Log2-18//生贄(2)
――帝都ナデシア・インペリアル・ノード
星辱者の生贄を捧げる式典を控え、帝都は祭り一色になっていた。
戦争で背負った傷を忘れようと、人々は生きようとする活力全てを、戦後の復興に注いだ。生きて働き社会を動かす人々から、帝国は命を注がれ、目覚ましい発展を遂げてきた。
しかし、今ではそんな国民を帝国は静かに恐れるようになっていた。
日々蓄積されていく人々の膨大な活力は、こういった式典や儀礼で消費され、それは帝国によって抑圧的にコントロールされてきたのだ。その活力は、まるで反動のようにクローンたちにぶつけられた。
「控え室でお待ちください。後にお召し物を替えていただきますので」
目の前で扉のロックがかかる音が聞こえると、ヘリヌールはマニュアルどおりに対応するクローンの無慈悲さに、この先の絶望を感じて崩れるように座り込んだ。
隣のミメアは流す涙も枯れ果てたのか、ただじっと目を閉じている。
ヘリヌールはスカートのポケットからヴォイドリンクを取り出し、手の中に収めると、祈るような気持ちで強く握りしめた。あれから何度か連絡を試みたが、アマヨリと繋がることはなかったのだ。「信じて」と言ったアマヨリの言葉を、あきらめたくはなかった。
しばらくすると、式典で着用する生贄用の装束が、先ほどのクローンによって運び込まれた。これから消えゆく者にはふさわしくないほどに、薄紅色に透き通った生地は七色の糸で縫われ、美しい。引きずるほどのショールには細やかな刺繍が施されている。壮麗な装束は、式典を飾るための装飾品の一部なのだ。
ヘリヌールは諦めたように、上着に手を掛けた。
「待って、あなたたちが着るのはこっちよ」
「‼︎」
先ほどとは違う、急にクローンらしからぬ話し方に、ヘリヌールは息を飲んだ。
目の前のクローンは、いそいそと自分の着ているものを脱ぎ出す。
「ごめんね、連絡できなくて。すぐに私とこっちの娘の着ている服に着替えて」
それは紛れもなくアマヨリだった。
ヘリヌールは急かされながら、着ていたものをアマヨリへ渡す。
入り口の方では、後ろを向いたままのクローンが、アマヨリと同じようにミメアへ着ていたものを渡している。なぜか、そのクローンは皆が着替え終わるまで、後ろを向いたままだった。
アマヨリは交換した装束に着替え終わると、栗色のかつらを被り見事にヘリヌールと入れ替わった。
「どう? これなら顔を見ない限りわからないでしょう?」
得意げな顔でアマヨリはヘリヌールに言った。顔を強張らせたままのヘリヌールの緊張を解こうと、アマヨリは壮麗な衣装の裾を持ち上げてくるりと回ってみせた。
そして、入り口で後ろを向いたままのクローンを覗き込む。
「ふふ。こう見ると、ワサトも男子ってわからないね」
「俺が華奢でよかったよ……。なかなかのスタイルに仕上がっただろ〜?」
ワサトは、二つの詰め物を持ち上げるような仕草をすると、ミメアは少し咳払いをした。ほんの少しだけ緊張の解けた二人を見て、クスリと笑ったアマヨリは、ヘリヌールへ施設の地図を渡し、脱出方法を説明した。
「このフロアまで出れば別の人間が待機しているから、あとはその人の指示に従って欲しいの。星の名を聞かれたら、スピカと言って」
そして二人の手首に残るヴォイドリンクに目をやると、ワサトへ渡すよう促した。
「すぐ終わるから」
そう言ってワサトはヴォイドリンクを自分のものにリンクさせる。
「俺たちのヴォイドリンクにそっちの神経波形をコピーして、んで、ヘリヌールちゃんたちの身分データを移してっと」
ワサトの様子を見ていたヘリヌールが不安そうに尋ねる。
「あの、それは大丈夫なのでしょうか……」
「ああ? 大丈夫、大丈夫。普通なら俺らがヘリヌールちゃんたちのヴォイドリンクをつけたら神経波形が違うからアウトだけど、俺らのヴォイドリンクは特殊なの。こうやって読み込ませた神経波形どうしをお互いに読み込ませて偽装するんだ」
