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第九十一話 「私設基地の終焉は、二大国家権力の直撃によって跡形もなく消え去る」という話

おかしい、、、しおりんお姉ちゃんはこんな性格ではなかったはずなんだ・・・

スコットランドの夜。


霧は低く、空気は冷たい。

別荘の灯りだけが、静かに浮かび上がっている。


その外側。

黒いテントの内部では、スーパーコンピュータの低い駆動音が絶え間なく響いていた。


「ジョージ」


エドワードが、モニターを見つめたまま言う。


「……今、拓海の心拍数が110まで上昇した」


一拍。


「問題の難易度が高すぎるか」


さらに一拍。


「あるいは、私の管理(愛)を感知したか」


「後者だったら怖いよ」


ジョージが即答する。


「多分さ、今お姉さんがスマホ取り出したからだよ」


軽く画面を指差す。


「……ほら。“パパ”に発信」


「パパ」


エドワードが小さく繰り返す。


「日本の警察組織か」


わずかに目を細める。


「興味深い」


タブレットの操作が止まる。


「国家権力と、私のテクノロジー」


一拍。


「どちらが上か、検証する価値はある」


「ないない」


ジョージが笑う。


その時。

空気が、変わった。


音ではない。

光でもない。


ただ、圧だけが来る。


「……あ、もしもしパパ?」


詩織の声が、外部マイクに拾われる。


「うん、庭に“ハイテクな不審物”があるの」


淡々とした声。


「旦那様の方からも、現地警察に連絡入れてもらったから」


一拍。


「外交上の配慮が必要な事案、ってことで」


エドワードの指が、止まる。


「……ええ、そう」


詩織は、変わらない調子で続ける。


「テロ警戒物として処理していいわよ」


さらに一拍。


「ええ。木っ端微塵に」


完全に止まった。


「……ジョージ」


エドの声が、わずかに低くなる。


「今、“木っ端微塵”と言ったか」


「言ってたね」


「日本の警察と、英国の外交ルートが同時に動いている」


ゆっくりと状況を言語化する。


「……これは」


一拍。


不可抗力フォース・マジュールだ」


「うん、詰みだね」


その直後。


遠くでサイレンが鳴る。


近づく。

さらに。

上空。

バタバタバタ、と重い音。


サーチライトが、容赦なくテントを照らし出した。


「……あ、来た」


ジョージが楽しそうに言う。


「地元警察+ヘリ。フルコースだ」


「……タクミ!!」


エドワードが叫ぶ。


「待て!! 私はただ――」


「警察だ!!」


強い声が割り込む。


「両手を上げてテントから出ろ!!」


完全包囲だった。


別荘の窓から拓海が顔を出す。


そこには…

ハイテク観測拠点が、爆発物処理班レベルの厳戒態勢で囲まれている光景。


「……姉貴」


ぽつりと呟く。


「……やりすぎじゃね?」


「いいのよ」


詩織は紅茶を置く。


「これくらいしないと、この“バグ”は消えないの」


完全に冷静だった。


「あ、パパ? ありがとう」


そのまま通話を続ける。


「うん、拓ちゃんの勉強風景、あとで送るね」


温度差がひどい。


ジョージの記録:


【サエキ事変・国家権力介入編】


詩織様、


・日本の警察権力パパ

・外交ルート(旦那様)


を同時発動。


結果:


・ハミルトン様の観測拠点、「不審施設」として即時制圧

・エドワード様、現在進行形で拘束(もしくは回避行動)中

・私、安全圏より観測継続


(追記)


愛の重さは、国家権力に勝てない。


(継続)


(極めて健全な敗北)


「拓海」


連行されながら、エドが言う。


「安心しろ」


一拍。


「……取調室から、お前に和歌を送る」


「黙秘しろよ!!」


即答だった。

ここまで読んでいただきありがとうございます。


悠馬君の父、佐伯拓海と、ノアの父、エドワード・ハミルトンのお話です。


いいねや感想など、いつも励みになっています。

この話もゆるく続いていく予定なので、

また気が向いたときに覗いていただけたら嬉しいです。

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