見せたかったもの
翌日、私は緋桐様と森の中を歩いていた。緋桐様が私に、見せたいものがあると言ってる場所に行く道中だ。緋桐様は私が転ばないように、優しく私の手を引いてくれる。
「疲れてないか?」
「はい、大丈夫です」
しばらく歩くと緋桐様振り返って私を見る。
「ちょっと目瞑ってろ、俺様がいいって言うまで開けるなよ」
「は、はい」
そう言われて私は言った通り目を閉じた。そして緋桐様は私の手をゆっくり引く。
「安全だから心配するな」
そう言ってくれるので私はゆっくりと歩みを進める。
少し歩くとピタリと止まって、手を離す緋桐様。
「いいぞ、目を開けてみろ」
そう言われてゆっくりと目を開けると、びっくりした。色とりどりの花が咲いていた。花畑……だろうけど普通の花畑とは違う気がする。
「すごい……こんなに花がたくさん……」
「すげぇだろ?」
緋桐様に言われて、私は頷くがひとつの違和感に気付いた。
「あれ……?でもこの花とこっちの花って咲く季節が違いませんか?」
私は花を指をさす。私は指さした花はこの季節には咲かない花だ。よく見ると桜に梅に椿に撫子に菊、木に咲く花も低木などに咲く花も全部この季節に咲くものもあれば咲かないものもある。まるでこの場所だけ季節を無視して咲いてるみたい。
「これは俺様の力で咲かせた花だ、花は季節によって咲く時期が違うだろ?俺様の力の植物生成の力はそういうのも全部無視して咲かせることができるんだ」
じゃあこの花は全部緋桐様が咲かせたの……?すごい……。どの花もすごく綺麗に咲いてるし……。
「すごく綺麗です」
私がそう笑顔で言うと、緋桐様も笑顔を浮かべた。
「やっと笑ったな、ここに来てまだ全然笑ってなかっただろ?お前、笑ってた方がずっと可愛い」
そう言われて可愛いなんて言われなれてない私は顔を赤くする。その顔を見ると緋桐様はますます笑顔になり私をさらにからかってくる。
「照れた顔も可愛いじゃん」
「か、からかってますよね!?」
私が、そう言うと「悪い悪い」と笑って言う。絶対適当に謝ってるだけだ!私は褒められなれてないのに〜!可愛いとか言われて照れないわけがない。
「まぁお前の笑う顔見れてよかった、毎晩頑張った甲斐があるよ」
え……。もしかして毎晩出かけてたのってこの花畑を作るため……?私のために……?
「あっちの方には泉があるんだよ、そこには蓮の花を咲かせてるし、泉の水は水浴びしても大丈夫なくらい綺麗だぞ」
「そんなに綺麗なんですか?」
綺麗な泉は確かにあるけど、水浴びしても問題ないくらい綺麗な泉なんて見たことない。
「俺様の浄化の力でな」
浄化の力も使えるんだ……。知ってたけど私の想像以上に強い力を持っているんだなと思う。緋桐様は本当にすごい……。泉の方に行くと透き通るほどに綺麗な泉だった。 咲いてる蓮の花もすごく綺麗……。
「緋桐様って本当に色々な力が使えるんですね」
「まぁこの森俺が管理してるようなもんだしな」
それも初耳の情報ですが。まぁ確かにこんだけ自然に通用する力を持ってるなら森の管理していてもおかしくない。
「ここの森には鈴蘭にも紫陽花とか普通なら毒があったりするけど、俺様が作ったやつはないし」
そこまで法則無視できるんだ……。本当にすごい……。ということはこの森に流れてる小川とかの水も綺麗なのかな……?聞いたら答えてくれるかな?私は意を決して聞いてみた。
「じゃあ、この森に流れてる小川も綺麗なんですか?」
「あぁ、人間でも普通に飲めるくらいに綺麗だぞ」
そんなに!?そこまで綺麗にできるってことはやっぱり相当力が強いってことなんだろうな。
「今度は夜にも出掛けてみるか、ここには夜にしか咲かない花の月下美人もあるし、綺麗に咲くのはもう分かってるし、ここから見る星と月も結構綺麗なんだ」
もしかしてこの場所に花畑を作ってくれたのは星と月も結構綺麗に見えるから……なんて考えるのは自惚れてすぎだろうか……。
「桔梗が他にも咲かせてほしい花があったら咲かしてもいいけど」
「い、いえ!今はこれだけで十分嬉しいです!」
私のためにここまでしてくれる人は今までいなかった……。どうしてこんなに私のために色々してくれるんだろう……。緋桐様も少しくらいは私のことを想ってくれている……とか思ったら、自意識過剰とか勘違いとか自惚れとか……思われちゃう、かな?
「そうか?ならいいんだけどな」
でももしひとつ……私の我が儘を聞いてくれるのであれば……。
「あの……今日その月下美人と星と月を見たいのですが……いけませんか……?」
「別に俺様は構わないけどお前は疲れてないのか?」
「へ、平気です!」
むしろ疲れてたらこんな提案はしてないし、星や月をゆっくり見る機会もあんまりなかったし、月下美人なんて見たこともないから見てみたい……というとのもあるけど……でも一番見たいと思った理由はたったひとつしかない、私は、緋桐様と月下美人の花と綺麗な星と月を一緒に見たい……それが一番の理由だった。