部屋の中は静まり返る。
チラリとヘリヌールたちの顔を見たワサトは、手元を動かしながら付け加える。
「つまりは、装着者の波形を直接読み取らないで、偽装した波形の間をずっとシステムは読み込み続ける。……ってまあ、技術的な話は置いといて、ここから出られるってことだよ。ただ……」
最後の不穏な言葉にじっと耳を傾けるヘリヌールとミメア。
「これから渡すヴォイドリンク、こっちの方は、訳あって、何の情報も入っていないただのダミーなんだ。もしどこかで警備兵に身元を求められたら、さっき教えた場所まで全力ダッシュね」
顔を見合わせた二人には、選択をする時間さえもう残されていない。
不安の消えないヘリヌールの手をアマヨリはそっと握る。
「私たちに、今は任せて」
「……」
しかし、ヘリヌールは恐る恐る尋ねる。
「あなたたち二人はどうするの? 手足は台座に乗ったら固定されてしまうのよ」
ニコリと微笑んだアマヨリは、大丈夫と言って二人に偽のバウンドヴェイルを被せると、急かすように部屋から送り出した。
「さてと……」
装束姿のまま、あぐらをかいて座り込んだワサトは、アルフリーナへ連絡を入れた。
「二人を部屋から出した。今そちらに向かってる。よろしく〜」
二人を見届け、アマヨリとワサトは、呼び出しのかかるまで静かにその時を待った。
まるでパレードのように始まった式典は、映像で見るよりもずっと壮大なものだった。インペリアル・ノードへ続く大通りをアマヨリたちを乗せたゼルグライドがゆっくりと進み、車窓からは正装姿の兵士たちが、こちらには見向きもせずにただ前を見据えて行進をする。群衆は高みの見物とばかりに意味もなく生贄の星辱者へ一瞬の興味を向けた。
祭壇へ降ろされたアマヨリたちは宰官の待つ壇上にひざまづくと、金糸で縫われた法衣を纏ったミルザムが祝詞をあげた。
「我、創星の神に誓う。 星辱なるものを滅し、ここに捧げん。 創星神の守護を賜りて、 しじまの星となり、 星の理に従わん 」
(映像だと聞こえなかったけど、施設にいたときに読み上げていた祝詞とほとんど同じだ……)
その祝詞を聞いたアマヨリは彼らの作り上げられた世界の中で生かされているだけなのだと、力も萎えてしまうような絶望に苛まれた。
一方、隣のワサトは何も気にしていない様子で、ミメアの姿を楽しんでいるようにさえ見えた。
ひざまづいた視界には、慈悲のかけらも見当たらないミルザムの視線がこちらに注がれているのがバウンドヴェイル越しに見える。
まるで鋼の荊で叩きつけるようなその視線は、ヘリヌールたちの心をズタズタに引き裂いてきたことがわかる程のものだった。
やがて、式典の進行とともにアマヨリとワサトは台座へと乗せられ、手足を拘束された。浮上するとともに、会場からはどっと歓声が溢れる。
――怖い。
見下ろした群衆もまたアマヨリには、ミルザムと変わらぬものを感じて、身震いした。
「ヨリちゃん大丈夫? もう少し上に行ったら見えなくなるから、少し待ってて」
ヴェイルの上からでもわかるほどに、アマヨリの顔色が悪くなっていた。ワサトは優しく声をかけ、アマヨリを落ち着かせようとした。
「ごめん、大丈夫。ちょっと人に酔ったみたい」
二人を乗せた台座が星核柱の頂点へ達したときだった。
ゆっくりと開く炉の扉から漏れ出した青い光は逆流を起こしたように、白い色へと変わっていった。
それに合わせるかのように、アマヨリたちの台座も白く輝き出す。
「なんだこれ! 聞いてないぞ。 嫌な予感がするから早めに拘束を解くよ!」
そう言ってワサトは腰に忍ばせた秘密道具で腕の錠を解いた。
目も開けられないほどの強い光が二人を包む。
暖かさも冷たさもないその光は体の感覚を鈍らせていくようで、不思議な感覚だった。掴むことなどできるはずもないのに、何かを掴めそうな気さえした。
「ねぇワサト、体も光ってるんだけど、なにこ……」
――!?
