夜の用事?
緋桐様と過ごすようになって数日、最近少し気になることがある。
「俺様、ちょっと出てくるわ」
「は、はい!行ってらっしゃいませ」
このように夜になるとどこかに出ていくってことだ。どこに行くのかと尋ねても「ちょっと野暮用」や「散歩」くらいでちゃんとしたことは答えてくれない。
蛇には夜行性の種と昼に活動する種がいるらしいけど、多分緋桐様には関係ないと思っている。用事とか……?でも夜にやる用事ってなんなんだろう……。
散歩に行くって言っても夜に行く必要はないし……。
それに、出ている時間は1時間ほどで帰ってくるし……。帰ってきたときは私も大抵起きてるから帰ってきたときの様子も見てるけど……帰ってきても普通だから危険なことをしているようにも見えない……。
「うーん……」
考えても中々答えは出てこない。というか普通に分からない……。1つ目は本当に野暮用や散歩……。2つ目は夜にしか出来ない用事、3つ目は私に言えないような何かをしているということ。まだ打ち解けてもいない状態だし、3つ目でも十分不思議ではない。蛇は警戒心が意外と強く臆病というし……そう考えるとちょっと悲しい。いやでもそもそも妖という種の緋桐様が普通の蛇と同じ性格なのかと言われると違う気もするし。何かあるんだろうか……確かめるにしても襲われて助けられた直後に何を言われるかと考えると安易に着けるなんて出来ない。
「本当に分からない……」
ついそんな声が出てしまう。とりあえず今の間にお風呂でも入って来ようかな。ていうか緋桐様って普通に私の着替えとか、用意してくれてるんだけどどうやって用意してるんだろう……?ここで暮らすようになったといえど、私と緋桐様は四六時中一緒にいるわけでもないし。そんなことを思いつつお風呂に入る。お風呂に入ると少し心が落ち着く……。やっぱりお風呂は命の洗濯と言われるだけはある……。ゆっくりとお風呂に入り、30分ほどで私はお風呂から上がる。本当これを含めて半年で作り上げたのはすごい。やっぱり普通の人間とはとは違うんだろうか……。
「……あ、お帰りになってたんですね……お帰りなさいませ」
「おう」
やっぱり帰ってくるのは1時間程度……か。
「なぁ、明日一緒に散歩にでも行かないか?お前に見せたいものがあるんだ」
「は、はい!」
お散歩に誘ってくれるのはここ数日で何回かあったけど、連れていきたいとか、見せたいものがあると言われるのは初めてだ。何だろう?私に見せたいものって……。少し不安もあるけど期待もある。何を見せたらそんな気持ちが的中するのかも分かりっこないんだけど。
「じゃ、俺も風呂に入ってくるな、あまり夜更かしすんなよ」
頭をぽんと叩いてお風呂に入っていく。400歳と20歳だとするとやっぱりまだまだ未熟な小娘にしか思われてないんだろうな……。人間からしては20歳はもう成人してるんですよ、緋桐様……。緋桐様が人間だった時代はどうだったか、そりゃ知りませんけど。子供扱いされると些か不満を抱いてしまう。一応私が貴方に惹かれてる、なんてこと気づいてないんでしょうね。
自分で言っててちょっと悲しくなってきた。400歳から見ると20歳なんて若さ、私から見て5歳児の子供を見てるような感覚なのかと思ってしまう。せめて普通に言葉を交わしているのだからそれくらいには思っていてほしいんだけど……。というか緋桐様っていくつまで生きれるんだろう?それとも妖だから不老不死なのかな……?そうなるとどちらにせよ、先に私が生涯を終えてしまうのね。そんなことを考えると少し悲しくなってきた。
「あー、やめやめ!せっかくお風呂に入ってすっきりしたんだから!」
また考えだしたらきりなんてない。私は水を飲んで、喉を潤した。そうしてると緋桐様もお風呂から出てきた。たまに思うけれど、緋桐様って蛇の妖だから体温が少し低いのよね。お風呂上がった直後とかどうなんだろう……とかつい考えてしまう。
「桔梗、なんかあんのか?俺様のことじっと見て」
「え!?いえ……その……緋桐様は体温が人より低めなのでお風呂上がった直後とかどうなんだろう……とか思っていて……」
つい聞かれてしまい、思っていたことをそのまま言ってしまうと、一瞬顔をきょとんとしていたがその後吹き出して笑う緋桐様。
「そんなことかよ、ほら」
そう言って手を差し出してくる……。握ってみろってことかな?私はそっと緋桐様の手を握ってみる。緋桐様の手に触れることは何度かあったけどお風呂上がりは、普段より温かい気がする。
「お風呂上がりは……少し温かいんですね」
「まぁ当然っちゃ当然だろ」
それもそうか……。少し考えれば分かることかも……。それでも「くだらないこと言うな」とか言わずに、確認させてくれるってやっぱり優しいと思う。
本当に、これまで何人も人を食べてきたとは思えない。恐れられているのは、その人を食べるというところと、強力な力を持っている……というところだとは理解しているつもりだけれど、それでも私は……この人をそれほど怖い人には見えない。




