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本当の出会い

ここで緋桐様と過ごして私は思い出したことがある。

そのことを話したくて、夜に緋桐様の部屋を訪ねた。

最初の頃は緋桐様の部屋はどんなものなのかと思っていたが、それほど人間と変わらなかった。やはり、元人間だからなのかなと、その時には思っていたけど緋桐様曰く「生活できる必要最低限のものがあればいい」とのこと。


「桔梗が俺様の部屋を訪ねるなんて珍しいな、普段は緊張して中々入らないのに」


「だって男性の部屋なんて入ったことありませんし……」


「ははっ、お前は本当に純情だな」


笑われてしまったけど、私の発言で笑われることにも、だんだん慣れてきてしまった。そんなことよりも私の話したいことを話さなければ。


「緋桐様、私達が会った日のこと覚えいますか?」


「あの生贄としてお前が来た日な、お前がいた村では贄姫って名前で呼ばれてたりもするんだっけか」


「はい、実は緋桐様と話した時、私初めて話した気がしなかったんです」


そう、私は初めて話したはずなのに、初めて話した気が何故かしなかった。でも、当たり前だった。だって、私達が本当に初めて話したのはあの日じゃなかったんだから。


「緋桐様、14年前……この森で子供に出会ったことはありませんでしたか?」


「え?…………あー、そう言えばいたな、10年以上たちゃ整った容姿になりそうな女のガキ」


ここまで話して、私が言いたいことがわからないんですか。


「それ私です!」


「えぇ!?あのガキお前だったのかよ!……でも確かによく見れば、面影あるなぁ」


私は14年前、この森に誤って入ってしまったことがある。森に入り込んで迷子になって泣いていた時に「お前、なんでこんなところにいるんだ」と話しかけてきた人物。それが緋桐様だったのだ。思い出したけどあの頃の緋桐様と今の緋桐様と何も変わらない。むしろこんな特徴的な緋桐様をよく忘れていたなと思ってるくらいだ。


「かなり綺麗になったもんだな〜、小さい頃から整った顔立ちになるとは思っていたけどこんな風に育つとはなぁ」


私の髪に触れながら、まじまじと私を見る。そんなに見られるとさすがに少し恥ずかしい……。緋桐様に触れられるのは嫌いじゃないし、嬉しいけど……。そう思っていると私の様子に気づいて手を離す緋桐様。


「と、悪いな、嫌だったか?」


「い、いえ……恥ずかしいですが、嫌というわけではないので……」


私が照れながらもそういうとほっとしたような表情で、緋桐様は優しく包み込む。


「小さい頃も可愛かったけど、そうやって照れる姿も可愛いな」


抱きしめられるのもまだ胸が高鳴るし、少し恥ずかしいけど、そんなそわそわした気持ちの中にも安心感がある。それに嫌じゃないしむしろ、好きだし……。

緋桐様は蛇の妖だからか、私よりも少し体温が低い。

でも、抱きしめられるとどこか温かく感じる。


「あの頃、確か森の入り口の近くまで送ってやったんだっけ……?」


「……はい、緋桐様はずっとあの頃から優しかったです」


ただの人間なんて、食べてしまってもよかったはずなのに、食べるどころか助けてくれた。


「生憎俺様は、子供とかは食べる気ないんだよ」


「わ、若い女の子は食らうのに子供は食べないんですか……?」


「人間なら誰でも食うと思ってんのかお前は、お前の中で俺様はどういう奴なんだよ」


でもまだ20代前後の女の子を食べていたのは事実でしょうに……。それにどんな風に見ているかと言われると……孤独で繊細なところがある優しくて寂しがり屋……。でも、私にとっては誰よりも愛しい人。


「それに俺様はもう人間食わねーし、生贄もいらん、お前さえいればいい」


「緋桐様……」


「本気だからな、桔梗のことだって逃がす気はねーし、つか他の奴のところに行くとか許さん」


緋桐様は、私を離して真っ直ぐした瞳で私を見つめて言う。でも私だって、緋桐様の側から離れるつもりなんてないし、今更緋桐様のいない生活なんて、想像出来ない。もう彼の愛に囚われてしまったも同然だ。


「あの頃から、緋桐様に愛されたかったです」


「俺だってあの頃からお前を愛したかったよ、生憎俺様には幼女趣味なかったしな」


幼女趣味があったらあったで、それは色々問題がある気がしますけど……。という言葉は言わないでおこう。変に掘り下げる必要はないだろうし。


「まさか14年後、生贄として来たお前をこんなに深く愛することになるなんてな、14年前どころかお前が来る前日の俺様に言っても信じねーだろうな」


「きっと私もあなたをこんなに愛して愛されるなんて言っても信じませんよ」


お互い様だと思う。そもそも今こうしているのをあの頃の私が見たら、目を疑うだろう。


「明日はどっか行きたいところあるか?」


「緋桐様と一緒ならどこへでも……」


「本当、お前の可愛さ無限だわ」


私達は顔を見合わせて微笑み合う。本当にこんなに幸せでいいんだろうか。たまに不安になってしまうほど私は幸せだ。こんなに愛されること、絶対ないと思っていたから。緋桐様と出会えて、あの頃死ぬと思っていたから、好き勝手に振る舞ったことが深く愛される理由になるなんて思ってなかった。それにしても本当に妖は姿が変わらないんだなぁ。14年前と今の緋桐様容姿が同じなんだもの。

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