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R15 終末世界で、執事は僕を調律する。~人外執事×傲慢坊ちゃま~  作者: 島田まかろん三世
第六章

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 調律は終わった。

 これは、正しかったのか……。


 僕は。なにをしたんだ。


 急速に、めていくはずの感情。

 なのに、めない。

 カナトの熱が、まだ僕の中に居座り続ける。


 どうして……。


 血管を巡る白濁した麻酔薬のように、それは僕の思考を、倫理を、じわじわと焼き切っていく。


「もう、調律は終わっただろう。

 僕の中から出ていけ」


 泣きそうになるのを耐えて、僕は言った。

 それがせめてもの、僕のプライドだった。


 唇は震えていた。拒絶の言葉を吐きながら、僕の指は、カナトを離すまいと、その腕を強く、強欲に掴んでいる。


 ――僕は、なんて醜いんだ。


 なのに、カナトの返答は、想像していない言葉だった。


「いやです」


 短くそう言って、カナトが僕に、覆い被さった。

 堆積した落ち葉の感触が、背中に触れる。


 その冷たさが、カナトの肌の異常な熱さを、より鮮明に、残酷に浮き立たせた。


 カナトの左手が、僕のうなじを、獲物を仕留める捕食者のように強く掴んだ。

 噛みつくような口づけが落ちてきて、僕は抗いようもなく声を漏らした。


「……んっ……ふっ……」


 カナトの吐息が、僕の唇や、頬に熱く触れる。

 黒く艶めいて潤んだその瞳は、執事のそれではない。


 ――飢えた、一人の男の眼差しだ。


「はぁ……はっ……はぁっ……んん……」


 カナトの右手が、僕の体を――僕という存在を確かめるように、なぞり上げる。

 胸元から腰のラインを辿るその指先は、まるで自分の領土を確認する入植者のようだ。


 僕は久世の腕に、爪が食い込むほどにしがみついていた。


「怜央様……怜央、様……」


 カナトの舌が、僕の唇を強引に抉じ開け、熱い塊が僕の内側へと侵入してくる。


「んっ……ふぅ……ん……」


 上顎をなぞるその感触に、僕の思考は白く塗り潰されていく。

 僕に食事を、教養を、礼儀を叩き込んだその口が、今は僕の尊厳を、最後の一片まで喰らい尽くそうとしている。


 同時に、中心を貫いているカナトのそれが、さらに深く、僕の境界を蹂躙し、内臓を突いた。


「ふ……ぁあ……」


 衝撃が、火花のように脳裏を走る。

 きっと、僕はもうおかしいんだ。


『調律』は終わったはずなのに、僕の体は、もっとカナトに埋め尽くされたいと叫んでいる。


 カナトの一部が僕の中で膨らみ、脈打つたびに、僕という意識の輪郭が砂のように崩れ、カナトという巨大な海に飲み込まれていく。

 もう、僕がどこまでで、カナトがどこからなのか、曖昧になっていく。


 僕は、目を逸らすことも、カナトを突き放すこともできなかった。

 見上げた空には、二つの巨大な輪が、僕たちの吐息に合わせて、ただ静かに回り続けていた。


 それは滅びの輪であり、新しい世界の誕生を告げる、無慈悲な瞳のようでもあった。


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