一拍。


「どちらが主で、どちらが従か」


拓海が肩をすくめる。


「そんなもん決まってんだろ。オスカルが光で、アンドレは支える側だ」


エドワードは、ゆっくりと顔を上げる。


「……そう見える」


一歩、踏み出す。


「だが違う」


影が、床を滑るように伸びる。


「影は、ただ従っているわけではない」


さらに一歩。


「光がどこにあろうと、必ず足元に現れる」


視線が重なる。


「光が自分の形を認識できるのは、影があるからだ」


沈黙。


そのまま、エドワードは静かに続ける。


「タクミ」


「お前は、日本で“普通”の中に戻ろうとした」


「だが――」


ほんのわずかに、声が低くなる。


「それでは輪郭が曖昧になる」


距離が、ほとんど消える。


「お前は、拡散する光だ」


一拍。


「だが、私は違う」


「私は、お前の足元に現れる影だ」


壁に手をつく。

だが、さっきほどの圧ではない。


逃げ道は、ある。


「お前がどこへ行こうと、私は消えない」


「お前が何を選ぼうと、その選択の輪郭を、私は見ている」


視線が、少しだけ柔らかくなる。


「……それが、私の役割だ」


拓海が、ふっと息を吐く。


「……それ、アンドレと全然違うだろ」


少し笑う。


「もっとまともな愛情だったぞ、あいつ」


エドワードは、わずかに目を細める。


「知っている」


即答。

だが、そのあとで小さく付け足す。


「……だが、私はああはなれない」


静かな本音。


「支えるだけでは、足りない」


一拍。


「お前がどこに立つのかを、私は知っていたい」


拓海は、その言葉を聞いて、少しだけ黙る。

それから、肩をすくめた。


「……勝手に見てろよ」


視線を合わせる。


「その代わり」


少しだけ笑う。


「影が重すぎたら、蹴っ飛ばすからな」


エドワードは何も言わない。

ただ、その言葉を受け止める。


月明かりの中で、二人の影だけが重なっていた。


■ジョージ幕間(観測ログ:影の定義変更編)


『サエキ事変ノート:消えない影の資格編』


「……あーあ」


ジョージは笑う。


「ついに“影になる”って言ったか」


カメラ越しに、二人の足元を見つめる。


「でもさ」


一拍。


「それ、支配よりタチ悪いよ?」


シャッター音。


「消えないってことだからね」

ここまで読んでいただきありがとうございます。


悠馬君の父、佐伯拓海と、ノアの父、エドワード・ハミルトンのお話です。


いいねや感想など、いつも励みになっています。

この話もゆるく続いていく予定なので、

また気が向いたときに覗いていただけたら嬉しいです。

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