群衆の方から突然、天をつん裂くような大きな爆発音が聞こえてきた。
それと共に星核柱の周辺が煙で覆われ、悲鳴で会場は埋め尽くされた。
すぐに、空の方から聞き覚えのある声がした。
「二人とも早く!」
全身灰色のスキンスーツに身を包んだアルフリーナが、スカイックにまたがり上空から声をかけた。
「アル〜。結構派手にいったけど大丈夫?」
「大丈夫かどうか聞かれてもわからないわ。それよりこれを被って早く乗って」
「おけ〜」
アルフリーナは並走させてきたスカイックをワサトの方へ寄せると、順番に手を貸し二人を乗せた。灰色のローブを被りそのまま勢いよく、煙幕の中を進んでいると、爆発音が何度か鳴り響く。
高度を上げたスカイックから、散り散りになった人々が通りを全速力で駆け抜けていく光景がうっすらと見えた。
「あ、もう白くない」
アマヨリは腕を伸ばして体を確認するとホッとした。
「向こうも青い色に戻ってるね」
ワサトに言われて後ろを振り返ると、先ほどまで真っ白に染まっていたコアカラムはすっかり、いつもの様子に戻っているようだった。
違法航路と呼ばれる監視網の際を攻めた航路を、改造スカイックで通過した三人は、なんとか一時待機場所へ帰り着いた。
ここは毎月相場の三倍の金額を支払って借りているスポーツジムの地下だった。
普段はキュウザンの待機場所として利用していたが、ちょうど軍本部の方に出払っていた。アマヨリとワサトは、ローブとバウンドヴェイルを身に付けたまま、ジムの階段を駆け降りた。
「よぉ、姉ちゃん。今日はクローン連れてどうしたんだ?」
ジムのオーナーがアルフリーナに話しかけた。いつものようにアルフリーナはオーナーへ愛想笑いを送り、頼るような声で言った。
「最近ストーカーが怖くて、警備会社から派遣してもらったの。今日も後をつけている奴がいないかしばらく見ていてもらえると助かるなぁ」
ジムのオーナーはアルフリーナを気に入っているのか、正義感に駆られてなのかアマヨリにはわからなかったが、任せておけと言って入り口の方へ戻って行った。
そんなやりとりを横目にアマヨリは、ヘリヌールたちの無事を確認しようとすぐにアルフリーナへ問いかける。
「作戦成功って言っていいんだよね? 二人は無事だよね?」
「大丈夫。私も行くわ。この後のことを話さないと」
ヘリヌールたちは郊外にあるホテルの一室に待機させられていた。
アマヨリを見るなりヘリヌールは泣き出し、ミメアに至ってはまだ実感がないのか、安心しきれていないのか放心状態だった。
そんな二人に喝をいれるようにアルフリーナは、淡々と彼女たちから情報を得ようと取り調べのような雰囲気で聴取が始まった。
アマヨリも同席するものだと思っていたが、部屋を早々に追い出され一人ラウンジで時間を潰す羽目になった。
仕方なく注文した紅茶とケーキをぼーっと口元へ運びながら、ラウンジに映し出されたエアビューから聞こえるニュースに、なんとなく耳を傾けていた。
『――次のニュースです。インペリアル・ノードで起きた爆発は、反抗組織によるテロの可能性が高まり、統制局は当日の警備体制に問題がなかったかを引き続き調べる方針です。なお、このテロによる死者は三人、重軽傷者を含む死傷者は二十人以上に上ると見られています。また、テロリストとみられる男一人の死亡も、その場で確認されています』
席から飛び上がるように離れたアマヨリは、エアビューのよく見える席へ回り込んだ。そして映し出された現地の映像に言葉を失う。
(これは……、私たちがやったことなの?)
