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第九十八話 「古の随筆は、現代において監視行為の正当性を主張するための根拠として悪用される」という話

エドワード、、、段々怖さがw

放課後の寮、ラウンジ。

暖炉の火がパチパチと爆ぜ、外の冷気を忘れさせるほど穏やかだった。


本来なら、「何もしない贅沢」を味わう時間。


拓海はソファに沈み込み、クッションを抱えたまま天井を見上げている。


「……タクミ」


「……なんだよ……」


「今、お前の脳波が『無為』の状態に移行した」


一拍。


「サンプリングの絶好の機会だ」


「……ボーッとしてるだけで解析すんなよ……」


「……“つれづれなるままに、日暮らし、硯に向かいて”」


エドワードが、なぜか和紙っぽい質感のタブレットを掲げ、朗々と詠む。


「……徒然草か」


「兼好法師は言っている」


一拍。


「暇な時間に、心に浮かぶよしなし事(取るに足らないこと)を書き留めるのは、狂おしいほど面白いと」


「……まぁ、……そういう話だな」


「……つまり」


間。


「暇を持て余した私が」


「お前という『よしなし事』を24時間体制で観察し」


「ログを書き留めることは」


一拍。


「日本文化の継承だ。合理的判断だ」


「おい俺を文化財にすんな!!」


「しかも“取るに足らないこと”扱いすんな!!」


「……否定する」


エドワードは静かに首を振る。


「お前は“よしなし事”ではない」


一拍。


「私の心に定着し、移動しない絶対項だ」


「……いや、重ぇよ」


「……そして、“あやしうこそものぐるほしけれ”」


一拍。


「理性を超えた衝動は、美である」


「……よって、私の執着は正しい」


「正しくねぇよ!!」


「だから!どこを縦に読んだらそうなるんだよ!!

兼好法師、そんな変態じゃねぇよ!!」


向かいで、ジョージが笑いすぎてソファから落ちかけている。


「あはは! それもう徒然草じゃなくて“ハミルトン草”だって!」


さらに。


「あーー、いや違うな」


一拍。


「“ストーカー百選”」


「新ジャンル作るな!!」


エドワードは気にせず続ける。


「ジョージ。不敬だ」


「これは古典へのリスペクトだ」


一歩、拓海に近づく。


「……今、暖炉の光の反射角を計算した」


「お前のまつ毛の影が最も美しく映る座標を特定した」


一拍。


「……いと、をかし」


「まつ毛を観測対象にすんな!!」


「怖ぇんだよ!!」


ジョージがノートを開く。


ジョージの記録:


【サエキ事変・古典ハック編】


ハミルトン様、徒然草を監視行為の運用マニュアルとして再定義。


現状:


・徒然草:監視の正当化

・情緒:排除済み

・理性:古典により上書き


(追記)


文学、完全にハッキングされる。


(継続)


(原作者の霊が泣いている可能性あり)


「……タクミ」


「……なんだよ……」


「安心しろ」


一拍。


「お前が寝ている間も」


「私は“硯に向かいて”」


少しだけ言い直す。


「“モニターに向かいて”」


「お前の呼吸を記録する」


「やめろ」


「五・七・五の形式で保存済みだ」


「俳句にすんな!!」


「第一句」


「……寝返りや」


「解析やめろ!!」


「第二句」


「……呼吸安定」


「やめろって言ってんだろ!!」


「第三句」


一拍。


「……タクミ固定」


「固定すんな!!」


暖炉の火が揺れる。


その横で。


拓海の自由時間は、静かに俳句として保存されていった。

ここまで読んでいただきありがとうございます。


悠馬君の父、佐伯拓海と、ノアの父、エドワード・ハミルトンのお話です。


いいねや感想など、いつも励みになっています。

この話もゆるく続いていく予定なので、

また気が向いたときに覗いていただけたら嬉しいです。

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