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14年前の出来事(緋桐視点)

桔梗が話し終えて出ていった後、俺様は1人で目を閉じて14年前のことを思い出す。


〜〜〜〜〜〜〜14年前〜〜〜〜〜〜〜


「今日は湖の方にでも行ってみるか……」


そんな独り言を呟きながら、歩いているとどこかから「グスッ……グスッ……」と声が聴こえる。聴こえる方向に足を進めると、跨げるほどの、小川のそばに1人の子供がいた。なんでここに子供がいるんだ?


「お前こんなところで何してんだ?」


声をかけると、俺様の方を振り返るとまだ幼くはあったが、このまま成長すれば確実に美しく育つであろう。そう思える子供だった。12年以上経てば生贄候補に選ばれてもおかしくない。なんか俺様の噂、変に尾ひれが付いて「美しい若い女が生贄になる」とか言われてる。別に若くなくても食うけどな。確かに若い女の肉は柔らかいけど。


「……まよっちゃったの」


考えているとか細い声でそう言う子供。ここに迷い込むとは……、放っておいたらこいつすぐに骨になっちまいそうだな。しょうがねぇ……ガラでもないけど近くまで送ってやるか。生憎幼女を食う気もないからな。そもそも生贄じゃねぇし。


「立てるか?近くまで送ってやるよ」


そう言うとそいつは下を向く。目線を追いかけると右足から血が出ていた……これじゃ立てねぇか。俺様はため息をつきながら、小川の水で足の血を洗い流す。

この小川は俺様の浄化の力で、普通に飲めるくらいには綺麗で澄んでいる。そいつの血を洗い流すと、俺様の治癒能力で足の傷を治した。


「いたくないっ……!ありがとう!おにいちゃん!」


おにいちゃんねぇ……。俺様は400年は生きてるからおじいちゃん以上の年齢だけど、まぁこの見た目じゃしょうがねぇか。でも俺の姿に怯えてねぇとは珍しいな。とりあえずこいつを送ってやるために、村の方向を聞いてそいつの手を引いてやる。疑いもなく着いてくるとは、本当に子供は疑うことを知らない生き物だな。俺が別の場所に連れて行くとも微塵も疑っちゃいねぇ。まぁ他の場所に連れて行く気もねぇけど。


「ところで、お前みたいなガキはここに来るのは禁止されてるはずだぞ」


「そうなの?」


そう言う子供に俺様は教えてやる。普通の人間は入れないこと、入るにはある条件があること、この森は危険であること、また迷い込んだら助かる保証はないこと。説明してやるなんて俺様もまだお人好しなところがあるもんだな。


「……だからお前みたいな奴はここに入っちゃ駄目なんだよ」


「そうなんだ……、分かった!」


本当に子供というものは純粋っつうか……嘘を言ってるとも思ってないんだろうな。まぁ嘘は言ってねぇからいいけどな。歩いてると村が見えてにきて、俺は眺める。働く人間、鞠つきや地面に絵を描いたりして遊ぶ子供。今となっちゃ滅多に見ることのない、すごく懐かしい光景……。


「ほれ、ここまで来りゃもう帰れるだろ」


そいつの背を軽く押して、俺様は後ろを向いて去ろうとした。するとまたその子供は声をかけてきた。


「ありがとう!ねぇ、おにいちゃんにまた会える?」


会えるとなったら生贄になる時だろうな。こいつの顔なら十分にありえるし。


「……どうだかな」


俺はそう言って森の中に入って行く。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


そう、これが桔梗に初めて会った日のこと。


「あのガキがなぁ」


桔梗に限らず、毎年来る女は美したかったけど、あいつみたいに毅然と話す女は初めてだった。今となっては食わなくてよかったと思っている。こんなに人間の女を愛すとは思ってなかったし、恐れられてる俺が愛されるとも思ってなかった。本当に桔梗を逃がす気もねぇし、あいつさえいれば俺は何もいらねぇ。時々、このままこの場に閉じ込めてしまいたいという、どす黒い気持ちの中に、それでも自由を奪うようなこともしたくない。と、矛盾した気持ちがある。


「こんなこと考えてるって言ったら引かれっかなぁ……」


引かれるだけならまだしも嫌われたくはない。「重い」「引く」ならまだしも、「嫌い」だの「無理」だの言われたら多分、この森の半分くらいは滅ぼす勢いで発狂してしまう気がする。それだけは避けなければいけない。あいつに会ってから本当に狂わされっぱなしだ。

でも、閉じ込めてしまいたいなんて、嫌われてもおかしくない。優しいあいつでも、そんなことすら許してもらえるとは思えない。あいつさえ良ければ今すぐ抱いてしまいたいとも思っているし、あいつを見るといつでもこの腕に閉じ込めてしまいたいと思ってしまう。我ながら重いとも理解はしてるつもりだ。


「でも、それくらい愛してるんだよなぁ」


分かってる。そんなの伝えてはいけない想いかもしれないってことくらいは。けど仕方ねぇだろ!俺の独占欲は異常に強いってことも今は理解してるしよ!そもそも桔梗があんなに優しいから俺の心が囚われてしまったんだよ!俺に愛されて嬉しいとは言ってくれるけど、閉じ込めたいとか言って、それを受け入れたら受け入れたで若干不安になる気もするし。駄目だ矛盾した気持ちばかりが浮かんでしまう。とりあえず今日は寝るか、これ以上複雑なこと考えたくねぇし。

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