淡々と事実が伝えられ、目の前の映像には煙に巻かれながら横たわる人々や、逃げ
惑う人々が映し出されている。画面からはテロの凄惨さだけが刻々と報じられている。ニュースは続けられ、アマヨリは息を呑むように映像を見入った。
「なお、式典はすでに執り行われていたため、星辱者は今年も無事に神へ捧げられました。この後は、ミルザム聖宰官の会見の予定です」
(私たちの作戦は成功した……。成功したけど、この犠牲は必要なものだったの?)
カタカタと震える指先を隠すようにアマヨリは強く拳を握りしめ、アルフリーナの戻りを待った。
しばらくして、ヒールを鳴らす音がこちらに向かって来るのに気づき、息を呑んで待った。
「戻るわよ」
アルフリーナの隣には、帽子を深く被ったヘリヌールが縮こまるようにして立っているが、ミメアの姿はない。
彼女はどうしたのかと、すぐにでも聞きたかったが、多くの人のいる前ではそんな会話ですら、憚られる気がしてアマヨリは口をつぐんだ。
逃げるようにしてホテルを出た三人は、まるでお互いが見知らぬ人のように会話もせず、目も合わせずアジトへと戻った。
ようやく口が聞けるようになったアマヨリは、すぐにアルフリーナを捕まえ、テロのことを尋ねた。
「煙幕だけじゃダメだったの? 死んだ人も三人以上って聞いたよ」
部屋に着くなり身につけていたアクセサリーを外しながら、アルフリーナは答える。
「煙幕だけじゃダメよ。注目する場所を変えなきゃいけないんだから」
アマヨリに与えられた部屋とは異なり、ベージュ色の壁紙にアンティーク調のブラウンの家具、唐草模様のダークグリーンのカーテンを差し色にした落ち着いた部屋は、アルフリーナの平静さをさらに強調するようだった。アマヨリは他人事のように話すアルフリーナにもう一度、聞き直した。
「爆発物はアルフリーナが仕掛けたの?」
アルフリーナは下着姿で部屋着を漁りながら、少し考え込むようにして、アマヨリと視線を合わせた。
「まさか。帝国を恨んだり転覆させようとする人間や組織はたくさんあるのよ。管理区画やインペリアル・ノードへ入り込むのは難しいとされているから、私たちが警備の隙を与えてあげればネズミのようにいくらでも入ってくるの。そういうのが。私たちはそれを利用して誘導したり、その隙を教えてあげたりしただけ」
アマヨリの顰めた顔を見たアルフリーナは更に続ける。
「そんなに綺麗なことばかりやっていると思ったの? クローンの解放なんてそんな一筋縄じゃいかないわ。帝国のやっていることを覆すには、それなりの犠牲も出てくるのよ」
帝国のやっていることは許せなかった。式典を彼らの政治の道具として利用することも、それをショーのように見る群衆も、消し飛んでしまえばいいと思うほどに憎かった。
けれどその憎しみを見知らぬ人々へ振り撒いて消し飛ばすことなど、アマヨリにはできなかった。
それが自分の甘さゆえなのか、憎しみの深度の違いなのかはわからない。
「うん、わかってるよ……」
「ヘリヌールはこっちで引き取ることにしたの。もともとメビウスにいた子だから、クリプタにも説明はつくわ。もう一人は社会に溶け込むことを望んでいたから。こっちでクリプタに頼んで、ID作って……そんな流れね」
不安な顔がまだ拭えていなかったアマヨリに、アルフリーナはため息をついた。
「本当にこれで良かったのか……、っていう顔ね。その折り合いは自分でつけるしかないのだけど……。仕方がなかったと言ってしまえばきっと持たないでしょうから、もう一度組織にいる意味を自分で確かめて」
