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第百五話 「感情の死活監視は、フリーズした対象への過剰な最適化が臨界点を超えたとき、予期せぬ形で爆発する」という話

未遂です!

放課後の寮、拓海の自室。


夕方の光はすでに薄く、部屋の中は半分ほど影に沈んでいた。

静かだった。静かすぎるくらいに。


拓海は椅子に座ったまま、動かない。


視線は壁に貼られたガントチャートへ。

だが、それを見ているわけでもない。


ただ、固定されている。


「……タクミ」


エドワードが、わずかに身を乗り出す。


「……応答がない」


タブレットに視線を落とす。


「……心拍、安定」


「……視線、固定」


「……思考活動、低下」


一拍。


「……処理停止状態」


結論だけが、静かに置かれる。


「もうさ、好きにしろよ……」


拓海の声は、乾いていた。


「……どうせさ、全部……」


言葉が途切れる。


「……決まってるんだろ……」


エドワードは、ほんのわずかに眉を動かした。


「……完全な無反応」


一歩、距離を詰める。


「……過剰負荷による、システム停止」


さらに一歩。


「……ならば」


一拍。


「……外部刺激による再起動が必要だ」


「……やめとけ」


動かないまま、拓海が言う。


「どうせろくなこと……しねぇ……」


エドワードは、その言葉を無視した。


手を伸ばし、肩に触れる。


反応なし。


「……タクミ」


もう一度、揺らす。


「応答しろ」


それでも、動かない。


エドワードは、わずかに考えるように目を細めた。


「刺激が弱い」


一拍。


「……より直接的な入力が必要か」


そのまま、顔を近づける。


距離が、縮まる。

近い。

呼吸が触れる距離。


「……最短経路」


低く、淡々と。


「……ここだ」


残り、ほんのわずか。


その瞬間。


拓海の瞳が、跳ね上がった。


「ーやめぇーいっっ!!」


ドガン!!


反射だった。

椅子ごと、エドワードを吹き飛ばす。

壁に叩きつけられる音。


「……ぐっ……!」


「何すんだよテメェ!!」


拓海は立ち上がっていた。


呼吸が荒い。


「距離バグってんだろ!!」


「なんでそこ最短ルートなんだよ!!」


ジョージが、肩を震わせている。


「あはは……いや今のはダメでしょ……」


「完全にアウト判定だよ」


床に手をついたまま、エドワードが呟く。


「…なるほど」


ゆっくりと顔を上げる。


「強制再起動」


一拍。


「成功」


「成功じゃねぇ!!」


「事故だろ!!」


エドワードは、どこか納得したように言った。


「無反応より、遥かに良い」


「お前の意思が、明確に返ってきた」


「返したくねぇよ!!」


ジョージがノートを開く。


ジョージの記録:


【サエキ事変・再起動トリガー編】


サエキ拓海、過負荷により一時停止。


外部刺激(未遂)により、強制復帰。


現状:


・拓海:怒りにより完全復旧

・エドワード:再現性のあるトリガーとして記録

・関係性:むしろ固定化


(追記)


物理的接近は高リスクだが、高リターン。


(継続)


「……タクミ」


「……なんだよ」


「……安心しろ」


一拍。


「……次は、もう少し精度を上げる」


「やめろ!二度と試すな!」


部屋は再び静かになる。


ただ、その静けさの中に、さっきまでなかったものが残っていた。


熱。


そして。

確実に変わった距離。

ここまで読んでいただきありがとうございます。


悠馬君の父、佐伯拓海と、ノアの父、エドワード・ハミルトンのお話です。


いいねや感想など、いつも励みになっています。

この話もゆるく続いていく予定なので、

また気が向いたときに覗いていただけたら嬉しいです。

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