表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
R15 終末世界で、執事は僕を調律する。~人外執事×傲慢坊ちゃま~  作者: 島田まかろん三世
エピローグ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

56/56

夜明けの森

 原初同調点オリジン・シンクロ・ポイント

 そこに行けば、助かるのだと、彼は言う。


 ――嘘だ。


 けれど、その嘘に一生飼い慣らされることを、僕の細胞はすでに受け入れ、渇望さえしていた。


「そこには、何があるんだ?」

 

 火の気のない避難小屋で、僕は訊いた。

 彼は、向かいの窓から、外を見ていた。


 青い結晶の森が、月光を受けて静かに脈打っている。

 その光景は、滅びゆく星の最期の呼吸のようで、残酷なほどに美しかった。


「着いてからの、お楽しみです」


 ――ほら、まただ。

 僕が答えを求めても、いつもこうだ。


 僕は、ここに残されていた登山用のウェアを着ていた。

 誰かが脱ぎ捨てたものだ。


 血の匂いは……しない。


 それでも袖を通した瞬間、妙な気分になった。

 この服の持ち主が、どこへ行ったのか――考えないようにした。


 けれど、見知らぬ誰かの生活の残滓ざんしを纏うたび、僕がかつて持っていた『御子柴みこしば』という名前が、指の間から砂のように零れ落ちていく感覚があった。


 毛布を肩まで引き上げる。


 壁に寄りかかるように立つ彼は、いつもの燕尾服姿だった。

 あの時、穴だらけになっていたはずの燕尾服。

 なのに今は、最初からそうであったかのように整っている。


 白いカフス。

 黒い上着。

 完璧な執事。

 僕の。


「……カナト」


 呼ぶと、彼は静かにこちらを見た。

 金色の瞳が、暗闇の中でわずかに光る。


「寒くないのか?」


 僕の問いに、彼は少しだけ首を傾げた。

 それから、ゆっくりと歩いてくる。

 木の床が、きしむ。

 その一歩ごとに、小屋の中の冷たい空気が、彼の持つ『熱』に押し出されていく。


 僕の前で膝を折ると、彼は何も言わず、僕の手を取った。


 その瞬間。


 ――熱い。


 思わず息を呑む。


 彼の手は、人間の温かさじゃない。

 暖炉の前に手をかざした時のような、深い熱がそこにある。


「坊ちゃま」


 彼が、低く囁いた。


「私がいますから」


 彼の指が、僕の手を包み込む。

 その温度が、胸の奥まで染み込んでくる。


 外では、青い森が静かに呼吸している。


 原初同調点オリジン・シンクロ・ポイント


 そこへ行けば、すべて終わる。

 そんな予感が、消えない。


 彼が、優しく唇を寄せてきた。

 そっと。

 冷え切った僕の唇に、彼の熱い『毒』が注ぎ込まれる。


 少し離れて、彼は僕をじっと見つめた。


「私が……います」


 そうだ。

 彼がいる。

 カナトが。


 毛布の中で、僕は彼の手を握り返した。

 もう離さない。

 ――たぶん、彼も。


※お付き合いいただきありがとうございました。

R18バージョンをその内、上げたいと思っています。

カクヨム様でブロマンスやラブロマンスも投稿しています。

よかったら、よろしくお願いいたします。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