「ここに……いる意味……」
「そう、でないと心が壊れてしまうわよ」
「……ひとまず、ヘリヌールの部屋をアマヨリと同室にするから手伝って」
アマヨリはなに一つ納得のいく答えは得られなかった。けれど、立ち止まって考えてしまったら、そこから動けなくなってしまうような気がした。
――考えてはダメだ。
アマヨリは、今の気持ちを押し殺すように、無理矢理蓋をした。
荷物を持たない者が集まるアジトは、メンバーが増えるたびに揃えるものも細々とあり、アマヨリはワサトと共に物資の揃う街までスカイックを走らせた。すっかり女装の解けたワサトになぜか物足りなさを感じるほどに、思い出してはクスリと笑い声が漏れた。
「ヨリちゃんまた笑ったでしょ〜」
「だって、あんなに厳粛な場所でまさか男の人に入れ替わってるなんて誰も気づかないんだよ? ミルザムなんて一緒に暮らしてたのにさ」
「あいつらには物と同じにしか映らないからなぁ。そういえばさ、星核柱が白く光ったのってなんでなんだろう、あれのおかげで観衆は生贄になり遂げたと誰一人疑わなかったけど……」
「映像で見たのは、一瞬だったよね。結構長い間光ってた気がする」
「気になるな……あとで映像解析してみるか」
ヘリヌールやテロのことで頭がいっぱいになっていたが、星核柱のことも気になっていた。あの不思議な感覚は忘れられるものではなく、心地よいとさえ思ってしまったのだ。科学の知識は皆無だったが、ワサトたちと調べれば体が光った原因もわかる気がした。
♢♢♢♢
「うーん。なんで今回こんなに発光したんだ? まれにあることなのか?」
一人ワサトはヴォイドリンクに記録された脱出時の映像を見ながら首を傾げていた。あのとき、星核柱だけでなく自分たちも白く発光したのだ。特にアマヨリの光り方は前例がなさそうだった。
「星核柱内のアストリウムが反応すると、白く光るはずだよな……」
結論の出なそうな現象に、手詰まりになっていると、クリプタからの呼び出しが入る。
インペリアル・ノードでのテロ事件について、実行犯の男が拘束されたという話だった。ワサトの背中を嫌な汗がたらりと伝っていく。
「まさか、お前たちは関わっていないだろうね。エデンの警備兵が取り調べを受けている。実行犯が事前にエデンへの侵入経路の情報を持っていたようだ」
エデンへ外から入り込むには、地上も空も厳重なセキュリティと警備の壁に覆われていた。中へ入り込むにはエデン側に協力者がいなければ難しい。
ワサトたちは、その協力者を秘密裏に動かしていたのだ。もちろん関係者が捕まることは想定済みであらゆる痕跡は残さないようにしてきた。
「もちろん。先生、心配しすぎですよ〜」
「そうか、それならいい。連絡したのはこの件じゃない」
ほっと、胸を撫で下ろしたと同時に先生の口調からワサトは再び顔を緊張させる。
「なんですか、あんまりいい話じゃなさそうですね」
少しの沈黙が要件の重さを語る。
「動いていた件、判明した。メンバー全員に通知を送るが、許可するまで帝国アーカイブに関わる指示をしないでくれ」
その言葉に、ワサトは息を呑んだ。体をつたう汗は相変わらず冷ややかに流れていく。
目をつむり、言葉を絞り出すように言った。
「いつ……ですか」
手元の映像は、音もなく、人々が逃げ惑う様子だけが淡々と流れ続けていた。




